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勇者達[親切な仲間]9第話

「うっううう、怖いよ、出してよ」


 暗がりで身を寄せる二つの影。


「うるせえ、大人しくしてりゃあその内出してやる。外にわな」


 ガシャンッ


 男は階段を上り部屋へと入る。部屋には黒装束やローブの男達が6人。


 真ん中に立つローブの男が尋ねる。

「下の様子はどうだ?」


「はい、ぐずっては居ますが、大人しくしております」


「そうか。あと二人は必要だが、最近、警備の人間が多く動いているようだ。話ではギルドの冒険者にも話が回り始めたとの事。慎重にな」


「畏まりました」









 志恩とサイラス達は森の中を歩いていた。


「いやぁ、まさかシオンがこんなに困っていたとはなぁ」

「いやいや、お恥ずかしい」

「今回の依頼は、報酬を優先したから結構危険かもしれない。危なくなったら、各自逃げに転じてくれ」

「「了解」」



 志恩とサイラスは、最初、簡単な依頼を受けようとしたが、志恩に聞くと武器も防具も何も無いとの事。サイラスは、驚いたが、今度は志恩の為にお金になる依頼を受ける事に変更し、今に至る。


 今回の依頼は、町外れに在る森の洞窟にいつの間にかゴブリンが住み着き繁殖していて、最近、近くの農園が襲われ、食料を奪われそこで働く女性が拐われる事件が起きた。

 そこで今回、そのゴブリンの洞窟を襲撃し、ゴブリンを殲滅して欲しいとのこと。ゴブリンは1匹残らず倒すのが条件である。依頼達成後調査を行い、ゴブリンを全滅させてられれば、報酬を満額貰える手筈になっている。


 志恩は、クエストの出発前にサイラスからゴールドを借り受け、身支度を整えた。そこで、今回のクエストなのだが、これに成功すれば、サイラスに借りたゴールドを返し、更にこれからの志恩の旅の資金になる予定である。だからこそ、志恩もこの提案に乗ったのだ。


 志恩は今回、防具は特に着けず、杖を持って後衛からの魔法援助を行う手筈になっている。念のために剣も腰には下げている。



 志恩達は、被害にあった農場を見てから森に入り、途中、何度か狼や食人植物などとの遭遇戦をこなし、目的の洞窟入り口へと辿り着いく。


 洞窟の入口は、木々で覆われ隠されるようにその大きな口を開けている。入口の大きさは幅、高さ3mくらいで、見張りなどの気配は感じられなかった。


「敵の姿は見えないが、用心してくれ。敵の数は50は超えると思われるので、いくら弱いゴブリンと言えど、数の脅威には勝てないからな」


「「了解」」



 志恩達は洞窟へと静かに潜入し、遭遇するゴブリンを逃がさず倒して行く。すると、行き止まりの部屋に到着する。そこは4つの扉が有る部屋で、扉には外から(かんぬき)で鍵がされており、2つは扉が開け放たれていて二畳程の部屋は、少し異臭がするだけで何も無かった。


 残った扉を様子見の小窓から中を覗くと、床に倒れてる4つ人影。警戒しつつ、閂を外し中へと入ると、中へ光が射し込み床に倒れる4人の死体が見える。2体は男性で、激しく殴られた痕があり、着ている服もボロボロになっている。残り2体は女性の死体で、衣服が剥ぎ取られており、胸には刺し傷が見られる。サイラスは思わず目を反らし、下唇を強く噛み締めるのだった。


 志恩達はその部屋を後にして、残る1つの部屋を見るが、真っ暗で何も見えず警戒をする。しかし、志恩は魔法によって中の様子を把握しており、小さな人の存在を確認していた。

 扉を開き皆が武器を構える中、志恩は「大丈夫です」と言って前へ出る。サイラス達は「おっおい」と心配したが、志恩は手で抑えてから優しく「出てお出で、助けに来たよ」と(かが)んで様子を伺った。すると、中から小さな影が現れ、歩み寄ると志恩に抱き付く。

 その姿は、汚れた服や顔をした少女で綺麗なブロンドの髪が印象的に残る姿だった。


 少女は震えた体で志恩に抱き付いたまま泣きじゃくり、その姿を安堵でサイラス達は見詰め、辺りを警戒し「ゴブリン供め」と怒りを露にする。


 少女が落ち着きを取り戻した頃合いにサイラスが志恩に相談した。

「なぁシオン。倒したゴブリンの数が少ない気もするが、聞いた話ではこの先はもう部屋数もなく敵が隠れられる場所も無さそうだ。俺たちは残りの残党を掃討しているから、シオンはその子を安全な地上に早く連れて行ってあげてくれないか」


 志恩もアサヒに聞いて、この先に危険を感じる事はなく、怯える少女を早く安心させたい気持ちはあった。

「分かりました。みなさんも、何か危なかったら直ぐに撤退してください」


「心配してくれるなんて嬉しいねぇ。任せろって」

 そう言って、マーベラは志恩の背中を叩き、志恩が少し咳き込む姿をみんなで笑っていた。



 志恩は少女から名前だけは聞き出すことが出来、背中に背負い来た道を戻っていた。

 少女の名前は『サラ』、名前以外は話さなかったが、今は泣き止み、静かに志恩の背中に顔を埋めている。少し駆け足気味に歩く志恩は、サラに色々話し掛けたが、結局名前以外は喋ってくれなかった。



 志恩は、やっともと来た道を戻り洞窟の入り口へと辿り着く。

「やっと出口が見えて来たよ。もうちょっとの辛抱だからね」

 少女に励ましの声を掛け、地上へと出た志恩。しかし、志恩とサラを待っていたのは、安全な地上ではなかった…



 志恩が外の大地を踏み締めたその時、辺りの開けた空間から少し離れた木々の陰、獲物を待ち構えていた鋭い目で1匹1匹と武器を手に持つゴブリンが姿を現す。その数、ざっと40は超えている。


 志恩を囲うゴブリンの群れの中から、一際(ひときわ)体格の大きなゴブリンが叫んだ。

「ゴブゴブゴーブゴゴブブー‥‥」

[まんまと罠に掛かった人間を血祭りに上げろ。最初の獲物だ!存分に殺せ]



 静まり返る森の中、洞窟前の広場に(たたず)む子供を背負った少年。それを囲う多くの醜いゴブリン達。その囲いをジリジリと狭め、ざわめき立っている。それは自分達の絶対優位を確信しているからの行動であった、がしかし…


 志恩は背中で震えるサラを地上に降ろし、1度ギュッと抱き締め「大丈夫だよ」と呟くと、スッと立ち上がり突然高笑いを始める。


 自分達が絶対的優位に居ることを確信し、相手は怯える只の獲物で有るはずだったこの状況で、突然の高笑い。ゴブリン達は戸惑い足を止めてしまう。


「助かったよ。お前達と遭遇したのが俺一人の時で。他のメンバーが居たら、本気を出せなかったからな」

 志恩は、言葉が通じぬと分かっていたが、気持ちが言葉に出てしまう。そして、持っていた杖を掲げると、

『アンチシールド』【下位魔法攻撃防御】

『アンチプロテクト』【下位物理攻撃防御】

 魔法を唱え終えると、杖を地面に置き剣を引き抜く。


 それを観ていたゴブリンリーダーは、「奴を殺せ」と叫び、その号令と供にゴブリン達が一斉に志恩へと押し寄せる。その中には、矢を放つ者や下位だが魔法を唱える者もいて志恩へと矢や攻撃魔法が降り注いぐ。

 だが、矢や魔法は志恩の体に当たることはなく砕け散る。


 それと同時に、剣を構えた志恩は、意識と力を剣に流し込み、横振りに剣を凪ぎ払った。


《ソニックソード》


 志恩が剣を振るう度に、刀身からは光が輝くブレードの光が飛び散り空気を裂きゴブリンの群れへと命中していく。光の斬激は、ゴブリンの体を二つに切り裂き、志恩が一息ついた時には、殆どのゴブリンが二つに切り裂かれていた。


 残ったゴブリンリーダーとその周りに居るゴブリンは、動きを封じられたのかの如く身動き一つ取れずに立ち尽くす。

 志恩は、最後の仕上げとばかりにゴブリンリーダー目掛けて剣を振るう。


星屑乱舞剣(スターワイルドダンス)


 光の粒が、残ったゴブリン達の体を通過し、その後、肉体は肉片へと変わり崩れ去った。


 志恩は、剣を腰に戻すと「もう大丈夫だよ」と、震える手で志恩の脚にしがみつくサラの頭をそっと撫でるのであった…








「「「お疲れ様」」」


 カキーーン


 冒険者ギルドの酒場でサイラス達と志恩は盃を重ねていた。

「いやぁ~何はともあれ、無事で良かったよ」

「1歩間違えば、全員お陀仏だったぜ」

「本当、本当。運が良かったよね」

「全ては、ルクルス神のお導きです」



 志恩がゴブリンを殲滅し暫くすると、サイラス達が洞窟から姿を現し、その現状に驚く。

 ゴブリンの死体が散乱し、その中央に志恩とアサヒを抱えたサラが屈み込んでいた。

 サイラス達は、慌てて志恩らに駆け寄り辺りを警戒するが、既に動く者の気配はなかった。

 志恩はサイラス達に、出てきたらこの状況だったと伝え、ゴブリン達の罠に掛かるところを救われた様だと、その状況を説明するのだった。



 町に戻った志恩達は、身元が分からないサラを一旦教会に預かって貰い、後々身寄りを探す事にする。

 そして今日は、冒険の成功を祝ってギルドの1階食堂で酒盛りをしていた。その時、志恩は仲間とはぐれてしまった事をサイラス達に話すと、サイラスが、この町に居る間はパーティーを組んで協力すると言ってくれた。志恩としては、ちょっと面倒と思ってしまったが、サイラスの人の善さに感謝の言葉を述べた。…勿論、その横ではアサヒの呆れた視線が注がれていたのだが‥



 次の日志恩は、アポを取っていたギルド長に出会い、紹介状を渡す。ヤジルさんとは、昔からの知り合いで、快く協力してくれるとの事だったが、今は少し問題が生じていて、下の者に伝えておく位の協力になってしまうと言われ、お願いだけしておく。


 そして、情報を集めながら簡単な依頼をサイラス達とこなし、サラの身寄りを探す。と言う日常を数日行ったある日、その事件は起きた……


どんどん脱線していく…

すぐに合流します。

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