チョコレイト
バレンタインデーで浮わつく校内を走り抜け、寒さに身を縮こませながら階段を転ばないようにかけ上がる。
もちろん手にはヴァイオリンのケースを持ってね
屋上の重い扉をこじ開け、その先に峻くんを探す。
みつけた!
ボーッと空を見る姿は好きだからなんだろうかかっこいい。
そっと後ろに回り背伸びをして峻くんの目を隠す
「だーれだ!」
「・・・・・・わからない」
え、うそ?
わからないの?
まさか人違いした?
でも、声は峻くんだったよね?
「ほ、本当にわからないの?」
念のために聞いてみよう!
「・・・うん」
ガーン・・・
そんなありきたりな音が頭の中に響いた。
好きなのは私だけだったのかなぁ?
あれ、なんだか泣きたくなってきた・・・
「わからないから誰か確認させて?」
そう言うと振り返って一瞬で横抱きにされた。
「悠紀だったのか」
わざとらしい口調で言い切るとフェンスに寄り掛かるように座る。
もちろん私を横抱きにしたまま。
「さっきのわざと?」
「何がわざと?」
ニヤリと笑う表情は確信犯
「びっくりして損した」
「拗ねるなよ、悪かったって」
笑いながら頬をつつく峻くん
幸せだね
ミルクチョコレートより甘い時間とちょっぴりほろ苦い峻くんの態度
バレンタインは甘いだけじゃないね?




