文化祭と再会 後編
もっと短くなる予定だったんですが。
新キャラどうでしょう?一番最初に登場したキャラだったんですよ。
今週の校内は文化祭の準備で大盛り上がりで、出し物の道具などが、あちらこちらに散乱し、生徒達も忙しそうに作業している。
そんな中、志恩は元気なく校内を徘徊していた。
先日の事件から色々な人に「一条リサ」の事を聞いたが、皆一様に「何を今さら」「知らない奴?いる訳ないじゃん」など、知ってて当然の意見ばかりを言われ、自分の常識の無さを恨んでいた。
ドンッ
俯いて歩いていたせいで、志恩は人と肩がぶつかってしまう。
「すいません」
すぐに志恩は謝り、顔を上げる。
「あぁこらっ」
相手は凄みを利かせ、睨んできた。
しかしぶつかった相手は、志恩の顔を見ると少したじろぎ、舌打ちをして去っていった。
ぶつかった相手は、志恩が15年ぶりに学校へ登校した初日に食堂前で揉めた、2年の悪ガキである。
志恩は知らぬ間に、2年生の教室まで来てしまっている事に気付いた。
深いため息を吐き自分の教室へと引き返すのだが、この時志恩は、先程の2年生も志恩と揉めて少しでも恨みに思っているかもしれない。向こうが悪かったとしても、暴力ではなく何か他の解決方法があったのではないかと、反省してしまう。自分は力を持った大人なのだからと…
この時期、学生の殆どが放課後から忙しくなる。
志恩も例外ではなく、特に自分のクラスと部活のヘルプの用意があるので、倍以上の忙しさに追われていた。
教室で志恩がメニュー作りをしていると、衣装合わせを終えて、数名の女子が教室に戻ってきた。
「しおーん、どぉお私の衣装。似合ってるかしら」
麗香がメイド服に身を包み、志恩の前へと現れ、クルッと一回するとスカートの両側を少し持ち上げ、西洋の舞踏会での女性がするような挨拶をする。
「似合ってるね、とても可愛いよ。ただ‥スカート短くないかな?」
志恩が少し、目のやり場に困った顔で応えると、麗香は志恩がメニュー作りをしている机に腰掛け、スカートの裾を少し摘まんで持ち上げる。
「あら、志恩にならいくらでも見せてさしあげますわよ」
「・・・」
志恩が頭を抱えていると。
「ちょっと~志恩見てよ、このスカート短過ぎない」
メイド服に身を包んだ、愛莉と柚木も志恩の元に現れた。
愛莉と柚木のスカートは麗香のスカートよりも短く、柚木などよく履いてここまで来れたなと、驚く程短かった。
「確かにって言うか、短過ぎだろそれ。誰が作ったんだ?」
柚木が小さな声で答えた。
「えっとね、田中くんと佐々木さんが皆の分を1つ1つ作ってくれたんだよ」
「その二人か…」
志恩は少し納得してしまった。
田中純平、佐々木翔子は二人供、漫画研究会、所謂漫研である。この手のコスプレにはこだわりがあるのだろう。
「流石にその短さは、学校側が許してしれないと思うから、早目に直してもらった方がいいね」
志恩の真面目な回答に、愛莉は「でしょ」と頷くと、机に腰掛けていた麗香はいつの間にか降りて立っていて、愛莉に対して鼻で笑う。
「あら、私は構わないわよ。志恩が喜んでくれるなら。志恩ももっと見たいでしょ」
愛莉は少しムッとなり、ムキになって喋る。
「志恩は家で私のパンツなんて見飽きてるし、他の人に見せたくないんだもんねー」
「くぅ~!志恩が見たいと言うなら、いつでも見せて差し上げますわよ」
「私のを見てるから、麗香さんのまで見なくてもいいみたいたよ」
「愛莉ちゃんの子供パンツより、私の大人なパンティーを見たがってるのよ」
ーーおいおい、なんか論点がずれて来てるぞ‥
志恩の袖がちょいちょいと引っ張られ、柚木を見ると、柚木は志恩の耳元で。
「私のも見たい?」
「・・・・」
志恩は突然立ち上がり、3人に向かい。
「早く丈を直して貰ってこいっ!俺は劇の練習に行ってくる」
そう言って、逃げるように教室を後にした。
体育館に着いた志恩は、剣道部の先輩、静香や猛と一緒に慣れない劇の練習を始めた。みんな、演劇などしたことがない人間だったが、一生懸命やると其なりのものになっていき、志恩も少し楽しみになってきていた。
剣道部の劇は1度だけの公演となり、文化祭最終日トリを飾る事となっていた。
練習の最中、体育館の入口に2年生のこの前揉めた生徒が居るのに気が付いたが、すぐに姿が見えなくなった。志恩は考えすぎと思うが、何か引っ掛かりを覚える。
文化祭当日、1日目は志恩達もクラスの出し物に協力し、メイド喫茶をこなす。葛城や隆二にも声を掛け来てもらい、知り合いに恥ずかしがりながら、愛莉はメイド姿で対応していた。
2日目の最終日、志恩、愛莉、静香、猛、麗香の5人は、早い時間だけクラスの出し物を手伝い、その後は劇の準備へと入っていた。
最初は剣道部の何人か(志恩を含め)は、劇に対して嫌々だったが、練習を重ねる毎に皆が努力を始め、段々楽しくなり、剣道とは違う絆が生まれてくるのに気付き始めた。
志恩は劇をやることを身近な人には誰にも言ってなかった。なぜって、それは恥ずかしいからである。
段々と順番が近付いて行くのが分かり、手にかいた汗を握る。志恩は思う、ダンジョン最後のボス部屋に飛び込む前と同じかそれ以上の緊張感であると…
愛莉や猛、皆の緊張もピークになり、最後に円陣を組んで気合いをいれる。
そして、幕が上がった。
始まってしまうと、体や台詞は練習のたまものなのか、勝手に動き勝手に声が出てくる。暫く劇が進むと、志恩にも少し余裕が出てきて、観客席を見る余裕が出たのだが、志恩は台詞の途中で咳き込んでしまった。何故ならば、観客席に葛城や隆二、アルバイトでお世話になった目黒や里奈、鳳清子や長谷部、美沙や友梨、そして親父まで居たのだ。何とか繋ぎまで持ちこたえたが、顔から火が出まくっていた。
後で聞いたのだが、静香や愛莉、シェリーや猛の嫌がらせ‥ではなく、優しさで招待したそうだ…
このあとの演技を、志恩は戦士のスキル『戦気』を使い、心の乱れとダメージを乗り越えたそうだ。
マスクにサングラス、深く被った帽子。
よし、これなら怪しくないっ!
廊下を歩く女性の姿が1人、校内を彷徨いていた。
「ここでもないなぁ。おっかしいな~どこだろう?そうだ、すいません」
「はい?」
「メイド喫茶やっている教室ってどこですか?」
「それなら、そこの階段を1つ上がった横の教室ですよ」
「ありがとうございます。よしっ」
女性が立ち去ったあと。
「ねえねえ、今のって凄く似てない?声とかあの怪しい格好、そうとしか思えないんだけど」
「まさか、うちの学校なんて、何にもないんだよ」
「えぇぇ~でも、そうとしか思えないんだけどなぁ」
「あったあった、ここね」
「「「おかえりなさいませお嬢様」」」
女性は案内をされテーブルに着き注文をしてから、辺りをずっとキョロキョロしている。
その姿にクラスの人間は不審さを感じ怪しんだが、オーダーを取ったメイド女子が首を傾げる。
「どうしたの?あの怪しい客に何か言われた?」
「そのお客なんだけど、声聞いて、あの怪しい格好でしょ。どう見ても『リサ』としか思えないんだけど」
「えっ!マジで?」
「うん、私、ドリンク持っていく時、聞いちゃおうかな」
そう言ってメイドがドリンクを女性に運び、話し掛けようとしたとき、女性の方から話し掛けてきた。
「あの…このクラスにシオンって居ませんか?」
突然の質問に、メイドは自分の聞きたいことを一瞬忘れ、考える。
「あぁぁ、シオンって甲斐くんの事ね。彼なら今ごろは剣道部の出し物で体育館に居るわよ」
「出し物ってなんですか?」
「えっと、確かロミジュリだったはず、今頃は真っ最中じゃないかしら」
「えっ!」
ガタッ
亜理沙はサングラスを外し立ち上がった。
それを見た生徒が。
「やっぱり、リサさんですよね」と騒ぎ始めたがリサは気にも止めず窓の外を確認し、千円札をテーブルに置くと、教室から走って出ていくのだった。
志恩達の劇は3部構成と成っており、既に2部までが滞りなく終わっていた。途中、志恩の精神的トラブルはあったが、あと少しでクライマックスとなる。
休憩と衣装替えを兼ねて、10分の休憩で志恩はこの間にも、台詞の見直しをしている。
愛莉は劇の前にメイドさんにもどうぞと、お客にジュースを飲まされ過ぎたのが限界を迎え、衣装替えの前にトイレへと走って行くのだが、愛莉が戻る事はなかった…
亜理沙は教室の窓から確認した、体育館の方角へと学校の廊下を小走りに急ぐ、そして人気の少ない道を選んで向かっていると、4人の如何にも素行の悪そうな男子生徒に女の子がぐったりと運ばれている姿が目に入った。
そして亜理沙はその女の子に見覚えがあった。それは志恩が異世界で何度か見せてくれた写真に写る妹の姿である。
すぐ様、亜理沙は男子生徒を追いかけて呼び止めた。
「ちょっと待ちなさいあなた達、その子に悪さしようとしてるでしょ?許さないわよ」
「はぁ?なんだお前、お前も痛い目に合いたいのか」
そう言うと、愛莉を抱えた男子以外の3人が亜理沙を取り囲む。
「おい、この女、チクりを入れないように2、3発入れて泣きみせとけ」
男子がジリジリと亜理沙との間合いを詰めていくと、亜理沙はスタスタと男子に近付いた。
男子は一瞬驚いてたちろぐが、すぐに亜理沙へと殴り掛かった。しかし亜理沙は、相手のパンチをかわすと同時に顔面へ肘を入れ、続けざま足払いでもう一人を転ばし、首元を踏みつけた。
二人が顔と首を抑えてもがいているのを見て、残った男子は走って逃げてしまい、それを見た愛莉をかついていた男子も愛莉をその場に捨て、走って逃げてしまった。
「根性のない男の子ね」
と、亜理沙は軽口をついた後、愛莉の元へと駆け寄った。
愛莉はお腹を強く叩かれ気を失っているようで、ちょうど保健室の窓が近くにあり、扉を叩いて中へ入れてもらい愛莉をベッドへ寝かせた。
志恩は苛立ちと焦りを隠せないでいる。時間になっても愛莉は戻らず、既に開演の時間になっていた。
他の共演者達も焦りを隠せないでいたが、このままなら、舞台は中止になってしまう。
「ねぇ志恩、どうする?」
「どうすると言われても、愛莉の代役を出来る人間もいないだろ」
幕の外では、ざわめきが増していくのが感じ取れた。たまに「まだかー」「どうしたー」などの叫びも聞こえた。
志恩は部長に「このままでは無理ですね、早目に終わりを告げましょう」と、言葉を掛けた。
そして『テレパス』でシェリーにことの次第を伝え、愛莉のことを頼んだそのとき、志恩の頭に突如割り込む声が響いた。
ーーシオン、そのまま舞台を続けて、大丈夫だからーー
志恩は何が何だか分からなくなったが、「急いで、舞台を台無しにしたくないでしょ」と頭の中で叫ばれ、決心した。
志恩は部長を止め、第3部の幕開けをさせる。
責任は取るのでお願いします、と言う志恩の力強い言葉に剣道部一同は「よしっ」と声を掛け合い、幕が開いた。
志恩の出番から始まり、周りの出演者の演技入り、次が愛莉のジュリエットの出番になる。
その数分前、体育館の裏口から突如舞台袖に入ってきた帽子にマスクの女性。静香が止めに入り。
「すいません、ここは舞台袖で、入口は違いますよ」
と女性を追い出そうとするが、その女性は。
「大丈夫、ジュリエットの代わりだから。衣装はどこ?今の話は大まかにどこから?」
と叫ぶが静香や周りにいる部員は躊躇する。だが、その後に続いてシェリーがその場に現れ「大丈夫、彼女の言う通りにして」と言うので、言われるがまま教えた。
亜理沙は衣装を見つけ、帽子とマスクを外し、そのまま服もその場で脱ぎ捨て、衣装へと着替える。
突然目の前で下着姿を見せられた剣道部員は彼女の顔に気が回らなかった。
志恩が舞台のでジュリエットの出番を待つ。
だが、少し間が空きすぎと感じた観客が少しざわめき出し、志恩の顔にも焦りが出だしたとき、舞台袖から美しい歌声で、その人物は現れた。
その歌声に観客達が騒ぎ始めるが、その雑音を打ち消すかごとき歌声に何時しか観客席は静けさを取り戻していた。
志恩は自分の台詞を時には歌い、時には語る。亜理沙は志恩の歌に併せ歌い、台詞に併せ語る。僅かに言い回しや言葉が違ったが、話の内容は変わらず、舞台はクライマックスまで到達した。
ロミオが哀しみの歌を唄い毒を飲み死亡する。
それを一歩遅れて意識を取り戻したジュリエットが、哀しみと愛の歌を唄い、短剣で胸を刺し、ロミオに口づけをするところで照明が落ち、終幕になる予定なのだが…
照明が落ち真っ暗になった時、志恩の唇が温かく柔らかい感触を味わう。それはホンの数秒だったが‥そして、耳元に小声で。
「このまま、校舎の屋上に飛んで」
志恩は亜理沙を抱き締め、魔法を唱えた。
誰も居ない屋上…いや、3人が屋上に居た。
「ありがとうシェリー、洋服持ってきてくれて」
「あんたも突然無茶するね、これバレたら不味いんじゃないの?」
「証拠もないし、誰も信じないわよ」
二人の会話を呆然と聞いていた志恩に亜理沙が振り向いた。
「どうだった、私のジュリエット」
「どうもこうも、よく出来たね?」
「そりゃあ、プロですから」
亜理沙は志恩にブイサインをしてお茶らけ、すぐに真剣な顔付きになる。
「ごめんシオン、私はまだ、こっちの世界でしなくてはいけない事があって、あなた達と行動を共にする事が出来ないの」
志恩は亜理沙の前で両手を合わせ。
「ごめんアリサ、俺テレビとか観ないから、アリサが芸能人だって知らなかったし、こっちの世界に戻っても見つけられなかった」
亜理沙は少し笑って。
「ほんとよ、向こうの世界でも知らないことに驚いたけど、まさか、こっちに戻ってもまだ知らないなんてね」
志恩と亜理沙は少しだけ語らいで、暫しの別れを惜しんだ。
「まだ、お互い若いんだし、同じ世界に居るんだから、何かあれば会えるわよ。私の気持ちは、ずっとあなたの側にありますから」
「あぁ、俺もまだこの世界で必要とされてるみたいで忙しいしね。俺もずっと気持ちは変わらないよ」
着替えを済ませた亜理沙をシェリーが学校から遠く離れたテレビ局へと連れて行き、リサの目撃情報を作った。それにより、志恩の高校に現れたリサの信憑性がなくなっていった。
志恩は衣装を持って体育館へと戻って行った。
志恩はその後、保健室へと向かい愛莉が目覚めるまで側に居た。
剣道部員は色々な人に今日の出来事を聞かれたが、記憶にないと口を揃え、口をつぐんだ。
こうして長い文化祭は終わりを告げた。
次回はどっちを書こうかまだ悩んでます。
次回、リサ危険。
次回、次なる攻撃。




