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ブレーメンの聖剣 第4章神戯<シンギ>前章  作者: マグネシウム・リン


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3

 ニシくんは皮肉ばかり言う男と思ったが椅子の肘掛けに腕を立て、顎を手に乗せている。少しも動かず黙って聞いていた。

「で? 輸送機は無事に到着できたのか」

「もちろん。だからこうして君とおしゃべりができる」

 冗談のつもりだったが、ニシくんは笑わなかった。となりのユキも笑わない——疑似人格インターフェイスなのでこればっかりはしょうがない。

「そのあとにだいぶ経ってからわかったことだが、最初の輸送機が撃墜された後、パイロットたちは燃える街の黒煙の中に突入し、なんとか逃げることができた」

「ん? 対空砲だろ?」

「ああ」

「わからないな、そんな単純な策で逃げられるわけがない」

「案外単純な方法だとしたら」

「いや、他の惑星に侵略できるんだろ? そんな(・・・)ワケないだろう、目視(・・)で撃っていたわけでもなし」

「そう、目視で撃っていた。しかし対空砲というよりも、ん、汎用速射砲というべきか。信じられないかい? まあともかく輸送機部隊は煙の流れる方角へ飛びジムシオンという航空軍の基地へ逃げることができた。当時セレコウス自治区の内陸部にグラン・ヴリッムという塩湖があった、そのほとりの街の航空基地さ

大西湖(グラン・ヴリッム)、ね。萬像(ミソロジー)であんたらの言葉にもだいぶ慣れてきた。が、航空軍というのはつまり空軍ということか?」

「あーそうだな」ノアはこめかみに指を当てて考えて「戦前の時代は、そう空軍と呼んでいた。しかし世界政府(ヴィー)の結成後、軍隊は宇宙軍とその他4軍に統合された」

「その他、って」

「君の想像通り、宇宙軍はとにかく金がかかる。比率で言えば予算と資源の8割方が宇宙軍だ。その他4軍は航空軍、海軍、都市防衛軍そして即応軍。俺とフリムがたどり着いたジムシオン基地とその周囲は都市防衛軍が配備されていた。平時は武装警察のような役割なのだけど、戦時には防御を専門としている。練度も高かったんだが、未知の敵の奇襲には多大な犠牲を払っていた……後の戦史研究でわかったことだが、当時街の半分がすでに敵の手に落ちていた。が、地の利を活かし抑え込めていたという言い方もできる」

「その話しぶりからして、その先はわかる」

まあまあ、話の腰を折るものじゃない。

 航空軍の基地に到着してそうそう、基地の警備兵にまた振り分けられた。ノアとフリム、その他体は大きいけれど兵役に届かない年齢の子たちがぞろぞろと基地の格納庫(ハンガー)に集められた。

 外はもう暗い。日が落ちて空に月が出ている。晴れた空なのに遠い雷鳴のような爆豪がときおり聞こえた。

「我々は敵の攻撃下にある」警備兵より階級章が多い士官が言った。「人手が足らない。君たちにも協力してもらう。身分証またはパルを用意して列に並べ」

 ノアはフリムにばれないよう、頬を固く締めていた。

「変な期待、してんじゃないわよ」

「まさか。俺にできることをするだけだ」

 肘鉄。

「バレバレなんですけど。変な真似したら許さないんだから」

 お前に許す権利も許さない権利も無い。断じて無い。

 フリムの手には個人通信端末(パル)が握りしめてあった。通信圏外を示している。バッテリー節約モードなので視差を利用した立体映像が暗い。

「次」

 フリムの番が来た。士官がパルを覗き込んだ。

「医療特進コースか。トリアージは?」

「はい、最初に勉強しました」

「銃創の応急措置は?」

「実習は来週の予定でしたが手順なら覚えています」

「それはいい。怪我人が大勢いる。ソドア! あたり(・・・)だ、この子を医療棟に連れて行ってやれ」

 警備兵に付き添われながら、フリムは1度だけ振り返ってノアを見た。

 ノアはパルで身分証を見せると、

「お、俺も、戦うから!」

「ん? そうだな。お前はあっち」

 士官はパルを一瞥しただけで、ペンの尻を格納庫の奥──施設に続くドアを示した。 あの列は、皆黄色の腕章を付けている。つまり「保護」を示すガキ用の腕章だ。俺がそんなダサいことできるわけ無い。

「は、いや俺は」

 すぐ隣の列は、近くの街から避難してきた大人たちだった。名簿を確認し、ライフルと装備一式を手渡されている。

「聞こえなかったのか、あっちだマヌケ。はい次」

 しかしノアは譲らず、

「俺も都市防衛軍に入る! 戦い方はもう勉強した! だから……ほら、よく見てくれよ。俺の適正資格は、一応、公務員だし」 

「あー、じゃあ向こうだ。設備科」

 後方支援どころか縁の下の力持ちじゃないか、良く言えば。つまり雑用係だ。調理の手伝いをしたり、死体から戦闘服やらを回収して血を洗い流す。

 士官はすでに次の少年の身分証を見ていたが、ノアは割り込んだ。

「頼むよ、俺も戦えるんだ!」

「兵士になりたいならまず規律から学んだらどうだ! 痛い目遭う前に俺の前からどけ」

「俺のオヤジもオフクロも外星人に殺されたんだ!」ん、少しぐらい盛ってもいいだろう「外星人に一発お見舞いしないと気がすまない! 頼むよ!」

 ノアがやたらでかい声で叫ぶせいで、士官もバツが悪くなり、書類を訂正して書き直した。

「ほら、これやるからさっさとそこをどいてくれ。都市防衛隊は隣の列だ、見ればわかるだろう」

 やった。これで戦える。そして戦場で活躍して英雄になるんだ!

物語tips:都市防衛軍

人類(ゲプト)軍を構成する5つの軍団のうち、各都市に配備され防御戦闘を担う軍団。

その他4つの軍団は外星人(がいせいじん)との戦闘を主眼に置いているが、都市防衛軍は平時は凶悪犯罪や特殊犯罪に対する武装警察組織も兼ねている。そのため、50年間 戦争のなかった当時においては比較的実践経験が豊富だった。

しかし突如 空から降下した外星人の侵略軍に対してジリ貧の戦いを強いられていた。

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