副業に魔王に
やはり魔界は放っておくとろくなことにならないようだ。
「そうだ花屋と兼業すればいい!」
ミッドは副業で魔王もやる事に決めた。
また花屋をやる町を探さなければいけない。
魔界では花はあまり育たない。
地上にいる時間の方が長くなるだろうが仕方ない。
「う・・・ん」
ユイが目を覚ましたようだ。
「ユイ、大丈夫か?」
「うん」
「あの後どうなったの?あの人は!?」
「それはもう片付いた。何の心配もいらない」
ユイは小首を傾げた。
「片付いた・・・?」
「ああ」
「まさか殺したの!?」
「当り前だろう?」
サラッと言ってみせるとユイはミッドから少し距離を取った。
「そんなに怯えないでくれ。俺はユイに危害を加えるつもりはない」
ユイは頷き、ミッドの近くへ行った。
「まだ俺が怖いか?」
ミッドがそう聞くと首を横に振った。
魔界は確かに荒れている。
カインが治めてくれなかったらどうなっていたことやら。
カインの力を持ってしてもこのくらいしか治めきれていない。
はぁーっと重たい溜息を付き魔界を見渡した。
「ミッドどうしたの?」
「いや、何でもない」
「お前の・・・両親はもういないらしい。これからどうする?」
「あ・・・、私は・・・ミッドと一緒にいたい」
ミッドはその言葉を聞き驚いた。
「本気か?」
「うん。花の世話でも、家の事でも何でもするから一緒にいさせて?」
潤んだ瞳で見つめられると嫌とは言えない。
「しかし、俺は魔王だぞ?危険なことだってあるかもしれない」
「でも、一緒にいたい」
「・・・わかった」
ミッドは折れた。
「俺は花屋をしながら魔王業もしようと思っている。
「うん」
「地上へ一旦帰るか」
「うん、帰ろう。新しい町を探さないとね」
「ああ。そうだな」
「出来るだけ魔界の入口に近い町にしよう。その方が兼業しやすいからな」
新しく店を開けると思うと少し気分が明るくなった。
今まで気分が沈んだままだったのだ。
自分が魔王を勝手に止め、危うく魔界が崩壊するところだった。
そう思うと申し訳なくなる。
「さぁ、行こう」
剣で空間を切り裂きまた来た時と同じように肩にユイを乗せ歩き出した。
「ミッド、これから宜しくね」
「こちらこそ。無理しないように働けよ」
「うん、無理しないように一生懸命働くから」
ユイはそう言い、泣きそうな顔で必死に笑顔を作った。
それから2人は魔界の入口付近の町で花屋を営むようになった。
ユイは少しずつ元気になっていった。
でも時々酷く悲しそうな顔をする。
それは仕方のないことだった。
その度にミッドは胸を痛めた。
カインが自分を誘き出すための犠牲になった村の生き残りの少女ユイ。
これからは自分が守っていこうと思った。