表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

魔人の鉄槌


三ヶ月振りに声が掛かった事で言われる前にジークの心の準備は整っていた。


呼ばれた部屋への扉を開けると主だった重鎮の姿が見える。

重苦しい雰囲気に前回の事態よりは深刻そうな気配に緊張が走る。


ジークが椅子に座ったのを見てヴァンパイアのフィネルが落ち着いた声で話を始めた。


「さて、では状況から説明致します。相手の兵力は三千、その内確認出来た勇者は三名。

対する我が軍は魔獣千、それを束ねる悪魔が五百。幾ら悪魔の力が人間たちより強いとはいえ

この状況での戦いは無謀だと考えます。」


あまりの状況の酷さにジークは声を失った。


三千だと・・・。人間側がこれほど総力を掛けて悪魔と戦うなど聞いた事がない・・・。

悪魔を根絶やしにでもする気なのか・・・。


そもそもこの世界の人間の人口は二万人。各国が保持している兵を全て集めなければ

三千などという数は揃わない筈。つまり人間は長き悪魔との戦いに決着を付ける気なのだ。


「撤退は出来ぬ。我々はこの土地でしか生きられぬ命。魔力濃度が薄い地域では

生きるのさえ厳しいだろう。」


魔王ルギア・カルディアナがそう呟くとまた部屋は静まり返った。


「魔力濃度?そんな馬鹿な・・・。この土地でしか悪魔は生きられないのか?」


ジークが驚きながら問いかけるとフィネルが首を振る。


「正確には寿命が大幅に縮む位ですが、正確には分かりませんが

寿命だけで言うならば半分以下にはなるのでしょうか・・・。」


そういう事ならこの土地を出て行く事は出来ないか・・・。

いや、全滅する位ならそれも考えた方がいいのか。そもそも悪魔は

人間より寿命が長い筈。ならば人間と同じくらいの寿命になると考えれば・・・。


「撤退をせずに戦う場合、魔人の鉄槌を使うべきかと考えます・・・。

丁度と言ってはなんですが先日手に入れた魔石もありますので・・・。」


フィネルの言葉を聞いて魔王が唸るとそれを遮る様に長女のラフィゼが立ち上がる。


「お待ちください。あの爆弾を使えば魔界は死の焦土と化します。幾ら悪魔とはいえ

向こう数百年は誰も住めない土地になるでしょう。」


「残念ですが、悪魔が種として生き残れるかどうかの瀬戸際です。国境付近全てを

捨てれば半数の人間は消す事が出来るかと。そしてその状況で勇者さえ居なくなれば

人間側もそれ以上の進撃はして来ないと考えますが・・・。」


フィネルの話を聞いていても酷く現実感がない。


千五百人を殺せる爆弾があるなんて信じられない程馬鹿な話だと思ってしまう。

そんな爆弾があるなら既に人間など生きている訳が・・・。


そう考えた所でハッとする。


もしかして悪魔は人間を便利な労働力としてしか見ていなかったのか・・・。

家畜を飼うように人間を適度に増やして利を得る様な・・・。


「魔人の鉄槌を使う。」


魔王のその言葉に誰も口を挟まない。魔王の中では既に決定事項なのだろう。


「ではその様に進めます。勇者を倒せなかった場合はジーク様にお任せします。

魔人の鉄槌で焼けた土地は毒を撒き散らしますので近づかない様にお願いします。」


「あぁ、分かった。」


重苦しい雰囲気のまま軍議は終わりを告げた。


不思議と身体がふわふわして現実感がない。世界規模の戦争が始まる筈なのに

未だにこれが現実なのかが分からない。


取りあえずは魔人の鉄槌という爆弾を使うまで俺に仕事は無いのだろう。

無慈悲に大量の人間の命を奪う兵器か・・・。


恐らくこの戦いにはゼスやアリスやマリーも参加しているだろう。

そしてその命は爆弾によって散らされるという事だ。


正直に言えばあいつ等には逃げて欲しい。


長い事パーティを組んできた仲間だ。死ぬのが分かっている戦いには来て欲しくない。

だからといって逃がせばニナの脅威にもなってしまうだろう。


身に着けた左手のバングルを見る。


たった一度だけではあるが、アリスに連絡を取る事が出来るアクセサリーだ。

来るなという以上の事は言えないが俺には説得出来る気もしない。


だからきっとこれは使わない事が一番なのだろう。


俺はニナの為に生きると決めた。なのに何故こんなにも胸が苦しくなるのか・・・。


恐らく明日の夜には人間たちが国境を越えてくる。

連絡するなら今日の夜が最初で最後になるのだろう。


部屋へと戻るとニナが部屋の入り口まで出ていた。

その瞳は不安そうに揺れている。


「ニナ、大丈夫だ。」


言いながら何が大丈夫なのか自分でも分からなかったが

不安そうなニナを見るのは心が痛む。


ニナの真っ白な長い髪を撫でながら部屋へと戻ると

急にニナが抱き着いてくる。


「ジークさん・・・、嫌な予感がするんです・・・。とても嫌な・・・。」


「あぁ、明日にはもう戦争が始まってしまうから・・・。」


「そんな・・・。」


「でも大丈夫だ。ニナだけは俺の命に代えても守ってみせるから。」


そう言うとニナは抱き着いていた身体を離して顔を見つめてくる。


「もし・・・、ジークさんが居なくなったとしたら、私も直ぐにこの命を絶ちます。」


ニナの瞳からはその決意が見て取れる。


何時もは怯える様なニナだが一度決意すると何を言っても聞かない程に芯が強い。

真剣な顔をするニナもまた綺麗でとても愛おしくなる。


「あっ・・・。」


そのままニナの唇を塞ぐようにキスをしながらベットに押し倒した。


「えっ、あ、あの・・・。」


戸惑うニナの唇を塞ぐとゆっくりとニナが俺を受け入れてくれる。

そっと抱きついてくるニナの髪を撫でると嬉しそうにニナが微笑んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ