第8話 王宮での食事
初めて、ツェヴァルトや正妻、あと他の側室なんかもいる食卓に呼ばれた。
これはなんかある? と思った。気は張りつつも、穏やかなシュレイナを演じながら食卓についた。今日も安定に用意されたドレスは灰色だった。灰色のドレスだけなのに、バリエーション豊富でこの国はどれだけ余裕があるんだ、と思ってしまった。
「あーあ。せっかくの飯だってのに、あの醜女がいるせいでなんでも不味くなるわ」
「うふふ、そうですわね。私もワインが不味く感じますわ」
そう返しているのは、正妻のヴィーリャ=フォン=グリトリビアだ。彼女は、明らかにあれが本性じゃないことはすぐに見抜いた。だって、愛想笑いしかしてない。吉原でも生きてはいけると思うが、花魁にはなれないと感じた。
愛想笑いを愛想笑いと見抜かれては、ダメなのだ。目の前のステーキを切りながらそう思う。初めての残飯よりではないご飯なので、わっちは美味しくいただいている。ワインだっておいしい。グレードはきっとツェヴァルトとかヴィーリャなんかが飲んでるものに比べたら低いんだろうけど。
別に舌が肥えてるわけでもないし、いいかと思う。今回は初めてここに呼ばれたし、とりあえずは様子見だ。
(わっちが醜女? ふざけんな)
そう思うけど、表情に出さないのがプロだ。ツェヴァルトはみたことがあったが、正妻と側室の二人は見たことがなかった。
正妻のヴィーリャは金髪を綺麗な縦ロールにした女で、おそらくツェヴァルトのことが好きなのは間違いない。あれは恋をしている女の目だ。わっちがキャバしてる時の客の多くがしていた目によく似ている。
見た目はわっちの方がいいのは当たり前だけど、ヴィーリャもそこそこの美人だった。しかも事前情報によると、4歳からツェヴァルトとの婚姻が決まってたらしい。相当惚れ込んでいるらしいと、噂だった。だからまぁそこを突けばいけるかな、なんて思ってしまった。
問題は、側室の方だ。レンジー=フォン=グリトリビア。水色のウェーブした髪を靡かせている美女だ。彼女もいうて美女だったんだけど、問題はそこじゃなかった。見るからにツェヴァルトのことを金や権力の象徴でしかみてないようなのだ。
ヴィーリャが綺麗系だとすると、レンジーは可愛い系だ。その2人がバチバチしてるところに、わっちという超美人が加わったのだ。自過剰だけど、傾国の美しさなかったらこんなに堂々とした振る舞いができないこともわかっている。
「雑食なツェヴァルト様がワインの味などわかるわけないと思いますわ……おっと失礼。本音が」
「……ぶち殺すぞ。俺の舌は一流だ。そんじょそこらの奴らと一緒にすんじゃねぇ」
「というかぁ、雑種ってなんのことでございますの? ええとそれからぁ、お名前なんでしたっけ貴方」
うっざ。レンジーって側室はこういう性格か。間延びした喋り方が癇に障る上に、名前が明らかにわかっていながらそう言われた。
「おいおいレンジー……」




