表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑谷中学吹奏楽部  作者: taki
1
39/272

夏休み

夏休みが始まった。連日猛暑日が続き、セミがやかましく鳴き続けた。あちこちでヒマワリや朝顔が咲き、緑谷町をを彩っていた。

吹部達は午前中から集まり、勉強に励んだ。テストでは毎回5教科ともほぼ満点をマークする錬三郎が、落ちこぼれの健治や怜、まりあの面倒を見た。落ちこぼれほどではないが、大幅に成績が下がってしまった直樹と銀之丞、伊久馬のことは響が担当した。ほかのメンバーは深刻なレベルではないため、公彦が中心になって一緒に勉強することになった。二年生と一年生が混じって勉強することは、互いにメリットがあった。復習になるし、予習にもなる。何よりみんなで一緒に頑張っているという一体感があり、和気あいあいと過ごすことができた。

「こんにちは」

そう言ってドアを開けたのは、健治の母とまりあの母だ。ちょうど健治が黒板に向かい、数学の公式を説いているところを見て、健治の母は喜んだ。

「みんな、アイスが職員室の冷凍庫に入れてありますからね。あとで食べてね」

まりあの母が言うと、歓声が上がった。

 

翌日は部活が休みの日だった。琳太郎も雛形も学校に来ないので、吹部達は錬三郎の家を訪れた。蔵に初めて入った者はこの特設スタジオに感激した。先に何回も来ていた直樹はちょっと先輩づらして、照明の位置や譜面台の場所を案内する。みんなで先に勉強をした後、楽器を吹き始めようとしたところ、恵里菜と史門の母が差し入れに訪れた。今日はフライドポテトとハンバーガーだった。さらに、錬三郎の祖母手作りのプリンも出された。


その翌日も、そのまた翌日も、吹部達は学校に行ったり錬三郎の家に行ったりしながら過ごした。それぞれ予定もあるので全員が揃うことはなかったが、いつも大体まとまって行動していた。保護者達もパラパラと差し入れに訪れてくれ、お互いに少しずつ親しくなっていった。


「俺、すごく賢くなった気がする」

ある日、健治が唐突に言い出したので、梅子がミルクティーを吹いた。

「なんだね。いよいよ暑さで脳みそが蒸発したのかね」

公彦は容赦なく言い捨てた。

「だから俺、すごく賢くなった気がするんだよ」

響のせいでこの頃、だいぶハートが強くなった健治は繰り返し言った。

「オー! ハロー、ケンジ。ハウアーユー?」

銀之丞が下手くそな英語で話しかけてきた。

「アイムファイン、サンキュー、アンデュー?」

健治も負けずに英語で返す。

「アイムジャスト、ソーソー、オーケーイ、ユーアー、ジーニアス、ベリーベリージーニアス、オーマイガー」

銀之丞がまた返した。

「とても中二の英語レベルに思えない」

響がボソッと呟いた。

「いいんじゃない。堂々と話せれば」

梅子は言いながら、吹き出したミルクティーをティッシュで拭き取った。

「練習はきついけど、みんなでいると楽しくていいっすよね」

大輝がそう言って新しいティッシュを差し出した。

「ありがとう。なんかコンクール前の雰囲気じゃないよね、これ」

まだ下手くそな発音で英会話する男子達を眺めつつ、梅子は力なく笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ