第14話 スーパー決算
5月15日、キオクシアの決算日当日は、前日比で4,000円のマイナスで引けた。
掲示板の連中(売り勢)は、場中から大盛り上がりだった。
「フジクラ確定!」
「フジクラみて学ばないの?」
「フジクラとここ持ち越した人、電車だけは止めないでね!」
とまあ、楽しくて仕方がない様子だ。フジクラの掲示板じゃないんだよ。
俺は気にしなかった。いや、してたんだけど、ここまでは想定していたからだ。
すでに狂気に身をゆだねていたのだよ。チキンランで俺はブレーキではなく、アクセルを踏み込んだのだから。
まあ、ドキドキは半端なかったけどね。
そんな感じで、午後3時30分。引けと同時に決算が発表された。
もう秒で対応する必要はない。場中決算ではないし、金曜日だから月曜日まで市場は開かない。
つまり、ゆ~っくり精査できるわけだ。
が、俺にそんな知識はない。どこがいいとか悪いとか実際よくわからん。
だからまた掲示板を見る。
そこに踊っていた文字は――。
「え?マジ?凄いなんてもんじゃない…」
「決算、凄すぎ…」
「化け物…」
なんていう思いもよらない反応だった。
どこに引いているのかよくわからなかったが、時間が経つにつれて、分析してくれるありがたい人たちが現れてくる。
さすがに俺でもなんとなくは理解していた。しかし、実際に解説してもらうことで凄さが実感できたのである。
まず、2026年3月期(1年間の通期)の売上高は2兆3000億円、純利益は5549億円。前年比で約2倍という、とんでもない業績だった。
さらに驚くべきは直近四半期(1~3月)で、純利益が4000億円だった。通期の利益の7割以上を3か月で叩き出したことになる。
そして、さらにさらに衝撃的だったのが、来期(4~6月)の予想だった。
なんと、売上高1兆7500億円、純利益8690億円というとてつもない予想を出したのだ。
これは3か月の数字であり、単純に4倍する(あくまで単純計算としてだが)と、純利益が3.5兆円となり、日本一のトヨタ自動車に匹敵、あるいは超えかねない水準なのである。
当然ながら、コンセンサス予想をはるかに(約2倍)上回っていた。
つまり、超絶決算とかいうレベルではなく、桁外れの化け物級の決算だったのだ。
掲示板も湧いた。
「持ち越した勇者よ。おめでとう!」
「持ち越すなんてメンタル化け物。ホルダーおめでとう!」
「売り豚君たち。指をくわえて眺めていなさい。電車だけは止めないでね」
「あ~、売り豚が黙っちゃった。そりゃ文句も言えないわな」
俺は嬉しい気持ちよりも、ほっとしていた。
これで暴落はまずない。確実に上昇していくだろうと。
だから、売り勢に対する『ざまぁ』の気持ちはまったくなかったのだが、このコメントには吹いた。
――ねえママ―!あのおじさん、どうしてキオクシアを空売りしてるの?
――しっ!見ちゃだめよ!
一日分の野菜がとれるやつの半日分を地球に返すところだった。
君なら、なろうでデビューできるだろう。
そして、週明けの月曜日。
当然のようにストップ高。俺は心底ほっとした。
といっても、値幅が7,000円であり、フジクラショックからの下げをゼンモしただけなので、利益は出ていなかった。
しかし、明日も上がるだろう。俺は確信していた。これで織り込み済みだの、材料出尽くしなんていうアナリストがいたらお目にかかりたいもんだ。
いや、もしかしたらスト高3連発もあるかも。そしたら――。
なんて妄想が膨らんでくる。仕方ないだろう。だって勇者なんだから。
この時点で資産は、2,500万円。
俺は家をキャッシュで買う皮算用までする始末だった。
だが、そうは問屋が卸さない。それが株の世界なのであった。
数字の解釈は見方によって異なるかもしれません。あくまで主人公の思いとしてご容赦いただければ幸いです。明らかな事実誤認がある場合はお知らせいただけると助かります。




