あの中にもいた
薄暗いランプが揺れる広い執務室。中央には重厚な木製の机が置かれ、そこに足を組んで座るエンマの姿があった
黒のスラックスに革靴というフォーマルな姿だが、放つ雰囲気は妖艶で威圧感に満ちている。
アオが扉の方から現れ、静かに一礼してから机の前へ進む。
死人のように青白い肌は、わずかに疲れを帯びているようにも見えるが、その態度は冷静さを崩さない。
「待ちくたびれたわよ、アオ。大して難しい仕事でもなかったでしょうに。わたしのメンツが台無しになったらどう責任を取るつもり?」
「おやおや、ご自身の失敗を誰かに悟られることを恐れておられるのですかな?」
「うるさいッ!!」
「ご心配なく、メンツを潰すようなことはしておりません。もし“誰かに感づかれる”ことを恐れておられるなら、問題ありません。船ごと吹き飛ばしましたので、痕跡は一切残っていないでしょう。」
「そのようね。でも珍しく手こずってたじゃない?」
「えぇ……。運悪く民間人に出くわしてしまいましてね。結局死んでしまいましたが。」
「救難艇の4人ね。運がないわね……、彼らも冥界送りか。」
「一つお聞かせ願えないでしょうか? 今回はどのような生物に転生させたのですかな?」
エンマは書類を机上でパラリとめくり、つまらなそうに鼻を鳴らした。
「アメーバよ。電気と水を養分にして増殖する、あの気味の悪い粘液質の生き物。魂の質からして、そいつが妥当だと、あの時は判断したのよ。人に害をなすような大罪人だし、あの程度が相応って思ったわけ。」
「大失敗でしたな。」
「……うるさい。」
アオが軽く苦笑する。
いつものように軽口を返すアオだったが、アメーバという言葉を聞いて、ふと脳裏に蘇った記憶があった。
あの宇宙船で到着した直後の事だ、ひたりと首筋に悪寒を感じ、直後微かだが首筋を刺すような感触があったのだ。
「なるほど。あの瞬間、首筋に走ったあの微かなかゆみ……あれが、アメーバの仕業というわけですか?」
エンマは思わず顔をしかめる。
「えぇ。おまえ、大丈夫か? あの船の連中みたいに豹変しないでよ?」
「ハッハッハッは、ご冗談を」
「あぁ、それと。おまえ、あの船の水を飲んでいただろ? あの中にもいたからな、アメーバ」
「ハッ!?」




