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5.そして彼女は旅に出る


 マリアが少年と会える最後の日が来た。

 最後と言っても、マリアは信じていた。この別れは一時的なものなのだと。いつか、マリアが立派な魔女になった時は、彼を探し出すことが出来るはずだと信じていた。そして、少年もきっと大人になる。お互いに大人になれば、好きなだけ一緒にいることも出来ると信じていた。


 けれど、その未来はまだまだ遠い。

 だから、今日という日を大事にしなければとマリアは強く思っていた。


 起きてからすぐに読書を繰り返し、満足したら教本を開く。マリアが注目していた魔術は一つ。初めて少年と出会ったあの日、そして、昨日会いに来てくれた時に使っていた光の魔術だ。応用すればたくさんの光を呼び出すことが出来る。光虫のように、妖精のように、そして空で瞬く星々のように、辺りを幻想的な光に包むことが出来る技だ。


 美しい照明以外の用途は、マリアにはよく分からない。だが、この魔術こそが少年に送る一時的なお別れの贈り物に相応しいとマリアは思ったのだった。初めてあったあの日から、マリアは急速に成長した。それは、紛れもなく少年のお陰だ。少年に笑ってほしかったからこそ、会いに来てほしかったからこそ、読書が自分のさがであることに気づけて、新しい魔術の取得にも前向きになれたのだ。


 だから、少年には成長した自分を見てもらいたかった。

 思い出の品はすでに渡したから、今度は記憶に残る光景を。


 ただし、その技は一筋縄ではいかなかった。糸を紡ぐ魔法よりも簡単そうに見えて、たくさんの光を生み出すという芸当は非常に難しい。成功したとしても、自分の思い通りに動かすことは困難だった。教本では一人前の魔女ならば星座を生み出したり、光の絵を描いたりすることも出来ると書いてある。本当にそんなことが出来るのか、マリアはだんだんと懐疑的になっていった。


 しかし、めげずにマリアは挑戦した。疲れると本を読み、そして心を満たしていく。あらゆる登場人物に自分を重ね、彼らにとって大切な人たちに少年を重ねた。そうすると、ますます心が揺れ動き、魔力に満ち溢れるのが実感できた。

 マリアは光を生み出した。だんだんとたくさんの光を呼び出すことが出来るようになってきた。少しずつ、それらを動かせるようにもなってきた。

 そうなると、今度は楽しい気持ちが勝っていった。


 魔法は楽しい。読書をするのと同じくらい楽しい。それがあの少年を楽しませると思うと、嬉しくなる。たとえ、彼としばらく会えなくなるのだとしても、魔法はきっと再会を約束してくれるものに違いない。

 そう信じると、心が癒された。


「いつか、一緒に星を眺めたいな」


 未来の自分たちを思い描きながら、マリアはふと感じた。


 できれば、別れる前に、少年の名前を知りたい。教えてもらうことが不可能だったとしても、せめて自分の名前は知ってもらえないだろうか。


 最後に自分の名前を教えよう。


 マリアは心に決めた。マリアという名前を、その響きを、少年に覚えてもらいたい。彼の事を今以上に知れなくても、自分の事を知ってもらえたらまた違う。名も知らない二人ではなくなるはずだ。


 ――だけど、覚えてくれるかな。


 不安もまたマリアの傍に居た。少年との間には距離がある。同じ種族の者ではないから、取り払うことができない壁が存在する。もしもお互いに大人だったら、壁なんていくらでも乗り越えられるのだろう。けれど、今はまだ二人とも子どもなのだ。恐ろしい魔の世界で生きる二人にとって、大人の言いつけはそれだけ強いものなのだ。


 それでも、マリアは怯え続けなかった。駄目だったら駄目でいい。駄目かどうかは試さなくては分からない。彼の名前を知れなくても、彼が覚えてくれなくても、自分はマリアだと名乗ろう。


 読書をしながら、魔術を練習しながら、マリアは覚悟を決めていた。

 そして、夕暮れ時になって、マリアはようやくイメージ通りの光の魔術に成功したのだった。



 昨日の予告通り、少年は早いうちからマリアの元を訪れていた。

 日が沈んですぐのことだ。鐘が鳴る時刻までまだまだ遠い。いつもよりずっと長く一緒に居られることが、マリアは嬉しくて仕方がなかった。


 ――お願い、時間を止めて。


 早く大人になりたいと願っているにも関わらず、気づけばマリアは何度もそう願っていた。談笑を楽しんでしばらく、少年が影の中でもじもじとしながらマリアに訊ねた。


「あのさ、今日も魔法みせてくれる?」

「うん!」


 元気よく言って、マリアは手をかざした。


 今日見せる光の魔術は、昨日の技よりさらに難しかった。タペストリーのように形の残るものではないが、それだけに印象は強いはずだとマリアは信じている。夕暮れ時に成功したばかりの拙さがあったとしても、少年がいつか見たことがあるという本物の星空や妖精の大群に敵わないものだったとしても、それを魔法で生み出す幻想的な光景は、彼の記憶に残るはずだと信じている。


 そしてマリアは力を放った。読書をしてためておいた魔力を一気に使った。すると、夕方に成功したとき以上の輝きが屋根裏部屋いっぱいに広がっていった。マリアはランプの灯りを消した。たくさんの光が漂うその光景は、ランプなどなくても眩いほどだ。光に照らされて少年の影がさらに濃くなっている。


 感嘆の声をあげながら、少年は影のまま手を伸ばした。


「すごい! こんなにたくさん……」


 感動する彼にマリアはさらに言った。


「見ていて」


 指をさして、滑らかに動かすと、光たちはすんなりと言うことを聞いた。本で読んだ妖精たちの踊りのように、幻想的な流星群のように。マリアの頭の中のイメージと、挿絵のイメージが重なり合う。暗闇の中で色とりどりの光が自由に飛び回って輪を描く。光たちのパフォーマンスはしばらく続き、少年の視線を釘付けにしていた。マリアは魔法に集中して、今までで最高の世界を生み出していった。


 そうして、さんざん踊った挙句、光たちの舞台は幕を閉じた。

 屋根裏は真っ暗になり、マリアがランプをつけると、少年の長いため息が聞こえてきた。


「素晴らしかったよ」


 素直で無邪気なその声に、マリアはときめいた。


「今まで見た魔法の中でも最高だった。君はきっと素晴らしい魔女になれるよ」

「ありがとう」


 マリアはにこりと笑い、立ち上がった。魔法に集中しすぎたのか、少し疲労を感じる。読書をしてためた魔力を使い果たしてしまったのかもしれない。だが、そうであるならばむしろ、悔いのない贈り物になった。

 満ち足りた気持ちで、マリアは少年の傍へと寄った。


「あのね、お別れの前に、あなたに覚えて欲しいことがあるの」

「何?」

「わたしの名前」


 影をじっと見つめると、少年もまた影の中からじっとマリアを見つめていた。すぐに反応はなかった。しばらく口を閉じて、何やら考えているらしい。マリアは不安になった。駄目だと言われたら、どうしよう。

 だが、少年は肯いた。


「うん、教えて」


 ほっとして、マリアはすぐに名乗った。


「わたしの名前はマリア。〈赤い花〉の魔女なの。いつか立派な魔女になったら、外に出て、お父さんとお母さんを探しながら、あなたに会いに行くわ」


 少年が壁へと手を伸ばす。壁の中からは何も出てこない。だが、マリアはその少年の手のひらの影に、そっと触れた。


「……マリア」


 呟くその声が、マリアの心をくすぐった。


「そっか。君は〈赤い花〉なんだね。ボク、知っているよ。外には危険な大人がいっぱいいて、〈赤い花〉を枯らしてしまうんだ。だから、君はここから出られないんだね」

「ええ。でも、立派な魔女になったら、危険な大人も見分けられるようになる。戦う事だって出来るようになる」

「君はとても勇気があるよ」


 少年はそう言うと、マリアを見つめて言った。


「ねえ、ちょっとだけ離れて」

「え?」

「ちょっとでいいから」


 言われた通り、マリアは少年の影から離れた。一歩、二歩、三歩と後退すると、少年は小さく「ありがとう」と言ってから、くるりと宙返りをした。いつものあの猫の姿に変わる。本の挿絵で見るような猫の妖精にそっくりな影が浮かび上がる。二足歩行で、背丈は幼児ほど。普通の猫よりもずっと大きく、人間よりもだいぶ小さい。そんな姿でまっすぐマリアを見つめたかと思うと、思わぬ行動に出たのだった。


 彼が手を伸ばしたかと思うと、そのまま壁から真っ白な猫の手が生えてきたのだ。驚くマリアの前で、白い手の猫は壁から出てこようとする。少しだけ力をこめて、すっぽりと出てきたのは、真っ白な毛で覆われた猫だった。普通の猫よりは大きく、二足歩行で、街で見かける少年たちのような服装に身を包み、金色の目を輝かせている。愛らしい姿でマリアを見つめると、恥ずかしそうに俯いた。


「最後だし、マリアが自分の事を教えてくれたから……」


 そう言ってから、もう一度宙返りをした。白猫の姿が一瞬にして変わる。純白の髪に金色の目は同じ。だが、そこにいるのは、猫と同じ服を着た可愛い男の子だった。背丈はいつも目にしていた壁の中の少年と同じ。彼は驚いているマリアに手を差し伸べた。マリアが慌てて手を伸ばすと、ゆっくりと握手をしながら言った。


「ボクの名前はノア。白猫のノアだよ」

「……ノア」


 しっかりとマリアはその名前を頭に刻んだ。

 ノアはにっこりと笑い、囁く。


「みんなには内緒だよ」


 そして、握手と同時に手に握らされたものに気づいた。手のひらを見てみれば、そこには綺麗なペンダントがあった。今のマリアには少し大きい。しかし、体が成長して大人になれば、ちょうどいい長さになるだろう。月の形のペンダントだ。夜に会っていた二人にとって、まさに相応しい代物だった。


「ノア、これは」

「マリアへの贈り物。月はボクたちの一族にとって特別なものなんだ。この石はね、暗い所で綺麗に光るんだよ。不思議な魔法をいっぱい使えるマリアにぴったりでしょう?」

「ありがとう、すごく嬉しい」


 すぐに身に着けて、マリアはノアの顔をじっと見つめた。


「ねえ、ノア。本当はね、わたし、ノアと一緒に旅立ちたかったの」

「うん」

「でも、駄目だって。まだ立派な魔女になれていないから。焦らずにゆっくりと努力して、立派な魔女になってから旅立ちなさいって言われたの」

「ボクもその方がいいと思う」

「……そうだよね」

「ボクもまだまだ子猫なんだ。大人の猫になるには時間がかかる。でも、いつかは大人になれる。大人になったら、〈赤い花〉を狙う悪い奴らから君を守ることもできるかもしれない。一緒に戦えるかもしれない。ボクたちの時間は果てしないんだ。魔女と同じくらいかも。だから、ゆっくりとマリアが大人になるのを待つよ」


 名前と、思い出と、贈り物と。マリアはその一つ一つの存在を思い浮かべながら、恐る恐るノアの手を握ってみた。ノアも手を握り、そして、マリアをぎゅっと抱きしめた。予想だにしなかった彼の行動に驚きつつも、マリアは笑ってその感覚に浸った。


 ――やっと会えた。


 真っ先に抱いたのはそんな感想だった。これまで何度も話した間柄だったが、名前も知らなければ姿もまともに見られなかった。触れ合う事なんて勿論できなかった。それが、今ではようやく抱きしめることができている。

 マリアは幸せな気持ちになっていた。これが、あらゆる小説の登場人物の味わった感覚なのだろうか。嬉しくて、心が解けていきそうだった。

 だが、そんなマリアの耳に、音は届いた。深夜を告げるあの鐘の音だった。



「マリア」


 寂しげな鐘の音が鳴り響く中、ノアが耳元で囁いた。マリアは震えを感じつつ、ノアの目を見上げた。


「……もう行くの?」


 マリアの問いに、ノアはすぐには答えない。その目が眺めた先――窓の外では、いつの間にか塵が降っていた。マリアもそちらを眺め、ぼんやりと思い出す。初めてノアの姿を見たのは、塵が降っていた時の事だった。あの時に凝視していなかったとしたら、ノアは自分に興味を持ってくれていただろうか。

 人々の厭う塵。だが、二人を結んだ塵でもある。幻想的なその姿を目にしながら、ノアは力なく笑った。


「寂しいけど、もう行かなきゃ」


 塵の向こうで、鐘はまだ鳴り続けている。


「明日は早いから……」

「もう、行っちゃうの?」


 マリアはノアをじっと見つめた。行かせたくない。そんな思いでいっぱいだった。何かの間違いで旅立ちの日が延びないだろうか。そんなことばかりを考えていた。

 そんなマリアをノアもまたじっと見つめた。そして、ふいに動くと、その右頬に唇をつけたのだった。惚けるマリアにノアは言った。


「お別れのキス」


 マリアは我に返って、身を乗り出した。ノアの頬に自分も同じことをする。


「お返し」


 そう言うと、ノアはくすくすと笑った。これまで散々聞いた、あの無邪気な笑い声だ。これからしばらく、いや、もしかしたら永遠に、聞くことのない笑い声かもしれない。そう思うと、マリアはますます悲しくなってしまった。

 だが、そんなマリアに対して、ノアの表情は明るかった。


「マリア」


 手を繋ぎ、ノアは言った。


「いつか君に本物のキスを受け取って欲しい」


 マリアの心が熱くなる。本に夢中になった時のように、心が揺れ動いている。強く、強く、揺さぶられている。これまで夢中になった物語の主人公たちはなんと言っていただろう。思い出すこともままならないまま、マリアは肯いた。


「わたしも」


 そして、ノアの顔をじっと見つめ、両手を握って言ったのだった。


「わたしも、いつか、あなたに本物のキスを受け取って欲しい」


 深夜を告げる鐘が鳴り終わった。

 再び静寂に包まれる外の世界は、塵が降り積もり銀色に輝いている。だが、空から降る塵は止んでいた。

 幻想的な時間もまた終わりを迎えようとしていた。止まっていても、見つめ合っていても、黙っていても、時間は流れ続けている。


 ノアは静かに微笑むと、しっかりと肯いた。


「ありがとう、マリア。お別れが寂しくなるくらい、楽しい春だった。ボクに素敵な魔法を見せてくれてありがとう。タペストリーも大事にするよ」

「わたしこそ、ありがとう。会いに来てくれて、贈り物をくれて、お話をしてくれて……」


 ノアが手を離す。ゆっくりと壁に寄っていく彼を、マリアは目で追った。引き留めたくなる気持ちを必死にこらえながら、マリアは言った。


「思い出をありがとう、ノア」

「ありがとう、マリア。さようなら。元気で。……また会おう、マリア!」


 そうして、ノアは宙返りをして猫の姿へと変わった。愛らしい顔に寂しそうな笑みを浮かべ、猫は壁の中へと消えていく。いつも見ていた影の姿へと変わると、今度は物陰に呑まれていった。


「さようなら!」


 消えていく影に、マリアは声をかけ続けた。


「あなたのこと忘れないわ。絶対に会いに行くから!」


 猫の手の影が物陰からのびる。何度か振ると、とうとう消えてしまった。マリアは慌てて周囲を眺めた。ノアの気配が何処かに残っていないか探した。けれど、もう何処にもいない。首から下げたペンダントと手と頬に残る感触以外は、ノアの痕跡は何も残ってはいなかった。


「ノア!」


 マリアは泣いた。こらえきれずに涙を流した。

 本の世界にのめり込んで泣いたことなら何度もあった。怖い夢を見て泣いたこともあったし、急に母親が恋しくなって泣いたことだってあった。しかし、そのいずれも、今ほど辛くはなかったように思えた。

 また会える。絶対に会える。

 何度も自分に言い聞かせながら、マリアはベッドに座り込んだ。首から下げたペンダントを触りながら、手と頬に残る感触を思い出しながら、何度も何度も言い聞かせ、その度に涙を流し続けた。


 やがて、マリアはハッと思い立った。


 ――立派な魔女にならなくては。


 体の震えを感じながら立ち上がり、手に取ったのは、ノアと初めて話した夜に読んでいたあの恋愛小説だった。これまで何度読んだか分からない。そんな本の頁をめくりながら、マリアはベッドに座り込んだ。

 また会えるまで、本を読もう。本を読んで、立派な魔女になろう。ノアの温もりと声を思い出しながら、マリアはその世界にのめり込んだ。


 その日から、マリアの日常は再び静かなものに変わった。あまり変わらない光景を見つめながら、本を読む日々。家族が新しい本を贈ってくれるのが楽しみな日々。外から会いに来てくれる人はいない。マリアにとっての刺激と言えば、家族が話す外のお話と、祖母が話す母の思い出話、そして時折、気分転換のために一緒に食べる食事くらいのものだった。


 それでも、マリアは退屈しなかった。本を読めば、魅力的な世界を味わえる。そうして心が満たされれば、魔法に挑戦できる。魔法を極めて、魔女としての常識を身につければ、旅立ちの日もそれだけ近くなるのだ。

 ノアと触れ合ったあの日々が、だんだんと遠い過去になっていく間も、マリアはあの日に抱いた未来への希望を忘れることはなかった。

 直向きに頑張り続けながら、マリアは時折、魔術を嗜んだ。あの日、ノアが笑ってくれた様々な魔法を、一人で眺め、そして微笑んだ。


 いつか立派な魔女になって、この家を飛び立とう。

 探すのは両親だけではない。あの日の約束を果たすために、白猫のノアに会いに行くのだ。世界は広い。屋根裏で一日の大半を過ごしているマリアにとって、その広さは尋常でないものだろう。それでも、マリアの心は希望に満ち溢れていた。

 魔法、贈り物、思い出、名前、そして約束が、二人をまた導いてくれるはずだから。


 そして月日は巡っていった。ゆっくりと大人になった魔女が、旅に出る日がとうとう来た。

 首からペンダントをさげて、何度も繰り返し読まれた本を一冊だけ抱え、旅の道具を背負ったマリアは、涙ぐむ家族たちに見守られながら、今まさに旅立とうとしていた。

 町も、国も、世界も、すべてが本に書かれているよりずっと広い。

 安全な場所と温かい家族のもとを去るのはそれだけでも恐ろしいことだろう。しかし、マリアは躊躇わなかった。希望はあの頃から変わらない。思い出が彼女に勇気を与えていた。


 振り返り、見守り続ける家族たちに手を振った。

 いつでも帰っておいで、そんな温かな言葉を貰いながら、マリアは涙ぐんだ笑顔で家族に告げたのだった。


「行ってきます!」


 こうして、マリアは外の世界へと足を踏み出した。

 約束を胸に抱きながら。新しい物語と、そして、幼い頃に見たノアとの物語の続きを追い求めて。

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