第17話 ブラック・ウェンズデー
6月8日(月)降ってわいたような米国株暴落に巻き込まれ、ブラック・マンデーを覚悟した俺だったが、思ったよりも軽傷ですんだ。
実際には、ー6,300円という通常のボラよりも遥に大きい金額なのだが、スト安まで覚悟していた俺にとっては軽傷だった。
翌9日(火)の終値は、76,450円
4,750円の上昇だった。つまり、一日で半値戻しどころか、7割以上戻したことになる。
やはり思ったとおりだった。まだ損はしているが、気分がよかった。
資産は、5,500万円。俺は再び純富裕層に返り咲いた。
もうこの大台を割ることはないだろう。これ以上の暴落がコンスタントにやってくるとは思えないし、それほど大きなイベントもないように思う。
これで、気分良く出張に行ける。
俺は、11日から熊の出現で日本一ホットな街、宇都宮の学会に出かける予定だった。
まあ、熊は捕獲されたらしいが、鷹村の熊殺しパンチをお見舞いできないは残念だ。
株もしばらく放置でいいだろう。
そう思っていたのだが。
――翌日の10日の水曜日のこと。
正直、下がるだろうとは思っていた。
なぜなら、アメリカがイランに報復攻撃を行うと宣言したからだ。
終戦合意が近いだの終戦期待だのと言われていたが、結局またドンパチやり始めるという宣言だった。
アメリカも韓国も半導体株は下落局面だが、我がキオクシアは持ちこたえている。
だから、特売りは覚悟していたのだが、すぐに寄って-1,400ほどで持ちこたえていた。
値嵩株なので額は大きいが、これは、わずか2%ほどの下落率だ。
強い!と思った。
フジクラや古河電工、ソフトバンクといった株の下落率は、もっと大きかったからだ。
しかし、少しずつ下がっていく。-2,000円台に突入し前場を終える。
そして、午後0時30分、後場が開くと同時にさらに掘り始めた。
どんどんどんどん落ちていく。
悪魔のようだった。
終値は70,500円。なんと-5,950円も掘ったのだ。
マンデーの終値よりも下げてしまった。
なんで?夢だよね?
後場から急にジェットコースター?キオクシアなら上がるんじゃないの?
マンジャロでも打った?
俺は頭を抱えた。
どうしてこれほど下げたのか、よくわからない。
そりゃ、他もたいがい下げてるけど!
発狂したい気分だった。
とにかく、再び資産が5,000万円を割り込んでしまった。
今日の暴落は想定外だ。買い残も相当増えてきているし、どう考えても明日リバるとは思えない。
しばらく下げ基調だろう。
そう考えた俺は、100株売った。
たった100株だが、まだ含み益があるから、下げたうえに税金をとられるのは我慢ならない。
考えてもみてくれ。ジェットコースターのように落下していく数字は己の資産なのだ。涙がこぼれるようなスピードで減っていく数字を追いながら、冷静な判断などできるはずがない。
信用売り400、信用買い900、現物300。
この布陣で明日に挑む。
もう5,000万を死守することが心の平穏に繋がる。少しリバったら信用買いを減らすしかない。下げたら買い増しだ。
さて、どうなるか?
明日、新幹線で苦悶の表情を浮かべている熊、じゃなくて中年がいたら、俺だと思ってくれ。




