呼び出し
夏休みが近づく頃、琳太郎と雛形は副校長に呼び出された。
「失礼します」
校長室に入ると、校長と副校長が待ち構えていた。二人とも鬼気迫る顔をしている。
「あれほど言ったのに。吹奏楽部の保護者達が、保護者会を開けと言ってきましたよ」
副校長が切り出した。
「え?」
琳太郎は狐につままれたような気持ちで、副校長の顔を見た。
「部活動の時間が長過ぎるんです。忘れましたか? 中学生が一番やらなくてはならないこと。それは勉強です」
「はい」
琳太郎は借りてきた猫のようにおとなしく返事した。
「各クラスの担任に確認しましたが、吹奏楽部の生徒のほとんどが成績悪くなっています。授業中、寝ている子も増えているとか。部活でしごかれ過ぎて、そうなってしまうんでしょう」
「しごいてなんか…」
琳太郎が反論しようとしたが、雛形が腕を掴んで制した。
「学校側は関与したくありませんが、鳥飼先生だけでは埒が明かないと、クレームも来ています。だから副校長先生にも致し方なく。いいですか、致し方なく、同席していただくことにしました」
校長が厳格な顔つきで言った。
「はい、すいません」
「すいませんじゃありませんよ、まったく! いいですか! 必ず出席するように」
風船のような体型の副校長がキレて、弾け飛んだ。
「はい」
琳太郎と雛形は逃げるように退室した。そのまま職員室に行き、二人で話し合うことにした。
「そんなに遅い時間まで部活やってるつもりはないんですけどね」
琳太郎がこぼした。
「そうですね。夜八時とか九時までやってるならともかく」
雛形は頷きながらお茶を淹れてあげた。
「ありがとうございます、いただきます。これから追い込みかけたいけど、もっと短縮するしかないんすかね」
「ですね。さすがに保護者会となると、私達に言い分なんてないんですよ」
雛形も意気消沈していた。
「あいつらの気持ちを考えると、辛いっすね」
琳太郎は悲しげに言いながら、湯呑みからお茶を一口すすった。
「謝罪会見みたいなもんですよね…」
雛形もお茶をすすりながら、どうやって乗り切るか、必死で頭を回転させていた。




