【エピローグ】「ミミの選択」
別れたときは、水の中でもがいているしかなかった。
ただ静かに、水面を見上げる日々が続くのだと思っていた。
けれど。
にゃーさんに手を引かれ、フーラさんに背中を押され、レイラお姉さんは見守ってくれていた。レイナードさんにも、筋肉さんにも、クライスさんやミャーさん、他のみんな。
それぞれが私を支えてくれた。
巨大生物の中で、私は再び水底へと落ちていった。
徐々に暗くなる中で、ロリーさんが私の腕を掴んで引っ張り上げてくれた。
にゃーさんも、レイラお姉さんも、私を下から押し上げてくれた。
お母さん、なのだろうか。
魔力だまりに落ちたとき、世界樹が私に力を貸してくれたのだと思う。
だから今、みんなと笑い合っていられる。こうして、隣で駆け回っていられる。
私が一番、望んでいたものだ……
洞窟の広場で、魔物たちの赤い視線が私に突き刺さる。唸り声を上げ、一斉に駆けてきた。
あの頃は、ただ守られているだけだった。
あの頃は、誰かが傷ついても、戦闘中に近くへ行くことができなかった。
あの頃は、震えているだけで、近くに来てくれないと触れることすらできず、終わってからしか、傷を癒すことができなかった。
でも。
今は違う。
一緒に戦える。
たとえ、誰かが傷ついたとしても、すぐに近くに行って傷を治せる。
震えているだけ、守られているだけの私はもういない。
駆けてくる狼を、私はメイスで弾き返す。
ソールさんは、私に迫る狼を吹き飛ばしながら、一斉に来ないように調整している。
ロリーさんは、私が囲まれないように、常に移動しながら狼を斬り伏せている。
そして、アネットさんの詠唱が終わり、黒い靄が広がる。
私はすぐに跳躍して、天井へ張りついた。
「――グラビティプレッシャー」
あのときは、私を避けるように展開していた魔法だったけれど、今はすき間なく展開されていた。
ソールさんやロリーさんを巻き込むこともなく、黒い影のような狼を押しつぶす。
押しつぶされた狼は霧散し、牙や爪だけを残して消えた。
全てを倒し、重力場が消えると、私は着地して、みんなと勝利を喜び合う。
けれど。
頭を揺さぶられるような鳴き声に、私たちは耳を塞いだ。
「ああ、やっと現れたか」
「よし、こいつの素材を持って帰れば依頼完了だな」
「終わるまで油断しないでよ?」
私の答えはずっと決まっていた。
どんな姿になっても。
みんなが受け入れてくれるなら。
ソールさんがいる。
ロリーさんがいる。
アネットさんがいる。
街に戻れば、にゃーさんたちも、ギルドの人たちもいる。
一緒にいられるだけで、私は幸せ。
声の主、巨大な黒い狼を見据えた。
影のように揺らめいている。
私とロリーさんがかき回し、アネットさんの魔法と、ソールさんの光り輝く巨大な剣でとどめを刺す。
素材を回収し、私たちはギルドへと帰る。
そして……
また、別の素材を求めて、ダンジョンへ潜る。
今だからピコさんが言っていた「この先、一人になることがあれば」の意味がわかった気がする。
私の身体は成長が止まっている。自分の体だからよくわかる。
きっと、私はみんなよりも……
「ミミ?」
「ミミちゃん、行こうぜ」
「ミミちゃん、何か考え事?」
私は首を振り、前を向いて歩いていく。
ソールさんの頼もしい背中を追い。
ロリーさんは視線をそらし。
アネットさんは抱きつこうとする。
私は……守り、守られながら、これからも生きていく。
たとえ、一人残されたとしても、私は一人じゃない。
【おわり】
ミミたちの冒険は続いていきますが、これで終わりとなります。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。<(_ _)>
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