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第65話 お疲れ様でした

「着いたー」

「シャワーを浴びたいのでございます」

「そうだな。でもさすがにアトモス号まで戻る気力はもう無いぞ」

「タイム様、お願いしてもよろしいでございましょうか」


 ん? タイムにお願い?


「分かってるよ。はいっ」


 と言ってタイムが出したのは、鈴ちゃんの身体を洗い流したときに使った風呂?! まさか……


「ささ、兄様! 一緒に入るのでございます」


 一緒に?!


「入らないよ!」

「先程ご入浴されたいと仰られていたではございませんか」

「一緒に入りたいと言った覚えはないっ」

「毒を食らわば皿まで。ここまで背負ってくださったではございませんか」


 それは自分を毒だと言っているということに気づいていないのか?


「食らわないっ」

「それは残念なのでございます」


 しかし、これでアトモス号に戻らなくても汗を流せるぞ。

 タイムが湯船とカーテンを出し、時子が携帯(スマホ)魔法でお湯を出す。

 時子だって疲れているだろうに。

 ナームコはさっさと服を脱ぎ、シャワーを浴び始めてしまった。


「終わりましたか」

「急かすならデイビーも手伝え」

「肉体労働は管轄外です」

「……結界外調査も管轄外だろ」

「それは……貴方たちが異世界人だからであって、あくまで業務の一部。決して部署異動させられたわけでは……くっ」


 一生言ってろ。


「パパ、お帰りなさい」

「鈴ー、ただいま」


 絵本を読んでいた鈴ちゃんが駆け寄ってきて抱き付いた。

 最近は甘えてこなかったのに、離れていて寂しくなったのかな。


「鈴、パパは泥だらけだから抱き付いたら汚れちゃうぞ」

「じゃあ一緒にお風呂(ふりょ)入りゅ! ママー、お風呂(ふりょ)!」


 あー、ここでも時子(ママ)と一緒に入ることになるのか。

 嬉しいやら恥ずかしいやら。はぁ。


 広さ的には家のシャワー室より狭い。しかも壁じゃなくてカーテンだ。そして床じゃなくて湯船の中。当然丸みがあるから端に寄れない。さぁ困った。

 なにが困るって鈴ちゃんが湯船の丸みで転びそうになるから何度支えたことか。その度に時子の身体に触れることになるし。

 何処とは言わないが、とても柔らかくてご馳走様です!

 でも毎回ピンポイントでソコなのは……鈴、狙ってやっていないよな?

 ジッと鈴ちゃんの顔を見ても、嬉しそうに楽しそうに笑い返してくれる。裏なんてない……よね。

 時子は嫌がる様子も恥ずかしがる様子もない。俺1人だけ意識しているというのか。

 いつものことだけど、俺1人イヤらしい想像をしている感じになって、罪悪感に潰されて俺の息子は萎縮しっぱなしだ。お陰で命拾いをしているけど。

 そんな感じで時子の顔もまともに見られないから、頬がうっすら染まっていることに気付けなかった。


 泥と汗を洗い流し、綺麗さっぱり! ああ、気持ちいい。

 簡易脱衣所で服を着て外に出ると、タイムが出したのか大きなテントが建てられていた。

 中に入るとタイムとナームコが夕飯を作っていた。

 調理道具はタイムが用意したとして、食糧は何処から出したんだ? 魔法の鞄とかアイテムボックスとか持っていたのか? と思ったら、ナームコが鉄人形(ゴーレム)に運ばせていたらしい。気づかなかったよ。

 ……ん? もしかして穴掘りも鉄人形(ゴーレム)に任せればよかったのか?

 気にしても仕方ない。今は腹を満たそうじゃないか。


「マスター、もうちょっと待っててね」

「ああ」


 なら俺は皿でも用意しておくか……と思ったが、チビタイムたちがワラワラと動き回って皿を用意している。やること無いな。

 時子と鈴ちゃんがテントに入ってきてタイムたちの手伝いを始めた。

 どうでもいいことだが、簡易脱衣所は男女別々だ。でも鈴ちゃんは俺と一緒に着替えるとばかり思っていたのに、今回は時子と着替えていた。

 もうパパと一緒は恥ずかしいのかな。でもお風呂は一緒に入ってくれるんだよな。難しいお年頃というヤツだろうか。


「いただきます」


 全員で手を合わせ、声を揃えて感謝を込める。

 そういえばターナー家の食卓もいつの間にか〝いただきます〟だけになったよな。時子が台所に立つようになったら自然とそうなって、時々トレイシーさんが作ってくれたときも「〝いただきます〟だけで十分ですよ」と言ってくれたからだ。

 それにしても、こんなところに来ても、普段と変わらない食事が取れるのはいいな。

 このテントだって寝るだけじゃなくて料理も出来るしトイレもある。どうせなら風呂も付いていればよかったのに、なんで外だったんだろう。


「お風呂だけ先に出したからだよっ。ちゃんとお風呂も付いてるからね」


 そうなのか。で、俺はそんなこと聞いていないんだが、なんで分かったのかな。ん? そっぽ向いていないで答えてごらん。

 まったく。ま、いいけどね。

 こんな大きくて多機能なテント、持ち運ぶなんて無理だ。それこそ次元収納とかインベントリとか、そんなスキルでも無ければ無理だ。

 本当にタイムには頭が上がらないよ。


 寝るのも当然男女別……じゃなかったのかな。2つに分ければいいのに、なんで3つに分かれているのかな。

 1つはデイビー。ま、これは理解できる。もう一つは鈴ちゃんとナームコ。何故?! よく分からないが鈴ちゃんは駄々をこねることはなかった。


「娘、分かってるな」

「はい」


 こっちに説明が無いのはいつものことか。


 で、残った1つが俺と時子……これもいつものことと言われてしまえばそのとおりなんだけど。


「タイムも居るよ」


 なんで7頭身に(大きく)なっているのかな?

 で、川になって寝るわけだが、真ん中が俺、左側に時子で右側がタイムだ。それだっていつものことだろと言われてしまえば反論は出来ない。強いて言うならアニカが居ない分もめること無く自然とこうなったというくらいか。

 ダンスレッスンとか鍛錬とか、今日は無しだ。疲れた身体に鞭打っても身に付かないからな。

 日課(キス)を済ませ、横になったら余計なことを考える暇もなく、意識が遠のいていった。

次回、エイルの爪痕は続くよ

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