第1話「気づいたら、知らない世界」
いつものように、ルゥは森の中を歩いていた。
てくてく。てくてく。
小さな足で、のんびりと森の中を進んでいく。
「今日は、どこまで行こうかにゃ♪」
気になる草を見つければ、ちょこんと立ち止まる。
ひらひらと葉っぱが舞い落ちてくれば、追いかけてみる。
「にゃっ!」
葉っぱを追いかけて、また歩く。
そんな、いつもと変わらない時間。
ルゥにとっては、いつもの森だった。
――そのはずだった。
ふと、ルゥの足が止まった。
「……あれ?」
木々の向こうに、何かが見える。
気になったルゥは、そっと近づいていった。
すると――
そこには、今まで見たことのない、不思議な扉が立っていた。
「……なんの扉にゃ?」
古びた扉の向こうから、やさしい光があふれている。
ルゥは、少しだけ迷った。
知らない扉。
知らない光。
でも――
好奇心には、勝てなかった。
「……行ってみるにゃ」
ルゥは、そっと前足を踏み出した。
そして、扉をくぐった瞬間――
目の前の景色が、大きく変わった。
「……にゃ?」
そこは、見たことのない世界だった。
何かがおかしい。
ルゥは、きょろきょろと辺りを見回した。
見たことのない木。
見たことのない花。
そして、聞いたことのない鳥の声。
どれも知らない。
何もかもが、知らない。
ルゥは不安そうに、後ろを振り返った。
「ルゥのおうち……どっちにゃ?」
さっきまで歩いていた森を探す。
けれど――
道が、ない。
何度見ても、そこにあるのは知らない森だけだった。
「……帰れないにゃ」
小さな耳が、しょんぼりと下がる。
どうしてここに来たのかも分からない。
どうやってここまで来たのかも分からない。
ただ、ここにいても何も分からないことだけは分かった。
ルゥは、もう一度、森を見渡した。
いつまでも、この場所にいるわけにはいかない。
そのとき――
「あれ……?」
森の向こうに、何かが見えた。
木々の隙間。
そこに、小さな建物がある。
さらにその先には、いくつもの屋根。
そして、空へ伸びる煙。
「街……かにゃ?」
誰かがいるかもしれない。
ここがどこなのか、教えてもらえるかもしれない。
ルゥは、街の方をじっと見つめた。
でも、少しだけ迷う。
知らない場所へ行くのは、やっぱり怖い。
「…………」
どうしよう。
ここにいる?
それとも、行ってみる?
しばらく考えたあと、ルゥは小さく顔を上げた。
「……行ってみるにゃ!」
そして――
小さな足を、一歩前へ。
てくてく。てくてく。
知らない森を抜けるため、ルゥは街へ向かって歩き始めた。
そこが、どんな世界なのか。
この先に、どんな出会いが待っているのか。
そして――
元の世界へ帰ることができるのか。
まだ何も知らないルゥ。
それでも、小さな足を止めずに歩いていく。
知らない森を抜けて。
見知らぬ街へ向かって。
その先に何が待っているのかも知らないまま――
ルゥの、小さな異世界冒険が始まった。
第1話・おわり
次回予告
ルゥは、知らない世界で初めての街を見つける。
そして――
この世界で、最初の一歩を踏み出すことに。
次回、第2話「知らない街」




