41.『親友』が居てくれる『恋』
「はぁ……」
玄関のドアが閉まった途端、全身の力が抜けてゆく。
へなへなとその場に崩れ落ちた。
言っちゃったよ……!!
『好き』って言っちゃった!!
見慣れた空間に戻り、改めて思い返すと、急に緊張が解けて涙がボロボロと溢れ出した。
今日一日……本当に色んな事があった。
高倉くんがずっと握ってくれていた手を、じっと見つめてみた。
どこの場所から思い出しても……信じられないくらい幸せな時間だった。
ついさっき抱きしめられた感覚がまだリアルに残っている。
『ちゃんと返事させて欲しいんだ。……待っててくれるかな?』
それって……どういう意味??
あんなに優しく抱きしめられたら……私期待しちゃうよ。
初めて高倉くんの胸に顔を埋めた時、『あぁ、やっと受け入れてもらえた』そんな錯覚を起こしてしまった。
まだちゃんと返事を聞いていないのに。
そんな風にドキドキと胸が高鳴ると同時に、羅々ちゃんがネックレスを手にして嬉しそうにしている顔が思い浮かぶ。
『どうして羅々ちゃんにプレゼントなんてしたの?』
ずっと聞きたかったけど、結局怖くて聞けなかった。
もしかしたら手を繋ぐのも、抱きしめるのも……私じゃなくてもいいのかもしれない。
そう思ったらまた急に不安が襲う。
どの女の子とデートしてもあんな風にする人だなんて思いたくないけど……
あんなに素敵に変身してしまった高倉くんにとっては、私もたくさんの女の子の中の一人なのかもしれない。
どうしよう……
私、またフラれちゃうのかな?
でも、それを覚悟で気持ちを伝えたんだから。
正々堂々、高倉くんを好きでいよう。
24日まで後3日。
この残された3日間、全力で高倉くんを好きでいたい。
たとえライバルがどれだけ沢山居ようとも……
◇◆
「おはよう、桃ちゃん」
一晩明けて私は桃ちゃんと会う約束をした。
一番仲が良かったのに、羅々ちゃんの事もあったし、ずっと高倉くんとの事は隠してたんだけど……
本当はたとえ粉々になって消えてしまう恋だったとしても、一緒に悩みを聞いてくれる友達が欲しかった。
本気で好きな人が居たんだって胸を張って誰かに言えるようになりたかったし、そんな恋する自分が居たってことを、時が経って笑って話せる人が居てくれたら、きっと結果悲しい恋で終わってしまってもいい思い出にできる気がした。
「気付いてたよ」
自分の気持ちを打ちあけた後、桃ちゃんが私を包み込むように微笑んだ。
「……どうして……?」
絶対に気づかれてないと思ってたのに!
「あのさぁ! 一香ちゃんが思ってるよりもずっと私は一香ちゃんのこと親友だって思ってるよ? そりゃ最初は全く気づかなかったけど……。『ほとんど中学の時は関わりなかった』なんて言ってたけど、二人の様子を見てたらそんなの嘘だってすぐに分かった」
タピオカをストローで突きながら桃ちゃんはゆっくりと話してくれた。
「黙ってたんだけど、私、城田くんに一香ちゃんとの事、協力して貰えないかって頼まれて……。でもさ、私ずっと二人を見てて思ったの。やっぱり一香ちゃんは高倉くんの事が好きなんだろなーって。だから、結局城田くんの力にはなれなくて申し訳ないって思ってたのに、彼が『自分の大切に思う人の味方につきなよ』って言ってくれて。なんか羅々ちゃんにもずっと高倉くんとの事協力してって頼まれてたし色々その時複雑でさー。でも城田くんのその一言でモヤモヤしてた気持ちがスッと吹っ切れて。私は一香ちゃんに一番幸せになって欲しいんだって、やっと気づけた」
そう言った桃ちゃんは、急に私の顔を覗き込んだ。
「話してくれてありがと! たとえ後3日で終わっちゃう恋だったとしても、私は全力で応援するから。粉々に砕けちゃったら、絶対一番に私のところに来てよねっ!」
可愛らしくウインクして私の手を握った。
「……桃ちゃん、本当にありがとう」
こんなにそばで私を支えてくれる人が居たのに、隠す事に必死になって全く見えていなかった自分が情けなかった。
「とにかく当日まで羅々ちゃんには黙っておきなよっ。たまに……すっごい怖い顔してる時があるんだよね、彼女。まぁ、私の思い過ごしかもしれないけど……。羅々ちゃんには悪いけど、一香ちゃんは4年も片想いしてきたんだから私はちゃんと決着つけさせてあげたい」
「桃ちゃん。私、高倉くんの事『好き』って気持ち、もう隠したく無いの。見た目や女子力は羅々ちゃんには絶対に敵わないけど、高倉くんの事好きな気持ちだけは絶対に負けない。その気持ちだけには自信を持っていたいんだ。だから、もう隠れたりしないで、ちゃんと戦おうって思ってる」
桃ちゃんはうんうんと頷いた。
「分かった。一香ちゃんの納得行くようにすればいいよ。何かあったら、遠慮無く助けを求めてきてよね!」
私と桃ちゃんは暫く恋バナに花を咲かせた。
高倉くんの過去についてはもちろん伏せたけど、彼のいいところを知って欲しくて私はだいぶ一方的に話していたかもしれない。
それでも桃ちゃんは嫌な顔一つせず、私の話を聞いては頷いてくれた。
あと3日。
神様、どうか何事もなく、その日を迎えさせてください……!!




