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第13話 フジクラショック

GW明けにストップ高を叩き出したキオクシア株は、やはりというか、当然のように上がっていった。

5月7日に43,000円、5月13日には終値がなんと、50,500円をつけた。


ラッキーボーイといえばそうなのかもしれないが、5月になっての上がり方は異常だった。

あっという間に資産3,000万円を突破してしまったのである。

だが、安心してはいなかった。問題があるのだ。


そう。決算である。


キオクシアの決算は、5月15日の金曜日だった。

ジェイソンとは何の関係もないが、金曜日――市場は月曜まで開かないので、密かにドキドキしていた。

決算跨ぎをするかしないか、非常に悩ましいところだった。


いや、決算跨ぎをするのは間違いない。

問題は持ち株を減らすか増やすかだ。

普通に考えて、これだけ株価が上がってきた会社の決算が、コンセンサス未達で失望売りなんてことになったら、ストップ安の3連発くらいじゃすまないかもしれない。


決算が良いことは皆わかっている。それはメモリ価格の高騰が示してるからだ。

任天堂のSwitch2は、1万円以上の値上げ。その大きな要因としてメモリの高騰があげられている。

普通に良い決算では『織り込み済み』『材料出尽くし』となってしまう可能性が大なのだ。

つまり、超絶的に良い決算でなければならない。


その可能性はどうなのか?

と、俺が考えてわかるわけがない。

そのために、意味のわからぬ――もとい、公明正大なアナリスト予想というものがある。

しかし、これも普通に考えて狭き門に思える。そこを突破する覚悟が試されるわけだ。


まさにカイジの心境だった。

濃霧の中に、ほの見える一筋の道…常軌を逸した者だけがたどり着ける境地…狂気っ!

と、カッコいい暗示にかかって暴落したのでは目も当てられない。

さて、どうする?

冷静に考えてみた時に、俺は閃いた。

予行演習をしてみればいいのだと。


前にも述べた『電線御三家』、古河電工とフジクラの決算があるのだ。

どちらもキオクシアと同じように急激に上昇している株だった。

関連性が高いので、たまに逆の値動きをすることはあっても、ここへきて大きく乖離することはなかろう。

古河電工の決算は5月13日、フジクラの決算は5月14日。

予行演習にうってつけだった。


どちらも数百株買って試してみようと思っていたのだが、俺はこの会社が場中決算だということを知らなかった。

場中決算とは、市場が開いている時間帯、この場合は午後2時に決算を発表する。

5月13日はキオクシアの上昇に気をとられて、古河電工の決算を見落としていたのだ。

どうやら非常に良い決算だったらしい。来期の見通しも申し分なく、古河電工はストップ高近くまで値を上げていた。


だがまあ、と思った。同じ業態のフジクラを買えばいいからだ。

どう考えても、暴落はあり得ない。だから、13日の寄り付きから仕込んでおく。考えることは皆同じなのか、フジクラの株価も急上昇した。


そして午後、場中にフジクラの決算が発表された。

この時のことは、今でも鮮明に覚えている。

どうにもフジクラとは因縁があるらしい。信じられないことが起こるのだ。


午後2時ジャスト。決算発表。

といっても、俺のiSPEEDには決算情報がまだアップされていない。

Yahoo掲示板では、決算でた!などと、気の早いやつの投稿が入り始める。

どこで見たんだ?と思う。まだ2時を経過して数秒である。

ところが、株価がどんどん下がり始めた。俺のiSPEEDには決算情報がアップすらされていないのに、だ。


マジでガラ。あっという間に下がってく。

午後2時1分だよ。ようやくiSPEEDに決算情報が出たところだよ。

普通はこれから決算みるんだけど、なんで秒で良いか悪いかわかるの?

って、わかるわけねーだろ!事前に知ってたんだろ!という怒りが湧いてくる。


掲示板でもそんなコメントがあったけど、どうやったのか今でもわからない。

AIが解析したとしても数秒のうちに売りに転じるなんてことができるのか?と思う。

まあ、これについては考えたところでどうにもならないし、どうこうできる問題でもない。

そんなことを思ううちに、また人生初の体験をした。


――ストップ安!


呆然とする。ストップ安を喰らった人間の心理だ。

わずかとはいえ、300株突っ込んだ。50万円近く凹んだのである。


暴落した理由は、足元の決算が悪かったからではなかった。

今期の数字は十分良かった(過去最高益だよ)が、2027年3月期の利益が前年比で僅かに減益になると予想したからだった。

そんなこと、秒でわかる?というのは置いておくとして、あ、今がピークなんだな。と思われたわけだ。

それからフジクラ株は、一週間のうちにほぼ半値になってしまうのだが、これが世に言う(一部では言う)『フジクラショック』である。


影響は凄まじかった。

キオクシアも含め半導体株の多くを道連れにして、株価は下がっていった。

頭を抱えたよ。いよいよ難しくなった。

鉄板の予行演習だったはずが、まさかのスト安。


掲示板では、「ここもフジクラになる!」「スト安確定!」と大騒ぎ。

こりゃあ、ちょっとやそっとじゃダメで、スーパー決算でなければエライことになる。

そう思った俺は、いたって普通の感性だと言えるだろう。

だが、俺はカイジなのだ。

普通でないことを平然とやってのける。それが、俺だ。独身だし。


と強がってみたが、まあフジクラの負けが悔しくてたまらなかったのだ。

なぜ、古河電工を買わなかったのか。その後悔が俺を奮い立たせてくれただけだから。古川だけは上げてたからね。


ええ。買い足しましたよ。キオクシアを。

信用買い1,000株で決算に突入したわけです。


そして運命の5月15日。

フジクラショックのおかげで、キオクシアの株価はぐんぐん下がり、44,000円台で引けた。

フジクラ株と合わせて500万円ほどが吹き飛び、資産は2,500万円になっていた。


それでも俺は、信じていたんです。

一生一緒にキオクシアを。おかしくなっていたわけではありませんよ。


さて、結果はどうなったでしょう。

次回をどうぞお楽しみに。


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