勇者達[それぞれが動くとき・・]第11話
『正義の竜剣』メンバー
ミンツ 戦士 25歳
バゼル 戦士 24歳
ローゼン 狩人 22歳
モーリス 魔法使い 25歳
「追っ手は無いようです」
「よし、休まず目的地へ急ぐのだ」
「畏まりました」
「グレモール卿の状態はどうだ」
「はい、腕を失った様ですが、苦しんでいる様子はなく、静かにしております」
「うむ、ならよい」
山間の村は日が暮れると不気味な暗さをもたらす。森も近いせいか、見知らぬ鳥の鳴き声や動物、又はモンスターの遠吠えなども聴こえてくる。
「探すって言っても、こんな暗くて人の気配もない場所では手掛かりすら、見付けられないですね」
ランプを手に、辺りを眺めながら歩くツベリラ。隣に並び、険しい目付きで辺りを警戒するバゼル。
「確かにこう暗くては、周りに何があるのかさえ分からんな‥んっ?」
「どうしました?」
「いや、向こうで何やら灯りが振られていた様に見えたんだが…」
「どこです?行ってみましょう」
ツベリラとバゼルは、暗く狭い馬小屋の様な場所へと灯りを照らし入って行く…そして、そのまま戻らなかった。
ミンツとシェリーは、民家のテーブル席に座っていた。
「さぁさぁ、外は寒かったでしょう。これでも飲んで、体を温めてちょうだい」
歳のいった女性が出してくれたのは、木のカップから湯気を立ち上らせた温かいミルクである。
なぜ2人がここに居るのかと言うと、道で多くの荷物を抱えて座り込んでいたこの女性エミリアにミンツが声を掛け家まで荷物を運んであげたので、エミリアにお礼にと、ドリンクを頂いているところだった。
家に送る道すがら、軽くこの村の事や最近何か変わったことはないかなど聞いたが、エミリア曰く平和で幸せな不自由のない村だと聞かされる。
ミンツは素直に聞いていたが、シェリーにはエミリアの言葉に違和感を感じずにはいられなかった。
怪しまれないように、他愛もない会話をしつつ何か手掛かりになる事はないか探っていると…瞼が…重く…眠気が…ホットミルクで体が暖かくなってしまったせいだろうか…シェリーは眠気と闘いながら考えていると‥ガタッ。隣に座るミンツが、突然テーブルにうつ伏せて寝てしまった。
シェリーは、落ちそうな瞼を支えながら直ぐに今の状況を理解する。そう、エミリアの誘いは罠だったのだ。
ミルクに睡眠薬が入れてあり、ミンツは寝てしまったが、シェリーは魔法使いとしてのレベルが高かった為、睡眠効果に抵抗出来たのだ。
しかし、シェリーはそっと目を閉じて寝たふりをする。もし、殺す気があるのならミルクに毒を入れておけばよいのだ。それをしないと言うことは、自分達を捕まえて何かを企んでいるはず。それならば、宛もなく敵を探すよりも敵の懐に潜り込めるチャンスである。それに、シェリーとしては、いざとなれば何とでも出来る自信もあった。
ミンツとシェリーが眠りに落ちたのを見て、奥から数人の男達が姿を現す。
「寝たのか?」
「ええ、大概の事では起きないわよ」
「よし、ふんじばって教祖様のところへ連れて行くぞ」
「しかし、こいつら何者何だろうな」
「俺らが深く考える必要はねぇ、教祖様が仰る通りにしてれば間違いないんだ」
「そうだな」
ミンツとシェリーは手足を拘束された後、男達に担がれ、何処かへと運ばれるのだった…
モーリスと真里亜は、村の入り口付近を捜索していた。
「本当、何にもない場所ですね」
真里亜は散歩でもしているかの様に、警戒心なく歩いている。
「マリアンヌさん、もう少し警戒した方がいいですよ。敵が何処にいるか分からないんですから」
モーリスは、恐る恐る周りの気配を探りながら慎重に歩いていた。
その時、
ガサガサ‥
近くにある建物の裏手から複数の人の気配と足音が…。1人2人‥姿を現したのは7人の村人らしき男達、その手には鍬や鉈などが握られている。
「何かご用ですか?」
真里亜は、敵意剥き出しの相手に、まるで通行人に話し掛けるかの様な口調で尋ねる。モーリスは、真里亜の後ろで「マリアンヌさん、違うって、不味いって」と、あたふたしている。
「いい度胸しているのか、ただのアホなのか、大人しくしろ」
迫り来る村人の1人が、真里亜に鉈を突き付けながら怒鳴るが、真里亜は「それは無理です」と素っ気なく答える。
村人は「ならば、力ずくになるべさ」と言い放ち真里亜達に襲い掛かった。
それを見て、モーリスは慌てて呪文の詠唱に入ろうとするが、魔法が完成する事はなかった…
村人の攻撃をかわした真里亜は、回し蹴りで村人の腕を蹴り飛ばし鉈を弾き飛ばす。そのまま次々と多彩な蹴りで男達の武器を蹴り飛ばし、蹴られた男は腕を抑えて踞るか、尻餅をついて座り込んでしまった。
真里亜が手をはたき一段落している姿を、モーリスは呆気に取られた顔で眺めていた。真里亜達は、襲ってきた村人達を拘束して一旦宿屋に戻るのだった。
ローゼンは今、村で唯一の大きな建物である寺院の屋根に潜伏している。村には不釣り合いな建物だったので怪しいと目処をつけたのだ。
そして、寺院の中を覗いていると何やら村人に指示を出している司祭の様な格好の男が居るのを見付けた。その日寺院では、村人の出入りが激しく、何か起きたかの様な動きだった。
村人や司祭の行動を怪しんだローゼンは、暫く寺院に張り付き様子を見ていると‥
村人に縛られ寺院に連れて来られた二人の姿が‥「バゼル!ツベリラさん!」
ローゼンは、思わず声にしてしまい、慌てて口を抑えたが、幸い村人達には聞こえなかった様だ。
怪我はしてない様だが、二人はロープでぐるぐる巻きにされている。
「不味いな、他のメンバーに知らせて救出しなくちゃ」
と、考えたのも束の間、次に村人の集団が担いで寺院へ運んで来たのは、ミンツとシェリーの姿であった。
ーーなにっ!怪我はしてないようだから、眠らされているのかーー
村人の数や動きを見ていて、ローゼンは1つの答えに辿り着く。
ーーこの村の住人は全て、あの司祭の元、敵なのだーー
ローゼンは、急ぎ、まだ無事であってくれることを祈る気持ちで、真里亜とモーリスの元へと走るのだった。
その頃、真里亜とローゼンは宿屋の側で村人達に囲まれて居た。
「あのぉ、私達はこの人達に襲われて、縛っているだけで、決して悪人ではありません」
真里亜は、自分らが連行している村人を助けようと、他の村人達が集まって来たのだと思っていた。
しかし、その血走った目を見ながらモーリスは事の大きさにうっすらと気付き始めた。
真里亜が必死に説明するが、村人達は武器を構えてジリジリと迫り来る。
「どうしましょう?捕まえている村人を解放して信じて貰うしかないでしょうか」
真里亜は、モーリスに困った表情を向けると、モーリスは「いえ、マリアンヌさん。これは勘違いではなく、村人達の正しい行動のようですよ」
真里亜は今一つ理解出来ず「う~ん、それって?」とモーリスに聞き返すので「ですから、村人全員が我々の敵だったと言うことです」
モーリスの言葉を聞いて、真里亜はやっと理解して「えっ、そうなの?」と驚き「その様です。だからこそ、この様な行動に出ているのでしょう」とモーリスは言い終わると、生唾を呑み込んだ。
真里亜は困り果てた顔で「かと言って、村人にこれ以上危害を加えるのは‥」とモーリスを見ると「そうですね、ここは逃げましょう」と言って魔法を唱えた。
『スモーククラウド』
すると、辺りは突如現れた煙りに覆われ、その場に居る人間の視界を奪う。その隙に、真里亜とモーリスは、その場を後にするが、何処へ逃げて良いのか分からず、足を止めてしまった。
その時「2人供、こっちです」と、2人の前にローゼンが現れ、ローゼンに連れられ3人は森の中へと消えるのであった。
「教祖様、言われておりました、村に災いをもたらす輩達捕らえて参りました」
「うむ、そいつらだな。今夜は、大事な用事が控えておる、取り敢えずそいつらは地下の牢屋へ入れておくのだ」
「はいっ」
ミンツ達4人が、運ばれて行く最中、シェリーが「うっうぅ」と色気のある声を出し、脚を開いて太股をさらけ出し、胸を張って胸のボリュームを強調する。
「あーお前達」
教祖はミンツ達を運ぶ村人達を呼び止める。
「はい?」
「おっほんっ。1人くらい、話を聞かなければならないので、その最後尾の女は、私の部屋へ運び、縛っておくのだ」
「はい、分かりました」
そう言って、シェリーだけ、教祖の部屋へと運ばれるのであった。
暫く経ち… ガチャッ
「ふぉっふぉっふぉっ。けしからん娘には、お仕置きせねばならないからなぁ」
教祖の部屋は10畳程の広さで、ベッドと椅子とテーブル、あとは教祖の私物が入っているクローゼットがあるだけだ。
シェリーは、部屋の中央付近に置いてある椅子に縛られたまま座らされている。
「起きておるのじゃろ」
教祖がシェリーの側に近付き、声を掛ける。
「あら、分かってました?」
シェリーは、眠った振りで項垂れていたが、クイッと頭を持ち上げ答えた。
「わしを誘惑しようとは、何が目的じゃ」
「目的?そんなのないわよ。旅先で馬車に乗せて貰っただけなのに、突然捕まっちゃうんだもの。命が惜しいのよ」
「ほぉ、お前は奴等とは無関係と申すのだな?」
「当たり前じゃない。私は1人旅よ」
「そうかそうか、だが、そんな話をそのまま信じるわしではない。明日、捕まえた者の1人を処刑するから、それを黙って見ていられたら信用しよう。それまではここでじっとしておれ」
「えええぇぇ、私にこのまま座って一夜を過ごせって言うの」
「ベッドくらい貸してやる。今夜は何かと忙しく、わしは寝る暇はないのでな」
そう言って、シェリーをベッドに放り投げ、教祖は部屋をあとにした。
ーーふぅん、今夜ね。何があるか知らないけど、今夜中にここにある筈の呪術を破壊して、皆を助けて脱出しないとねーー
シェリーは、そう呟いてから、ベッドに縛られたままの体を起こして魔法を口ずさむ。
『アンチリストレクション』【拘束解除】
すると、体をグルグル巻きにしていたロープがスルスルとほどけ、ベッドの上へと落ちいく。
床へと両足を着け、軽く洋服を叩く。
「全く、荷物みたい扱ってくれちゃって、後で覚えてなさいよ」
シェリーは、そう愚痴を溢し『インビジブルカーテン』【幻影姿隠し】を唱え、スタスタと廊下へ出ると、部屋の扉に『アンロック』【魔法の鍵掛け】を施し「時間稼ぎにはなるでしょう」と言って捜索へと動き出した。
「だいぶきたのぉ」
「うん、今夜辺り着きそうだね」
「そろそろ着いて貰わねば疲れてきたぞ」
「アサヒは俺に乗ってるだけだから、疲れてないでしょ」
「乗ってるだけでも疲れるわい」
志恩とアサヒは、馬車を追い掛け2日目に入っていた。馬車は朝方、少し馬を休ませただけでずっと走り続けている。今は、平地を抜け山間の道を走っていた。
「シオンよ、気付いておるか?」
「ああ、追い掛けて来たみたいだね。サイラス‥」
山の中腹から志恩とアサヒは、馬車を追跡していると、その遥か後方に2頭の馬が馬車の通った道を追い掛けている。その騎乗にはレザーアーマーを着込み跨がるサイラスの姿と、その後を追い掛ける様に走る馬に跨がるちびっこいハービットの姿が見えた。
暫く様子を見ていると、辺りは真っ暗な闇に覆われ、馬車はスピードを落とし走り続ける。その後方を走っていたサイラスとハービットは、やっと馬車の明かりを見付けた様で、距離を保ちつつ追跡していた。
そして…
終着点であろう場所の明かりが、志恩の目に見えてくるだった。
今回で一段落の予定だったんですが…
次回、一段落つく予定です。




