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ゲームのような世界で、私がプレイヤーとして生きてくとこ見てて!  作者: カノエカノト


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第九七三話 あと三人

 真っ黒な空間から、ワープポータルを起動し転移を発動した私とゼノワ。

 パッと視界が切り替わった、次の瞬間だった。身体に衝撃を感じ、すわ攻撃でも飛んできたかと警戒する。

 幸い身につけているのは最強装備。それも月日を納刀した黒状態。生半な攻撃ではびくともしない、カチカチミコトさんである。

 自らの耐久性に自信があればこそ、過度に慌てることもなく。反射的にその場から飛び退こうとして、そこで気づいた。

 覚えのある感覚、感触。


 一拍遅れて、ようやっと私は理解する。自分が置かれている状況を。

 端的に言うなら、抱きつかれているのだ。誰にって? 決まってる。

 オルカにだ。


 緊張した身体から、力が抜けるのを自覚する。と同時、辺りの様子を見回すだけの余裕も生まれ。

 まずここが何処なのかと窺ってみたなら、既視感を覚えて、少しだけ拍子抜けする。

 待機室。試練と試練の合間に通された、どこぞの待合室を思わせる場所だったのだ。

 けれどよくよく見てみたなら、幾分かの差異を感じる。

 例えば部屋の広さ。私の知るものよりも、随分と拡張されているように見えた。それに、何処へ通じているのか扉や出入り口のようなものも幾つかあり。


 そんな、なんだか豪華になった待機室には、既に到着している顔ぶれが並んでいるわけで。

 まず、私に抱きついて全く離れようとしないオルカをはじめ、ココロちゃんにクラウ、ソフィアさんと、鏡花水月メンバーは揃っている様子。

 当然のようにイクシスさんとサラステラさんも居り、他にはレッカ、リリ、クオさん。

 逆に見当たらないのは、スイレンさんと聖女さん、それにアグネムちゃんか。

 こうして見ると、私の到着ってかなり遅かったってことでは……? ちょっとショックである。


「うぅ……ミコト……ミコトぉ……」


 涙声のオルカ。肩も微かに震えており、感極まっているようだ。なんだか槍の骸戦から帰還した時のことを思い出してしまう。

 いや、実際オルカも、あの時の弱気をぶり返しているのかも知れない。それで余計に不安な思いをさせてしまったのかも。

 にしても、転移してきてから即座に飛びついてくる辺り、尋常ならざる反応速度といえよう。流石である。

 他の皆はと言えば、一瞬驚いた表情を見せたものの、直ぐに安堵したような、或いは生暖かい目でこちらを見てくる。

 しかしまぁ、なんだ。何にせよ。


「オルカ、良かった。無事だったね……他のみんなも。心配かけちゃったみたいでごめんね」


 オルカの背をぽんぽんしつつ、そのように声を掛けてきたなら、パタパタと駆け寄ってきたのはココロちゃんだ。

「ミコト様! ご無事で何よりです!!」

 涙目でそのように声を掛けてくる彼女。しかしながら、こんな時いつも一緒にいる聖女さんやアグネムちゃんが見当たらないせいか、そこはかとない違和感がある。崇拝組はいつの間にかトリオのような認識になっていたようだ。

 そんなココロちゃんにも、返事をしようとした……のだけど。


「スキルっ!! スキルは無事ですかミコトさん!!」


 ココロちゃんを押し退け、突っ込んできたのはソフィアさんだ。うん……相変わらずでちょっと安心する。

 しかしまぁ、何時になく鬼気迫る様子でガッと肩を掴んでくる彼女。そのままガクンガクン揺さぶられる私。

 曰く、この迷宮ではスキルを封じられたり、没収されたりと、散々な目に遭ったため気が気ではなかったと。

 私のスキルがちゃんと戻っているか、正常に機能するか、何なら新しいスキルを覚えたんじゃないか、っていうか第二の試練で強力なものを得たはずだ、と。

 そんなことをまくし立てられ、返事する余裕もありやしない。

 っていうか、ガックンガックン揺らされているのに、オルカも全然剥がれないし。何だこの状況。


「どうなんですかミコトさん! どうして何も言ってくれないんです! まさかスキルを奪われたままだなんてことはありませんよね!?」

「は、話す……放し……話せな……話せ……放せぇ……」

「グラァ」

「ミコトぉ……ミコトぉ……」

「ソフィアさん、いい加減にするのです! ミコト様に対して何という狼藉っ!」

「やれやれ、何をやっているんだお前たちは……」


 どうやら転移前の懸念は心配のし過ぎだったらしく、ゼノワも傍らに居るらしい。視界が定まらなくてよく見えないけども。

 見かねて止めに入ってくれるココロちゃんと、呆れたように声を掛けてくるのはクラウ。

 鏡花水月勢揃いって感じで、すごく安心する。あと、そろそろ頭がくらくらしてきた。

 スキルが戻った証明にと、換装で通常装備に戻ったり、幾つかスキルを披露してやると、やっとこさソフィアさんが幾らか落ち着きを取り戻す。

 そこから更に彼女の質問攻めに対応していると、タイミングを見計らってイクシスさんが声を掛けてきた。


「そろそろいいだろうか? ミコトちゃんたちとも情報の交換を行いたいのだが」

「いいえ待って下さい。まだ新スキルのお話が」

「こらソフィアさん! 空気を読むのです!」


 ココロちゃんに羽交い締めにされ、ズルズルと無理やり引きずられていくソフィアさん。これでやっとこさ落ち着いて話が出来そうだ。

 苦笑してソフィアさんを見送るイクシスさんへ、私は早速問い掛けてみた。


「それで、状況はどんな感じ? 姿が見えないメンバーも居るみたいだけど」

「ああ、見ての通り残りは、スイレンちゃん、アグネムちゃん、クリスちゃんの三人だな。彼女らの合流を待っているのが現状だ」


 スイレンさんとアグネムちゃんって言ったら、技の試練でPTを組んでいたメンバーだ。

 それを鑑みると、恐らく他のメンバーに比べて私たちのPTは、技の試練突破に一番時間が掛かったってことなんじゃなかろうか。

 何せ第二の課題で結構手間取ったからね。その間に他の面々は、体の試練も突破してゴールしてしまったと。

 また、体の試練についてはスニーキングで戦闘を極力避け、スムーズにクリアを果たした私が、アグネムちゃんたちに先んじてここへ辿り着いたってことなのだろう。


 ってなると、心配なのは聖女さんだ。体の試練攻略にかなり時間が掛かっているらしい。

 チームミコバト内でも、スイレンさんとタメを張るほどに生粋の後衛だからね。

 ステータスもスキルも奪われる体の試練じゃ、間違いなく苦戦を強いられるだろう。

 しかしながら、皆で試練の内容を報告し合った結果、どうやらソフィアさんは他の皆に比べて、明らかに試練の難易度が低く設定されていたと判明したようで。

 更によくよく情報を照らし合わせてみたなら、一人ひとり攻略難易度は適切なレベルが設定されている可能性が浮上したとのこと。

 どうやら迷宮は、っていうかウェブデさんは、絶対にクリアできないような理不尽を課したりはしないらしい。


 そうすると、求められるのは“実力”か。ステータスやスキルが無くとも、相応の立ち回りをこなせれば体の試練は突破できる。

 そして彼女たちは、ミコバトで嫌というほど大量の戦闘経験を積んでいる上、冒険者としても優れている。ダンジョン攻略の経験も豊富だ。

 ならばきっと問題ない。たとえ時間が掛かっても、彼女たちならば見事体の試練をクリアし、無事に合流できるだろう。

 私たちに出来るのは、三人を信じて待つことのみである。


「ところで、ミコトちゃんはゼノワ様と何してたぱわ? なにか面白いものでも見つけたんぱわ?」


 そのように問うてきたのはサラステラさん。とても良い質問だ。情報交換というのであれば、私たちからも皆に報告するべきことはたんまりあるからね。

 本当なら全員が揃ってから、というのが理想的ではあったのだけれど、アグネムちゃんたちが合流するまではどのみち時間もあるのだし、今のうちに聞いてもらうのも良いだろう。


「そのことなんだけどね、実は……ウェブデさんに会ってきたんだ」


 そのように切り出してみたなら、掴みとしては十分だったらしく。

 初めこそ「ウェブデ、誰それ?」みたいな声がチラホラと上がったものの、未だにくっついたまま離れようとしないオルカが、ボソリと言うのだ。

「もしかしてそれって、拳の骸の時にヒントで出た……」

 これを切っ掛けとし、段々と皆の中にも思い当たるフシが見つかったようで。面白いほどの表情の変化。

 そして当然のように、「ウェブデって名前だったの!?」なんて驚きが口々に叫ばれたのである。


 そこからは、先程見聞きした事柄を、経緯に沿って説明する私。ガウガウと補足してくれるゼノワ。

 皆の反応たるや正に、開いた口が塞がらないというやつで。しかしそれも無理はないだろう。

 だって、皆にとっては余程身近にあるダンジョンなる存在。その亜種のようなものであるところの、この迷宮。

 そんな迷宮の“管理者”を名乗る存在と邂逅を果たしただなんて、前代未聞どころの騒ぎではあるまい。

 あまつさえ、そんな管理者たるウェブデさんに、装備枠を一つ拡張してもらったという事実。

 エンドコンテンツに関する追加情報も大きいだろう。

 そして極めつけが、隠しダンジョンのヒントである。


 信じ難い。信じられない。きっと普通の人にこんな話をしたところで、一笑に付して終わりだろう。

 けれど、この場に居るメンバーは違う。驚きに言葉を失いこそすれ、誰も彼もが神妙な顔つきで私たちの報告を聞いてくれた。

 その上で、報告から漏れていた細々とした情報を埋めるよう、次々に質問を投げてくる面々。

 それらに一つ一つ答えていく過程で、私自身情報の整理が出来る気がして、皆と意見を交えることの意義を改めて感じたのだった。


 そうして皆と話し合っていると、まぁ出るわ出るわ。あれを訊いておけばよかった、これを訊きそびれた、という悔いの数々。

 そりゃ「その質問にはお答えできません」ってバッサリ切られるような問いもたくさんあるだろうけどさ、訊かずに帰ってきてしまったことが今になって悔やまれる。

 やはり宣言通り、次は皆を引き連れて会いに行く他あるまい。


 そんな風に、チームミコバトの存在を頼もしく感じていると。

 不意に感じた、新たな気配。皆の視線がバッと、私の傍らへ集中する。

 思えば、この部屋に転移してきてから殆どその場で話をしていたため、私の居る場所がワープポータルからの転移先に当たるわけで。

 そんな私の近くに新たな気配が発生したとなれば、それは必然的に試練クリア者ってことになるわけだ。


「わっ!? え、なに、どういう状況……?」


 その様に、可愛らしく慌ててみせたのは、誰あろうアグネムちゃんだった。

 思ったとおり、彼女も無事に試練を乗り越える事が出来たらしい。

 皆が一様に安堵する中、同時に懐くのは心配であり。


 残りはスイレンさんと、やたら時間のかかっている聖女さん。

 二人とも、ちゃんと無事にクリアできるよね……?

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