それが、王子の思い描くクライマックス?
▽
『俺が目覚めたのは三つの時。
家庭教師から女王国のことを聞いた瞬間、自分が何のために存在しているのかを理解した。
他の奴らも女王国に関する情報を聞いたり、見たりした瞬間に目覚めたというから目覚めのきっかけはそれだろう。
ただ、自覚云々は別にして俺に他の連中にはない能力があるということはそれ以前から漠然とだが分かっていた。俺には本来なら聞こえるはずのない声が聞こえていたからだ。母の声、父の声、乳母の声。俺の身近にいる人間の声が傍にいないのに聞こえていた。当時、俺の能力の効果範囲は狭かったが、分厚い壁の向こう側にいようがはっきりと声を聞きとることができた。それでも誰の声なのか選別して聞くというより、自分が話題になっていると勝手に耳が傾いていた程度の力だ。
この能力を本格的に意識し始めたのは目覚めてからになる。
効果範囲を広げ、音を取捨選択できる訓練を重ねるうちに同じように目覚めた連中とも連絡が取れるようになった。効果範囲は俺を中心としているため、他国の音を聴くには俺自身が移動しなければならないが、その頃には金麦の音だけなら王宮にいても全て拾うことができるようになっていた。そして、効果範囲が広くなるごとに、音の選別精度も向上していった。
距離が離れている分だけ混線し、雑音が酷く選別が難しいが、その頃になると近距離ならそれが何の音なのか、人なのか動物なのか、人ならそいつが今何をしているのか、そしてそいつが仲間――同じ目覚めであるかどうかを音だけで識別できるようにもなっていた』
もはや神の領域に足を突っ込んでいるんじゃないかと思うほどの変態的能力に呆れたのは数時間前のことです。
全てを教えてくれると言った言葉通り、王子は粗方のことを語ってくれました。
……わたしを荷物のように抱え、とある一室に――立食パーティーの会場のような部屋に運び込み、そのど真ん中に置かれたベッドに放り投げたかと思えば近くにあった白パンがこんもりと積まれた籠をわたしのお腹の上に置き、制止の声を無視してわたしをその奇妙過ぎる部屋に一人残して出て行きはしましたが。
それでも、話しては下さいました。
王子によって知らされた事実――とはにわかには思えない情報はわたしをかなり驚かせ、ビビらせ、不安にさせるものではありましたが。……ね。
▽
――嘘つき嘘つき嘘つき!
王子なんて信じたわたしがバカでした! いえ別にっ、信じたわけじゃありませんよもちろんっ、兄上によからぬことをしでかし味方につけてしまった王子のことなんて信じるわけないじゃないですか!
でも、話してくれると言ったのに、こんな場所に置き去りにするなんてヒドイです!
一人ぽつねんとパーティー会場に取り残されたわたしは、どうにかして王子を追いかけてやろうと必死に腕を動かし食欲のそそる香り立つパンを一つ摘みました。食べれば元気になるのなら、人の目も気にせず食べてやります。どうせ誰も見てはいません、食べて食べて約束を破ってこんなところに押し込んだ王子に、今度こそ羞恥剣をお見舞いしてやるんですッ!
カブリ。
怒りを力に変えてパンをかじります。
すると、出来立ての温もりに唾が大噴出、口の中が大洪水。早く早くと胃袋に急かされ数度の咀嚼で飲み込んだため、ゲフゲフと少し咳こんでしまいました。けれどその味たるや、まるで何十年ぶりの食事かと思わんばかりの美味さで涙が出そうになります。
……あぁ、この歯にしみる温もりと柔らかさ、ほのかに甘みを帯びたふわふわの生地……最高ですっ。
一つを食べ終え、二つ目を食べ、さらに三つ目を食べていると、
『――そうだ、とりあえず、そこにある料理を全て食べろ。その間にゆっくりと説明してやる』
さっき出て行ったはずの王子の声が聞こえてきました。戻ってきたのかと思いましたが、室内はわたし一人です。幻聴でもなさそうです。かなりはっきり聞こえていました。それはもう鼓膜を直接刺激するかのような声でした。
「……? 王子、ですか?」
三つ目をゴクンと飲み込みます。早くも四つ目を右手に掴んでいたわたしは、噛みつきたいのを我慢して問いかけました。
『あぁ』
「いったいどこに? どこから話しているんですか?」
左手で耳を塞ぎます。室内にはどこにもいません、ということは室外からですが……、わたし、イヤホンなんてしてませんよ?
『俺の能力を使えば、遠距離でも会話が可能だ。俺は他人の聴覚を弄って自分の声を届けることもできるからな』
なんとっ! 確かに聴覚操作が能力だとか言ってましたけど、それって自分の耳に限らずなんですかっ? ――ってことは、わたしの聴覚を今、弄っていると?
……ぇ、ちょ、い、弄らないでくださいよっ!
普通にここで話せばいいじゃありませんか? なぜにどうして強制テレフォン状態であなたと会話しなければならないんですかっ?
「王子、あなた――、っ、」
そんな思いの丈を叫びたかったのですが、反射的に起き上がろうとしたわたしは目眩に襲われました。少しのパンを食べたことで空腹感がさらに増してしまったようです。ググゥ〜と盛大な腹の虫がもっと食べ物をよこせと抗議の声を上げてきます。
うぅぅ……、もう少し食べてからでないとカッとする度にふらつきそうです。
お腹の上に乗ったバスケットを落としてしまわないようにヒシと掴み、再び横になります。パンを掴んだ手の甲で額を押さえ、目眩が落ち着くのを待つことにします。それにしても、……なんて病弱な身体になってしまったんでしょう。お腹が減って力が出ないなんて。
『だから食べろと言っているだろう。そのままの状態で一夜を明かしでもしたら明日の朝には餓死だ』
――はっ? がし? がしって餓死っ?! まさかの餓死ですかっ? 十数年前ならまだしも、この飽食の時代に餓死だなんて……!
わたしはパクんと四つ目のパンに食い付きます。モグモグゴッくん、さぁ、次です、このパンを全て食べ尽くし、周りに広がる料理畑からお肉やお魚、野菜をゲットするんですっ! 餓死は嫌です!
『それでいい。今のお前はお前一人のものではないからな。食事には十二分に気を使え』
「……」
人を妊婦のように……、モグモグ、失礼な人です。モグモグ。
まぁ胃袋をフィッシャー君と共有しているらしいのは事実ですから言い返しはしませんが、言い方が気に入りません。それに、――ゴッくん、なによりやはり、
「なぜ、直接話さないんですか?」
なんですか? 能力自慢ですか?
『俺は忙しい。お前だけに構ってはおれん』
「……」
……ふーん、そうですか、いいでしょう。何に忙しいのかは問わずにおきます。知りたいとも思いません。話が脱線しても困りますからね。
『……』
「……」
モグモグ、うまっ、本当にうまっ!
このパンを焼いた人天才じゃないでしょうか? 食べても食べても飽きませんし、さらに食欲が増していきます!
あぁ、早く他のパンや料理も食べたいです!
『……それにしても、お前は本当にハーネスのこと以外では冷静だな。普通、声だけ聞こえてきたらビビるだろう』
バスケットの中身を空にしたわたしは、よっこいしょーいちににんがし、と王子の言葉を聞き流しながら起き上がりました。
うーん、まだまだ身体は怠いですが、とりあえず目眩は起きませんね。急に動かなければ大丈夫そうです。それで、王子なんですって? ――あぁ、思い出しました。
「十分驚いています。あなたがまさか伝書鳩以上の役割を果たすことができるなんて思いもしませんでしたから」
ゆっくりと立ち上がり、慎重に足を動かしてテーブルまで向かいます。取り皿をゲットして、料理を美しく、けれどこれでもかと盛り付けてベッドへと戻り腰掛けました。
「しかし、そうですね、驚くというよりも感心に近いですね。あなたの顔を見ずに話せるなんて素晴らしい能力です」
ふふん、そんなことで驚くはずがないじゃないですか。……ま、ちょっとは驚きましたけどね、ここ数日で得た事実に比べたら「へぇ……」で済むレベルです。こんなことではわたしの驚愕のバロメーターは振り切れたりしません。
そ、れ、に!
なんと言いましても、こちとらあなたと同じ転生者です。そんなこと口が裂けても王子なんかに教えてあげたりはしませんが、確実に普通ではありません。王子も普通を凌駕した存在かもしれませんが、わたしはさらにその上をいく前世の記憶保持者です。短いながらも人生の終焉を(たぶん)経験したタイトルホルダーでもあります。さらにさらに、イヤホンやスマホに慣れた異世界人にとっては遠距離通話は便利と思えどビビる対象にはなりません。
……というか、わたしもその能力欲しいです。テレフォン能力なんてそんな力があったら兄上との遠距離生活も一味違ったものになっていたはずです。
その至高のお姿を見ることができずとも、一日の終わりにお互いのことを語り合い、兄上の声を聞きながらベッドへ潜り込むことができたなら……。うふふ、あははと、楽しげな一時を過ごし――ついに別れの時を迎えたとしても、それでも、その別れを惜しみつつも「また明日」と明日の約束を交わすことができたんですから。それはもうバラ色とは言わないまでも桃色の日々だったはずです。離れているからこそ味わえる魅惑の時だったはず!
――例え、着いた初日に記憶喪失になったのだとしても! その兄上の異変にすぐに気付くことが出来たはずですから、やはり羨ましい能力です。
『……お前な、もっと言い方があるだろうが、いちいちムカつくやつだ』
モグモグ、ムカつく? ふん。
「それはお互いさまでしょう。それより、兄上はどうされたんですか? どこにいるんです? ご一緒なんですか?」
なぜ兄上はここにいないんですか? シュヴァルさんは? 起き上がることさえヒイヒイ状態なのに、誰か介護とかしてくれないんですか? 兄上にアーンとかされたいのに! パックンモグモグ。
『ったく、ハーネスハーネスとイラつくやつだ。だが残念だな、あいつはもうこの屋敷にはいない』
なぜにあなたがイラつくんですか? もしかして兄上をご自分のものとでも思っていらっしゃったんでしょうか?
笑止!
だとしたら大間違いですよ。記憶喪失になろうとも兄上は兄上。今は忘れていたとしても、兄上の心の奥に眠るわたしへの愛は王子などが阻めるものではありません。
ふふん。
……ん? あれ? でもそれって、ヤキモチってやつじゃありませんか? ……だとしたら、……ぁ、もしかしなくても王子ったらちょっと危機感を抱いていたりして……?
ということは、兄上がわたしのことを思い出してきたのかも……? わたしと出会ったことで運命の赤い血縁関係を感じ、記憶が徐々に戻りつつあるのかも。
だから王子は兄上をここから引き離したのでは?
――殿下、申し訳ありませんが、俺はキュイの傍にいてやりたい。
なんて台詞で兄上が離れていくかもしれないと危惧して……。
ぁ、ありえます、ありえますことよ! わたしと兄上の深い愛の間には無限の可能性が広がっていますか――、
『あいつは一旦国に戻した』
――ら。ぇ? 国? 戻す?
「それは金麦に戻られたということですか……?」
『あぁ』
「…………って、は? どうして……ぁ、まさかやはりご記憶がっ、」
『戻ってはいない』
即答!
『微塵もな』
だまらっしゃい!
微塵とか結構です!
微塵切りにしてやりますよ!
……うぅ、期待しただけに落胆半端ないです!
……ふふ、でも、そうですよね。わたしと再会したことで思い出したのではと思いましたが、……そうですよね、そんな甘い展開はありませんよね。それに兄上ならまずはわたしに会いにきて下さるでしょうし。ふふ、ふふふ。……モグモグ。……このパスタも美味しい。
「……では、なぜ金麦に? 兄上に何をさせる気ですか?」
思い出していないなら、それはおそらく反乱計画に関わることでしょう。それしか考えられません。でも、本当になぜ金麦に? 記憶喪失の兄上が国に戻り、いったい何を……? 兄上はシャイでウブな五歳児なんですよ? 子供を働かせるなんて労働基準法に違反して――、ぁ、
「…………ゴックン。まさか、王子、あなた、祖国を巻き込む気ではないでしょうね?」
飲み込んだ瞬間、ふとした予感が芽生えました。そんなまさかと思いつつも顔をしかめます。お皿の上の、さらに麺の上に盛られたミートボールが麺の山から転げ落ちました。落ちる前にフォークで突き刺し留めることができましたが……。
ま、まさか、まさかですよね? まさかとは思いますが、そんなことしませんよね? いくら王子でもそこまでは、
『まぁ、結果的に言えばそうなるだろうな』
「……………………結果的に?」
『この計画が実現すれば国への打撃は間違いなく大きい』
「――!」
お皿やフォークを落とさなかったわたしを褒めてもらいたいです。
なんて、なんてことでしょうッ! どうして、どうしてそんなことにッ?! 打撃が大きいって、なぜっ?! どうしてそうと分かっていてそんな計画を立てたんですかッ?! 立てることができるんですかっ?!
あまりにも驚きすぎて表面上はそこそこ冷静に見えているはずです。そうであることを祈ります。――が、脳内では誰かまうことなくしゃがみ込み、頭を抱えてうずくまり、時にムンクのように開いた口が塞がらずに変顔を繰り出しているんです。変顔が止まりません。
だって、だって! あんまりです!
「……あなたは、いったい何を考えているんですか? 正気ですか?」
いえ、正気のはずがありませんよね。気が触れています!
「それがどんな意味をもつか、お分かりにならないほど愚かではないと思っていましたが……」
愚かだったんですね? 愚か者から卒業したかと思いきや、やはり愚か者だったんですね? こんなことも分からないなんて……!
あなたは、あなたは大いなる大罪を犯そうしているんですよっ!
あなたはッ、兄上の過去だけではなく、明るい未来まで奪おうとしているんですッ!
わたしの描く兄上幸せ家族計画――α、β、θと複数ありますが、その全てをぶち壊そうとしているんです!
よろしいですかっ、わたしが兄上のために貯め込んだオルヴィナの潤沢な資金は反乱に使われるためにあるのではないんです、兄上と兄上を支持する民のためにこそあるんですよっ!
わ、わたしがそのために日々どれほどの努力を重ねてきたか……! そのよく聞こえる耳にはわたしの苦労の日々が届かなかったのですかっ?! 届かなかったのでしょうね、そうでしょうとも! 知ってたら逆に怖いです、でも……!
……くっ、あまりのことに罵倒の一つも発することができません!
『だが、それもしばらくの間だ。少しばかり混乱するだろうがな』
す、少しばかりなものですかっ!
王子の行いは明らかな反逆行為です。王子単独の犯行であったとしても問題だというのにそこに本国が関与するとなれば、これはもうことは金麦、女王国におさまりません。
女王国に反旗を翻すということは、女王国に属する国々に刃を向けるのと同義。
当然、世界戦争の勃発です!
あぁ、なんてことでしょうか!
世界の中心である女王国に刃向かうなど、獅子に骨付き肉で対抗するようなもの、それはもう我々はネギ背負ったカモのごとく諸外国からの侵略を受け、豊かな金麦は奪われてしまうでしょう。この件で例え国が滅ぶことがなかったとしても、救世主の国に逆らった過去は永劫消えることはなく、国際社会から爪弾きにされるのです。
反逆者のレッテルを貼られ、金麦の民は末代までも不遇の生を歩むことに……。
そうなることは歴史が語っています。
王子だって習ったはずではありませんか! それともサボってたんですかバカ王子!
「御自分の立場を忘れて女王国内の問題に首をはさむだけではなく、自国を危険にさらそうというんですかっ?」
我慢ならずにお皿をベッドへ置いてから腰を上げて仁王立ちし、天に向かって叫びます。そのせいでフラッと来ましたが今は目眩なんて起こしている場合ではありません。気合いでクラクラを振り払いました。
「あなたは、いったい何のために、誰のためにそのようなことを!」
「しれたこと。俺たちは守護騎士の転生者だと言ったろう? 当然、女王、及びその一族のためだ」
「……あなた方の女王は、女王国の統治者は、本当にそのようなことを望んでいるのですか?」
女王国の女王様はそんな血も涙もない方だったんですか? 世界を浄化した救世主の子孫といえど、それはあんまりではありませんか! もしもそんなことを望んでいるような女王様なら、わたしは、わたしが……!
わたしがこのフォークで……!
「女王のために金麦に戦を仕掛けさせることにいったいどんな意味があるのですかっ? 我が国はどのような罪でそのような罰を受けねばならないのですか? 諸外国に金麦畑が踏み付けられても、あなたは――」
『バカめ、愚か者はお前だ』
平気なのですか、――って言おうと思ったのに、――なんですってっ? バカ? 愚か者? わたしが? ム、愚か者に愚か者と言われる筋合いはありません!
『話は最後まで聞け。誰が戦争を仕掛けると言った? そんなつもりは毛頭ない』
「………………ぇ?」
せ、戦争するんじゃないんですか? ……わたしはてっきり、
「金麦重鎮たちの弱味を握って反乱に加担させ、女王国を襲わせるのでは、ないと……?」
そして返り討ちに合い金麦畑が荒らされるのではないと?
『ありえん。本当にお前は……、少しでもハーネスのやつが絡むと途端にバカになるな。普通に考えてみろ、そんなことをしても無意味だ。俺たちは破壊を楽しむ痴れ者ではないわ。どアホめ』
耳元でため息をつかないでほしいです。しかもバカバカアホアホと繰り返さないでください。わたしはこれでもナウでクールな美少年なんですからね!
「では、なにをするんですか? 国に大打撃なんて戦争以外に、」
『俺たちの目的は御神木と女王一族を救い出すことだ』
「…………………救い出す?」
何から?
『そのために、御神木と女王一族を今いるエマの首都から別の場所に移動させる』
別の場所?
『今、女王の一族は人の手によって絶滅の危機に陥っている。お前には、彼らを救う救世主になってもらう』
「………………は?」
救世主? 救世主と謳われる女王一族を救う救世主? わたしが?
……疑問は色々とありますが、とりあえずそれと国が打撃を受けることと、いったいどんな関係があるんでしょうか?
『――と、同時に、申し訳ないが、破壊者にもなってもらう』
は、破壊者……?
それ、全くもって良い響きではありませんけど、破壊者って。しかもこの流れで破壊者って、もしかして、わたしに破壊させようとしているのって、
『お前には、女王一族の加護を当然のように考える腐った世界を一度破壊してもらう』
やっぱり――って、せ、世界っ?!
金麦だとか女王国だとか国単位かと思ったら世界ですかっ?!
『そして、その壊れた世界の上に、新たな世界を築く』
……は?
新たな世界を築く?
壊して築く?
『新しいものを同じ場所に造るなら、古いものは破壊しなければならない。御神木をこの土地から引き離す過程で幾つかの国は滅び、多くの人命が失われる。広大な敷地を有する金麦も被害は免れない。だが、』
美味しそうな匂いが充満する室内に、
『このままでは御神木が枯れ果て、女王一族が絶滅してしまう。そうなればこの世界は滅びる。それを防ぐためには多少の犠牲も仕方のないことだ。女王一族の安寧と世界の繁栄は切り離すことはできない。彼らがいるからこそ、この世界は存在していられる』
嘘か本当か判断つかない王子の声が響き、
『その事実を未来永劫忘れないための世界の仕組みを造り、愚かな人の手が届かぬ場所で、この世界を等しく統治してもらう。それが俺たち目覚めが成就を願う悲願――アヴァンチュア計画だ』
カラン、
と、わたしはフォークを落としてしまったのでした。
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