第8話:追放サイド
― ベンデグス視点 ―
まさか、あいつがあそこまで活躍していたとは誤算だった。
評価が変わる前に追放して正解だったぜ。
だがそのせいかは知らねえが、明らかに戦力が落ちてる気がする。
今は、ロザルトノンを捨てさらに西にある町ビアロスを拠点に防衛しているが戦況を見る限りここもすぐに陥落するだろう。
おまけに白兵戦で左腕を負傷しちまった。今日は最悪の日だ!
「痛ぇ・・・糞!どうなってやがる!白兵戦なんてあいつがいた頃には全然無かったのによぉ!おい、クラーラ中尉!!俺に早く治癒魔法をかけろ!」
「無理ですよぉ・・・クラーラは今まで以上に発生した負傷兵の対応で手いっぱいなのですぅ。」
「奴はどこだ!」
「あの・・・天幕ですぅ。」
マグドルナ大尉は息も絶え絶えで今にも倒れそうだ。昨日の元気はどこへやらだ。
「全く、役立たずな連中だぜ!!」
俺はそう吐き捨てながら、白兵戦で出来た傷を早く癒したかったため衛生兵がいる天幕へと傷が開いた左腕を抑えながら向かった。
そこには頭に包帯を巻いて横になっているゲルゴーと負傷兵の治療がひと段落してかなり疲弊した表情のクラーラが座っていた。
俺はクラーラの目の前にある椅子にドカッと座り治療を要求した。
クラーラは俺の傷口にアンデッド化を防ぐ聖水をかけ清めた後に『キセブ・キュアギュラス(下級治癒)』で傷を浅くした後に傷口をガーゼで覆い包帯でぐるぐる巻きにした。
「痛ぇだろ!もっと優しくしやがれ!」
「も、申し訳ありません大隊長・・・殿。」
「畜生!一体どうしちまったんだよお前ら!昨日とはまるで別人レベルで使えねえぞ?!」
「まさかとは思いますが、アルバート中尉殿が一番活躍していたんじゃないですかね?」
「ナニィ?!」
俺は聞きたくもなかった事実をゲルゴーから聞かされて頭に血が上った。
「てめぇ!どういうことだコラ!!」
俺はゲルゴーの胸倉をつかんで脅してやった。
「やめてください大隊長殿。彼は・・・怪我人ですよ。」
だが、ゲルゴーの野郎はひるむことなく淡々とした口調で話し始めた。
「だってそうじゃないですか。大隊長殿が彼を連れてきてからは快進撃とまでは行かないものの戦線はいい意味で膠着しましたし、それ以降は敵側の空襲成功頻度は明らかに減りました。」
「それがどうした?アルバートの野郎以外の連中、つまり俺たちが強くなったからじゃねえのか!?」
「ええ、私も最初はそう思っていました。ですが、それは完全に思い上がりでした。彼を追放してから明らかに敵側の空襲成功率は上がりましたし、戦線もほかの部隊と同様押されっぱなし、負傷兵の数は明らかに増えました。」
「だまれ・・・。」
「これはつまり彼が使役する総勢数百体のゴーレムがデコイとして存在したから我々の損害が軽微になっていたからであって・・・。」
「黙れよ・・・。」
「我々は・・・全く成長していないのではないでしょうか!?」
「黙れって言ってるのが聞こえねえのか!この眼鏡野郎!!」
俺はゲルゴーを振り払うように病床に投げ飛ばした。
その時、俺の頬に乾いた音と痛みが襲った。
驚いて周りを見渡すと視線の先に怒った表情で俺に平手打ちをしたであろうクラーラがいた。
叩いた?この俺を部下であるクラーラが?
怒りのマグマが体から頭に向かってふつふつと沸き上がり気が付くと彼女を馬乗りにして彼女を殴っていた。だが、彼女が悪いんだ。上官である俺を叩いたのだから。
「痛たた・・・!だ、大隊長殿!?やめてください!!マグドルナ大尉殿も見てないで止めてください!このままでは負傷兵が治療できなくなります!!!」
自分のリーダーの豹変に驚愕して動けないでいたマグドルナ大尉もゲルゴーに言われてハッとして、スキルを使って俺からクラーラを放した。
「大隊長殿やりすぎですぅ。」
「フン、教育的指導だ。しばらく頭を冷やしてくる。」
俺はそう言って天幕を出た。ここにいると追い出した奴の事を思い出して俺自身が何するかわからんからな。
今日は他の天幕で寝ている女性たちでこのイライラを発散させるとするか。
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