第2話:第一魔導大隊
「ホント使えねえよな兄貴は!てめえのジョブ『創造者』で作ったゴーレムがまるで役に立たねえし!!栄えあるナダギッシュ帝国陸軍第1魔導大隊としての自覚はねえのか?あん!?」
天幕のそばの地面に座る僕に罵声を浴びせるのは燃えるような赤い髪に漆黒のアダマンタイト防具を着た偉そうな弟だ。
「す、すまんベンデグス。」
僕は謝ったのだが何かが気に食わなかったらしく弟は俺を殴り飛ばした。
籠手までアダマンタイトだからダメージが半端ない。
「ベンデグス・フォン・ソングロディア大隊長だ!若しくはベンデグス少佐と呼べ!!」
僕は口から出た血を吐き捨てぼそっとつぶやいた
「自分だって兄貴って呼んだくせに。」
「んだとお!!」
弟が再び僕に殴りかかろうとしたその時、クラーラが割って入った。
「やめてください!ベンデグス大隊長殿、今は仲間同士で争っている場合ではありません。こんなことしている間にも日本軍がすぐそこまで迫っているんですよ。」
彼女は子犬のように震えながら弟を睨みつけた。
「それ位大隊長はわかってるわよぉ。クラーラ・サルメンディア中尉。」
間延びした声で弟に味方をするのはマクドルナだった。
「マグドルナ・ボラルナ大尉・・・殿。」
マグドルナは皇帝陛下主催の武術大会で高成績を収めた優秀な『魔戦士』だ。
だが彼女には特筆すべきものはもう一つある・・・胸だ。
戦うたびにゆっさゆさと激しく揺れるそれは、たわわに実った乙女の果実と呼ぶに相応しい。
だが、それに見とれてクラーラに成敗された男性も数知れない。
「・・・何を見ているのかしら?アルバート中尉殿?」
果実が実らなかったクラーラがすごい形相でこちらを睨んできたために目をそらす。
危うくその男性に自分も入りそうになったからだ。
「な、なんでもありません。クラーラ中尉殿。」
「フフフ、たしかに日本軍は強いわぁ、だからぁ?あたしたちはほかの部隊と違って連中を押しとどめている。」
「そっ、それはアルバート中尉がアダマンタイトで出来たゴーレムを数百体ほど召還し、日本軍が持つ鉄の破城槌や強力な魔導兵器を持つ歩兵のほとんどを薙ぎ払ったからであって!」
「たしかに、彼のゴーレムはアダマンタイト鉱石を使用した強力な物。ですがそれはアダマンタイト鉱石が豊富にあった序盤の話です。それよりも、日本軍の攻撃に耐えうる防具やあらゆるものがスライムのように何でも切れる剣に回すべきだと私は思います。その方が少ない量で量産できますしね。」
そう言って眼鏡を指で押し上げながら茶髪オールバックの小柄な青年が天幕から出て来た。
「ゲルゴー少尉殿。たしかに帝国東部にあるアダマンタイト鉱山を日本軍に占領されたせいで備蓄のアダマンタイトが枯渇しかかっています。だからこそ比較的活躍出来ていた彼のゴーレムに使わせるべきです!」
「ええ、ええ検討しましたとも・・・ですが、最近の彼は集中力が欠けているせいで彼の扱うゴーレムは図体がでかいだけの置物と化しています。そのせいで魔法が日本軍に当たりませんし、かといって決定打になる攻撃も出来ていません。ハッキリ言って邪魔でしかありませんよ。」
マグドルナと弟、そして後ろで聞いていた大多数の部下たちは頷いたり馬鹿にしたように笑ったりした。
「ゲルゴー・フォン・ソングラス少尉!」
クラーラは白く美しい顔を真っ赤にして詰め寄った。
「それは言いがかりと言う物です!!上官への悪口はい、遺憾ですよ。」
「もういい、よせ。ありがとうクラーラ・・・中尉。」
「でも!」
「言いがかりではありませんクラーラ中尉殿、そのせいで鉄の飛龍に対する魔法による支援攻撃が出来ず我が国の飛龍部隊は全滅、そして、貴重なアダマンタイトをゴーレムに使ったせいで、歩兵も次々と死んでいく・・・。これのどこが言いがかりだというんですかクラーラ中尉殿。」
「ぐ・・・むぅ・・・。」
「それに、私は参謀長候補として上の人たちから一目置かれる存在、万年中尉のあなたとは違います。いつまで上官気取りでいられますかね?」
ゲルゴーの不気味な笑みが嫌だったのかクラーラは目をそらした。
「そっ、それよりも!なぜ皆さんはアルバートに対してそんなひどい態度を取れるのですか。たしかに最近の彼はそんなに活躍出来ていませんけど!それだけでこんなにもひどい態度を取れるのは可笑しいと思います!」
クラーラは鋭い視線をみんなに移した。
「我が国は『家柄』と『ジョブ』で将来が決まる。この二つに恵まれた人は神に祝福された運が良い人である証。そして、その者に導かれれば必ず繁栄が約束されるのです。」
ゲルゴーはメガネを指で押し上げながら偉そうに言った。
「そうだ。知っていると思うが、10歳、15歳、20歳と3回に分けて神託の儀が行われる。その際に、神々から授かるジョブで将来が決まるのだ。」
「その年になるまでに行ったことがジョブに反映されるんですよね?」
「そうだ。そして基本的に鍛錬具合によって下級・中級・上級・最上級それぞれのジョブが一つだけもらえるのだ。」
「ええ、それも知っています。」
「だが、兄貴のジョブは神に祝福された最上級のなかでも4大ジョブと呼ばれている『剣聖』『賢者』『聖者』『大魔導士』どれにも当てはまらないゴーレムしか作れない神から見放された上級ジョブ『創造者』ときたもんだ。」
弟は俺を馬鹿にした表情で鼻を鳴らした。
「そうそう、ちなみに私ゲルゴーは『賢者』、ベンデグス大隊長殿は『剣聖』、マクドルナ大尉殿は『大魔導士』、そしてクラーラ中尉殿は『聖者』。しかし、アルバート中尉殿はゴーレムしか作れない『創造者』。彼がいるにも関わらず最前線にいられること自体奇跡なのですよ。」
「やはり兄貴を除く俺たちが神に祝福されてるからに違えねえや!」
「それは僕もわかっているさ、上級ジョブの中でも使えないジョブだってことは・・・だけど『創造者』はすごいぞ!素材さえあればあとはイメージでゴーレムの形を作りそこに魔力を流し込むことで動かすことが出来るんだ!動かすとは一口で言っても難しいんだ。完成したら倒したい敵のイメージをゴーレムに手をかざしながら想像し、それと対峙した場合はどのように動くべきかを事前にインプットするんだ。そうすれば・・・あ。」
またやってしまった。また僕の悪い癖が!ゴーレムの事になると周りが見えなくなるんだよな。
「ハイハイ、イメージで何でもできるんでしょ?すごいねー!糞雑魚スキルのお兄ちゃん。」
マクドルナはバカにしたようにケラケラと笑った。
「うぐっ・・・。」
刺さる人には刺さるのだが僕にはダメージしか行かない。
その時、伝令がやってきてベンデグスに耳打ちする。
「撤退だと!?」
その言葉に全員がざわついた。




