第7話:女性捕虜
とりあえずは彼女たちの警戒心を解かなければいつ後ろから刺されるか分かったものじゃない。
それほどの空気がここには漂っている。
「あー、誤解しないでほしいのだが・・・僕にそんな意志はないですよー。さっきの兵士がからかっただけですから・・・ね?アハハハァ・・・。」
張り詰めた空気は変わらない。つらい。
「知ってる。なんか赤毛のゴリラと違って女性に触ることすら出来なさそう。」
赤毛のゴリラって・・・。
思わず吹きそうになるが何とかこらえる。
「なんていうかこう、ほかの男が持っている獣欲はあるんだけど、それを発揮できないというか・・・。」
「す、すごくまじめで誠実そうな優しい方だと思い・・・ます。」
それ、モテない陰の者に対する常とう句だゾ?
「うんうん。」
「・・・童貞っぽい。」
「どっどどど・・・童貞ちゃうわ!言葉をもう少し選ぼうな!お兄さん泣いちゃうぞというか泣くぞコラ!!」
小さい子はオロオロしていたがそれ以外の子はクスクスと笑っていた。
「わ、笑ってんじゃにゃい!」
「ごめんなさい。兄弟でまるで性格が違っていましたから。」
そう言ったのは左側の2段ベッドの上で足をプラプラさせている緑髪のエルフ娘だった。
彼女はスタイル抜群できめ細やかな肌が美しい。
これで捕虜が着るボロい一張羅ではなく、緑を基調としたワンピースだったらより美しさが際立っただろう。
胸は・・・うん、残念ながら幼馴染と一緒だ。
「あの・・・失礼なこと考えてません?」
エルフ娘は胸に手を置き悲しそうな眼をする。
僕は慌てて視線を下の方に移した。
「そ、そんなことはねえよ・・・というかベンデグスを知っているのか?」
「ハイ!私はベンデグス大隊長指揮下で弓兵として活躍していました。ヨーヤカーラ・ゾイド一等兵であります。ベンデグス大隊長殿の弟アルバート中尉殿ですよね?」
「よくご存じで・・・。」
「中尉殿がゴーレムの大群を出したおかげで大量に動員された私たち未経験の兵士の手助けになっていたので知っていて当然です。あなたが居なかったら、第1魔導大隊はとっくの昔に壊滅していました。日本兵たちもあなたが敵軍の中で一番厄介だったって・・・。」
「そりゃどうも、というか第1魔導大隊の所属だったのか。気が付かなくてすまなかった。」
「私のジョブは『暗殺者』です。『暗殺者』の使用可能スキル『隠密』で常に姿を消していましたから知らなくて当然です。謝る必要はありませんよ中尉殿。」
「そうか・・・。」
「ベンデグス大隊長殿ねぇ・・・あんな奴を大隊長なんて呼ぶのはあんたぐらいよヨーちゃん。」
ヨーヤカーラだからヨーちゃんか、可愛いあだ名だ。仲良くなったらあだ名で呼ぼうかな。
「ごめんつい癖で・・・。」
「・・・次からあいつのことを大隊長なんて呼ぶんじゃねえ。」
ウエーブがかった銀髪の女性は歯ぎしりをした。
「たしかに、あいつは大隊長と呼ぶにはそこまで知的じゃなく荒っぽいところがある。だけど・・・。」
「あんたあいつの兄さんなのに知らないの?あいつは年端も行かないこの子を弄んだのよ!この子は大人でもないのにママにならなくちゃいけないの!」
そう言って、真ん中にある2段ベッドの1段目で暇そうにしていたショートボブが良く似合うピンク髪の女性は、ベッドから降りて先ほどオロオロしていた女の子の背中をさすった。
「まじかよ、子供まで動員する国も国だがあいつめ・・・なんてことを!」
女の子は嫌なことを思い出してすすり泣いた。よく見ると少しお腹が膨らんでいる。
「身内だからと少し遠慮していたがもう許さねぇ、今度会ったらあいつに今までの恨みも込めて一発噛ましてやらなきゃ気が済まねぇ!」
僕は拳をギリと握り締めた。
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