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アイドルの1日  前編

納得のいく内容が思い付かず、先々大幅カットするかもしれません。

 甲斐家のリビングで愛莉は食後のテレビにかぶりついていた。

《今週の1位は‥一条リサさん[Unforgettable]で2週連続です》


 トゥルトゥルートゥルトゥルー


「愛莉、ちょっとテレビの音小さく、電話なってるからさ」

「電話は他でしてください。今からいいところなんだから」

 …全く、アイドルだかなんだか知らねぇが、何がいいんだか‥ぶつぶつ。

 志恩は自分の部屋へと戻りながら、葛城からの電話に応対した。


《では、歌って貰いましょう》

《「深い~深い~あなたへの~‥‥」》

「深い~深い~あなたへの~」

 愛莉はテレビの前で歌って踊っていた。



「はい」

「夜分に悪いね。どうしても、志恩くんにしか頼めない案件があってね、協力をお願いしたいんだ」

「お願いじゃなくて強制の間違いじゃないですか」

「‥‥そんなことはないぞ」

「その間とうわずった声、わざとらしいですね。で、どんな内容なんですか?」

「今回の依頼は、志恩くんも嬉しい内容のはずだ。実はアイドルの一条リサが何者かに狙われていて、それを警護して、犯人を捕らえて欲しいと言う内容だ」

「確かに、嬉しいですけど…」



 葛城の話ではここ最近、一条リサの周りで危険な事が連続して起こり、事務所がSPを雇ったのだが、車に乗車しようとした時、車が爆発、運転手とSPが死亡したと言う。

 事務所側も警察沙汰にしたくないが、死亡者も出ているので、出来れば内密に事を運びたいと警察に相談してきたのだ。

 だが、なぜここで志恩なのかと言うと、2回目の襲撃で車が爆発したのだが、鑑識の結果、車の下で爆発が起き車が炎上したが、爆破に使用された物の痕跡が何もなく、吉田議員が爆死したケースと同じ事が分かったのだ。そこで彼ら6課に話が回ってきたそうだ。

 早速明日の昼、東西テレビに行き、打ち合わせすることとなった。

 愛莉に軽く一条リサの事を聞いたのだが、物凄い食い付きで話が脱線し、愛莉が熱狂的なファンのようだったので、今回の事は内緒にすることにした。





「はぁああ~絶っ対お断りよっ!既に守ってくれる人に死者が出てるのに、新たにボディーガードを付けるなんてとんでもないわ、自分の身は自分で守れますから。それに今が一番大事な時なんだから、仕事もキャンセルしないでね」


 バタン タッタッタ


 一条リサが部屋を出て行き、社長とマネージャーが部屋に残された。


 コンコン


 部屋のノックで案内されて入ってきたのは、志恩、葛城、三上の3人である。

 席に着き3人はマネージャーの話を聞く。

 今回の事で民間会社のSPは警護を断ってきた為、警察からの警護に切り替わる。しかし、当の本人は警護を嫌がり、自分の周りに人を寄せ付けようとしないようだ。事件が解決するまで、仕事を休むか減らそうとも言ったのだが、今、活動を遅らせれば芸能生命に関わると本人が拒絶しており、困り果てているところだっだ。

 今回の事件は警護を多くしても被害が大きくなるだけと思い、志恩ら3人で警護に当たることにした。

 志恩の事を事務所社長とマネージャーには、見た目が童顔の刑事で警護に気付かれにくい人選で連れてきたと説明し、参加させた。




 話を終え、まず一条リサの楽屋へ志恩達は訪ねてみることにした。


 コン コン


「警視庁の者ですが、少しいいですか」

 扉越しに葛城が尋ねる。

「必要ないので帰ってください」

 中からリサの冷めた言葉が帰ってきた。

 今度は志恩が替わりノックする。コンコン。

「あの~話を聞かせて貰えないかな?アリサ」

 暫しの間が空いた後、扉が勢いよく開き目を真ん丸にした亜理沙は志恩の顔を確認すると、3人を部屋へと招き入れてくれた。


 志恩は亜理沙に葛城達と自分の関係を軽く説明した。

「ふ~ん成る程、分かったわ。シェリーからも軽くは聞いていたけれど、彼らが警察内部の協力者って訳ね」

「そうだね、色々協力しあってるかな」

「分かった。今回の件、シオンが居るなら心強いしお願いするわ。だけど、シオン以外は私の近くには危険だから居て欲しくないの」

 葛城はリサの言葉に頷き、今後は志恩がリサの側でマネージャーとして警護し、葛城達は少し離れて待機し警護に当たることとした。



 早速その後直ぐ、仕事に入った。

 その日のリサの予定は最初にCM撮影が入っており、リサと志恩達はスタジオへと向かった。


 撮影スタジオに入りリサは衣装へと着替えて来る。

 志恩は辺りを警戒しつつ魔力感知などで罠や攻撃を探っていた。

 撮影が始まり、リサが演技などをして動いているのを志恩は眺めながら、あぁ芸能人なんだなぁ…などと感想を漏らしてしまう。

 撮影は順調に進み、志恩もリサと久々の再開で、ぼんやり見とれていた‥その時、志恩の視界で光が一瞬揺れた気がし、周りを見回す。そして上を向いた時、ライトの1つがリサの頭上へと落下する。


「アリサ~危ないっ!」


 志恩の叫びに、その場で撮影していた全員が動きを止める。いや、リサだけは志恩の叫びに反応し、志恩の方向へジャンプをし、前転をしながら転がった。

 その直後、リサが立っていた場所に電子レンジ程の大きなライトが落ち、激しい音を立てて砕け散った。

 普通の人では危ないと叫ばれると、その場で周りを警戒して動きを止めてしまうのだが、志恩はアリサが反応する事を知っていた。それだけ長く一緒に冒険を共にしてきたのだからと…


 その後、撮影は中止になるかと思ったのだがすぐに再開され、無事に撮り終えた。

 あんな事故が起きた後は、被害に合った人間が怖くて演技など出来なくなるのだが、リサにとっては

命の危険などで気持ちが揺らぐ事などあるはずもなく、撮影を続行させたのだ。

 葛城の調べで、ライトには細工がされており遠隔で落下するようにしてあった。相手が未だリサを狙っていることが判明する出来事でだったと志恩は思い知った。


 リサは撮影が終わると何事もなかったかの様にスタジオを後にし、志恩と共に次の撮影現場へと向かう。

 次に到着したのは工場跡地、ドラマの撮影を行う予定だ。

 工場跡地に人気は無く、周囲に人影も見当たらない。犯人が狙うには絶好の場所と志恩には思えた。

 ドラマの内容は、女探偵が犯人を尾行して工場跡地に来たが、尾行がバレてしまい銃撃戦となり追い詰められる。と言う設定の場面らしい。

 暫くして撮影がスタートする。

 逃げ回る女探偵リサに犯人の銃弾が迫る‥まではいいが、状況がおかしい。本物の銃声を聞いたことがある志恩だからこそ分かるのだが、この銃声は本物だ。

 リサは銃弾を掻い潜り、廃工場の中へと逃げ込み屋上へと到達する。そこで犯人が爆弾を使い建物を爆破するので、リサは屋上から裏手の貯水地へ飛び込み逃げる。と言う台本になっており、爆弾は煙りだけで建物の崩壊はCGを使う予定だった。屋上からの飛び込みも、CGとスタントマンを使う手筈になっていたのだが…

 リサが屋上に到達したとき爆破の指示がでて、建物の爆弾が煙を出す予定だが、建物は大きな音を立て爆発を起こし崩壊を始める。スタッフは驚き、慌てて動きを止めあたふたとしている。その時、志恩の頭にリサの声が響く。

 ーー撮影を止めないでーー


 その声を聞いた志恩は監督とカメラマンに「撮影を続けて」と叫ぶ。リサは屋上のカメラに映る(へり)を走り、そのまま貯水地のある屋上の端まで走った。

 しかし、リサはそこで一瞬足を止める。何故ならば、貯水地の水が抜かれており、下はコンクリートが剥き出しとなっていたのだ。

 だが次の瞬間、リサは水の入っていない貯水地へなんの躊躇(ためら)いもなく、カメラワークを意識しながら飛び込んだ…



「どうでしたか監督、いい画撮れました?」

 リサは何事も無かったかの様に撮影を終え、監督に話掛け、監督も顔をひきつらせながら「よかったよ」と、OKを出す。

 その日のドラマの撮影はそこで終了し、リサと志恩達は次の現場へと向かった。

 工場跡地には無数の弾痕と崩壊した一棟(ひとむね)の建物、それと煙に包まれ水の溢れ続ける貯水地が残されていた。



 移動中の車内でリサと志恩はテレパスにより、頭の中で会話していた。

「全く、本物の銃弾浴びて爆弾で崩壊する建物の上を走って、仕舞いには水の入ってない貯水地にダイブするなんて、メチャクチャだよ」

「あら、でもこうして無事に無傷でいるわよ」

「それは俺が‥」

「分かってるわよ。シオンが居てくれるって思ってるから、安心して出来るのよ。それに最後もちゃんと気を利かせてくれたしね」

「全くだよ。周りにバレないように煙幕で貯水地を隠して、地面スレスレでキミを魔法でキャッチして、貯水タンクを破壊して貯水地に水を貯めるなんて、聞いてないことやらせて苦労したよ」

「まあまあ、助かってるわよ、愛しのシオン」

「・・・・」




 本日最後の仕事は、閉園した夜の遊園地で歌撮りの撮影である。

 静まり返った遊園地は昼の喧騒を微塵も感じさせず、怖ささえ感じる。そんな中、光と音楽で違う空間を作り出し、リサは歌を唄い始めた。

 リサの周りではメリーゴーランドが回りジェットコースターが走りだし、遊園地の雰囲気を(かも)し出す。

 そして歌が終了を告げた時、次のステージが始まるのだった。撮影の照明が銃弾で割られ、遊園地の照明も消え、メリーゴーランドの光だけが仄かに辺りを照らし出した。

 異変を察知し、志恩はリサの元へと駆け出そうとした時、魔法の発動を感知し、防御壁を築きつつ横へと転がり避ける。それと同時に志恩の居た場所に大きな火柱が立ち、間一髪避けた志恩が辺りを警戒しつつ立ち上がった時には、リサの姿は見えなくなっていた。



 辺りが暗くなり志恩の側へと向かおうとしたリサの足元を数発の銃弾が地面を焦がす。リサは志恩とは逆方向の柱の陰に急ぎ身を隠すが、今度はリサの周りで爆発が起き、吹き飛ばされてしまう。

 リサはダメージを浴びた肩を抑えながら走り逃げ、入り口の開いたアトラクションの建物へと逃げ込んだ。



 リサを見失った志恩は葛城に連絡を取ってから、急ぎ犯人が居たと思われる場所を探索したが、犯人の姿も足取りさえ掴めず、リサへと交信することにした。



 リサは建物へと逃げ込んだのだが、狭い通路がいくつもある場所で暗くてよく見えず、手探りで奥へと進んでいた。志恩からの声が頭に届いたのだが、リサ自体もどこに居るのか分からず、ただ建物の中としか答えられなかった。

 リサは息を殺し辺りの気配を静かに探っていたが次の瞬間、殺気のような気配を感じ地面へと伏せた。リサの頭上を無数の銃弾が走り抜け、それと同時に硝子の砕ける音が辺り一面を覆い尽くした。

 銃声が止み、リサは体を起こして辺りを警戒する。リサが体を起こすと体に乗っていた硝子の破片がリサの体を傷付けた。

 暫しの沈黙の後、建物に明かりが点きリサの視界を照らし出す。辺り一面、鏡の割れた残骸が広がり、銃弾が届かなかった位置には幾つもの鏡の壁が回りを覆っていた。そう、ここはミラーハウスだったのだ。

 リサは痛みを堪えながら立ち上がり、銃弾の飛んで来た方向に目を凝らすと、鏡の陰から1人の女が姿を現した。

「無様な姿ねアリサ、いえ今はリサと言った方がいいかしら」

 リサは自分の事を知る女の顔を凝視し、正体を思い出そうとする。

 女は手負いで何の装備もないリサに銃を突き付け、怒りの籠った言葉を放つ。

「ふっ、覚えてないとは言わせないわ。ガルデンブルグ城での屈辱、ここで晴らさせてもらう」

 リサはその言葉で、過去の記憶が脳裏に蘇った。




 ーー雪の吹雪く山道を越え、山間を抜けた先に広がる城下町ユルデリア、その中央にそびえ立つ美しく強固なガルデンブルグ城。この国は冬は雪に包まれて他国との貿易が途絶えがちだが、春になると美しい緑に囲まれ、街の側に広がる湖では魚も豊富に捕れる自然豊かな国である。

 そんな自然溢れる街へ、アリサは1人訪れて居た。このときアリサは異世界へ飛ばされてから12年の歳月が経っており、既にシオン達と勇者のパーティーを組んでいた。

 アリサが1人この街を訪れたのは、街近くの湖に浮かぶ小さな島に住むと言う、伝説のシャーマンに教えを乞う為であった。





続きは明日、明後日には上げます。

次回、アリサの活躍とピンチ。

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