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ミラクル・グッバイ その9

 誰も望まぬ朝日が昇る…明日の朝日は昇るのだろうか…


「おはようございます」


「おはよう、由依ちゃん」


「お姉ちゃんが、出掛けて行きました」


「ああ、知ってる。でも、今度の仕事が最後だと思うよ。だから、信じて待ってよう」


「はいっ」







 佳澄はスカーと連絡を取り、装備と指令を受け取っていた。

 そして、装備を整え、目的の場所へと向かうのであった。

 佳澄は移動の最中、昔の記憶を思い出す…


「パパ~約束したでしょ」

「こらこら、佳澄、今日は無理だよ、仕事なんだから」

「ヤダヤダヤダ!」

「駄々っ子ねぇ~由依はこんなにお利口さんなのに」

「だって、前から楽しみにしてたんだよ」

「分かったよ、じゃあ、夜中に出発しよう。そうすれば、朝には向こうに着けるからな。お泊まりは出来ないが、それでもいいかな」

「はーい」

「もぉ、お父さんは佳澄には甘いんだから‥‥


 ドカーン ガシャーン


 キキキキキ ドーン


 炎上する車、誰もいない森…


「お父さん‥お母さん‥由依‥」




 ハッ、佳澄は、汗で体に張り付くシャツを触りながら、現実に引き戻された。


「また、あの夢を‥」


 佳澄の我が儘の為に、両親が事故で亡くなり、由依に大怪我をさせてしまったあの出来事を…



「お客さん、そろそろ着きますけど、どの辺で停めますか?」

「あぁ、次の交差点の手前で」

「はい」


 タクシーは静かに停まった。






 午前中、志恩の元へ1本の電話が、


「はい、どうしましたか、伊集院さん」

「なぁーに、その冷たい言い方は。もっとわたくしを大事にしないと、後悔なさるわよ」

「はいはい、わかったよ。それで麗香、どうしたんだ」

「今日、クリスマスパーティーをするんですよね」

「情報早いなぁ。別に俺がしたい訳じゃなくて、皆が勝手にやるみたいだけどな」

「それなんですけど、今日のパーティーは私の知り合いの船で、船上パーティーをやることに成りましたの」

「成りましたって言ったって、みんなでやるんだから、俺一人じゃ行かないぞ」

「大丈夫です。皆さん喜んで来てくださるそうですよ」

「おいおい、既に手を回しているんかい…」

「今日の夜5時までに、晴海埠頭までお出でください」

「でも、俺の方は今日、俺と妹と車椅子の女の子がいるんだ、だから無理かもな」

「・・・・大丈夫です。それでしたら、夕方4時に志恩の家まで車でお迎えに参りますわ。船の方は、車椅子の方でも不自由のない設備になっておりますので」

「手強いな‥」

「何か申しました?」

「いや、なんでもない」



 こうして志恩達は、甲斐家でのクリスマスパーティーから一転、豪華客船でのクリスマスパーティーへと移り変わって行くのだった。


「あっ!何着てけばいいか、聞くの忘れた!」







 その日の夕方。


 ピンポーン!


「はーい」


「志恩様の御宅で間違いないでしょうか?」


「はい、そうです」


「早乙女様のご依頼でお迎えに参りました」


「へぇ~リムジンが迎えに来たわよ、志恩」


「流石、お嬢様。ゴージャスだねぇ~」

「ほーんと」


「あの…志恩さん。本当に私なんかが御一緒してもいいのかしら」

 由依は、志恩の後ろで戸惑っていた。


「何言ってんの。由依ちゃんにも着て欲しいから、リムジンでのお迎えなんだからさ。もっと、自信持って行こうぜ」


「は、はあ」


 由依は、志恩と愛莉にエスコートしてもらい、リムジンへと乗り込むのだった。




 客船乗り場には、既に他の仲間達が集まっていた。剛、貴司、政夫、静香、柚木、そして…シェリー‥なぜ?


 客船乗り場にリムジンが到着すると、何様だと言う空気で眺めていた剛達だったが、そのリムジンから志恩達が姿を現すと、驚きながら皆、集まってきた。


「おいおい、いくらなんでもリムジンとは特別過ぎないかよ」

 剛が呆れたように、口を尖らせと、志恩の後ろから車椅子の由依が運転手の補助を得て、降車する。


 志恩は由依を自分の前へとエスコートして、皆に紹介をする。

「車で来たのはこう言う訳なんだ。今日、皆と一緒にパーティーに参加する、川原由依さん。宜しくな」


 由依は車の中で、今日来るメンバーの大体の説明は受けていたが、実際、人と触れ合うのには抵抗があるようで、少し怯えた雰囲気を出していた。

 すると、静香がすっと、由依の前に進み出て「始めまして、私は海堂静香、宜しくね」と言って笑顔で右手を差し出す。由依は一瞬戸惑ったが、肩にそっと添えられた志恩の手に気持ちを落ち着け、控え目な声で「宜しくお願いします」と、手を握った。

 それを皮切りに、剛や柚木など、みんなで自己紹介と握手を交わしていくのだった。


 志恩は、人垣となった由依の元を離れ、シェリーの側に近付く。


「おいっ、な、ん、で、居るんだ?」


「あら、先生に対してその口と態度はないんじゃないかしら」


 志恩は、無言でシェリーを睨む‥


「やあぁねぇ~またまたよ。ほ、ん、と!またまた、麗香ちゃんに学校の事で電話したとき、この話題になって、その時もし生徒だけで何かあったら後々面倒だからって話になって、一応、先生が居た方がいいんじゃないかって事になったのよ。もぉ~仲間外れにしないでちょうだいっ」

 と言って、志恩の背中をツツク。


「はぁ~、大の大人が、クリスマスだって言うのに、生徒にくっついてなにやってんだか。予定とか無かったんですか?」


「そっそれは…大事な生徒にもしもの事があったら大変だから、予定をキャンセルしてまで来たのよ。そう、そうなのよ」

 シェリーは目を泳がせながら、必死に喋っている。



 そうこうしていると、志恩の背後に人の気配が、いや、背中に○っぱいが…


「しおーん、久し振り。休みは何をしていたの?」


 志恩に背後から抱き付いて来るのは、今回の船上パーティーのホスト、麗香であった。

 その登場に、全員が振り返る。


「こんばんは麗香。今日は企画してくれてありがとう。楽しみにしているわ」

「おう、こんなでっかい船に乗るのなんて始めてだよ。サンキューな」

「麗香さん、こんばんは。今日はクリスマスに貴重な体験出来そうで楽しみにしてます。ありがとう」


 などと、各々挨拶をしていく。


 愛莉だけは、引き攣った顔をしながら志恩の頬を引っ張り、

「いつまで鼻の下を伸ばしているのよ」


 と、言ってから「麗香さん、こちら由依さん」と車椅子の少女を紹介する。


 麗香も志恩から離れ、由依の前へと進み出ると、


 「宜しくね」と、ポーズを決めて麗香は由依に挨拶をした。


 由依は「よっ宜しくお願いします」と、ちょっと驚きと怯えた雰囲気で返事を返した。



 各々、自分なりの衣装で参加したが、剛と静香のジーンズにトレーナーに革ジャンと言う、ラフ過ぎる出で立ちに関しては、麗香から、貸し出し衣装があるので着替えた方が良いと提案があり、蝶ネクタイのフォーマルスーツと、ワンピースドレスに着替えるのだった…




 全員は船に乗り込み、一旦、学校の教室ほどの大きさはある部屋へと通された。

 その部屋は、中に幾つかの小部屋が付いており、中にはベッドが備え付けてあり、夜はそこで就寝となるとのこと。

 この船では、まずエントランスホールで簡単なパーティーが開かれる。まず一同は、その船内パーティーに参加し楽しんだあと、この部屋へと戻り身内でのクリスマスパーティーを行う予定でいた。


 各々、着替えや準備を整え、寛いでいた。


「こんな素敵な体験したことがないけど、私なんかが居ていいのかな」

 ちょっと雰囲気にのまれ、浮かない顔をしている由依が、そんな言葉を洩らす。


「大丈夫だよ。みんな、こんなパーティーなんて始めてなんだし、由依ちゃんが気にすることなんてないよ。目一杯楽しみましょう」


 愛莉の言葉に「うん、ありがとう」と少し表情を和らげるのであった。



 船が走り始めて2時間程立った頃、館内アナウンスが流れ、各部屋から船客がエントランスホールを目指して集まり初めていく。


 志恩達も準備は出来ているので、みんな揃って部屋を後にする。

 船にしては通路は広く、それなりの人の数が集まって行くが、混雑で通路が歩きづらいなどと言うことはなかった。



 そして集まったエントランスホールには、沢山の人で賑わいでおり、食べ物や飲み物も既に用意され揺る回れていた。


「凄いね、こんなに一杯の料理や飲み物が全部ただなんて」


 その場の雰囲気に、はしゃぐ愛莉を落ち着かせながら、会場の中程へと進んで行くが、剛や静香などは、既にどこかへ消えており、みな呆れる。


 和やかで、楽しい雰囲気を志恩や由依なども堪能していた…



 その時‥


 志恩は視界に数人の男達を捉えた…


 あれは、間違いない。


 悪徳組の人間、そしてその中心に居る人物こそ、悪徳組組長と見受けられる。



 そして、志恩は気付いた…


 悪徳組の集まる場所の死角になる階段上部から降りてくる、美しいドレスに身を包んだ、綺麗な女性の姿を…



「まさか、こんなところで‥」


あまり先へ進んでませんが。

次回、クリスマスの願い。

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