るー12
『それで会社の方はどうでした?』
いろはからの電話に出たタモンは一言目で聞かれた。
まぁ、無駄話をする気はなかったので
「パワハラとモラハラを繰り返して早期退職させられる事になってたな。恨んでる人は数えきれないだろうって部下の人がいってたよ。」
『ご近所の人のSNSを漁ってたんですけど、罵詈雑言しか出てこなかったですね。これは犯人の特定ができないほど被疑者がいますね。どうしますか?』
「高田さんが通院している病院とかの情報はあったか?」
『かかりつけ医はあったみたいです。後でメールしときます。
ただ投薬されてる様子がないので病気はなくて本人の性格が悪いだけの可能性は否定できませんね。』
「わかった。とりあえず、その医者のところは行ってみる。」
電話を切るといろはからメールが来たので、その医者の元へとむかった。
一応、正規の方法で順番を待って診察室に入ると60代くらいの医師が「今日はどうされましたか?」と聞いてきた。
「すみません、実は私はこういう者です。」
タモンは名刺を渡して
「実は高田さんの依頼で犬の捜索を行っていたんですが、高田さんの様子がおかしすぎて何か病気なのではないかと思ったんですが、今は高田さんからお話を聞くことができない状況なので先生からお聞きしたくて来させて貰ったんです。」
「高田さんに何かあったんですか?」
「実は愛犬のナッツちゃんが殺されてその死体が送りつけられて来まして。それを見て倒れてしまわれたんです。今は私の同僚が側にいるんですが、話が噛み合わなかったりするのが記憶系の障害がある人と同じような反応だったんです。
高田さんがそのような病気になられていたということはないですか?」
「本来ならお答えできないのですが、あの人の場合はいいでしょう。あの人はアルツハイマーの所見が見られます。そのため薬の服用なども言ってるんですが、本人が自分は違うと言い張って薬を受け取ってくれないんです。
最近では来院もなくてどの程度進行しているかもわからない状況です。」
「ご近所の方から煙たがられてる事や人を怪我させてしまった事なども忘れてるようなのですが、それも病気のせいですかね?」
「もともとそういうことに鈍感な人ではありましたが、お話を聞く限りだとかなり病気が進行してそうです。
できるだけ早く診察を行って適切な施設にいれた方が良いのではないかと思います。」
「ちなみに高田さんの病気について知ってる人はどれくらいおられますか?」
「高田さんの会社の人事課の人は知ってると思います。あそこの会社はかかりつけ医がいる場合は健康診断などを依頼してくるので、今年の健康診断時にアルツハイマーの所見が有ることを文書で伝えていますから。」
「なるほど、それで早期退職を促したわけか………」
「まぁ、そうなるでしょうね。性格も良くなかったし疎まれてはいたでしょうからね。」
「色々と教えて頂きありがとうございました。
次の患者さんもおられますから今日はこれくらいで失礼します。
また何かあれば聞きに来ます。」
「そのときは昼時にアポを取って貰えるとありがたいですね。」
「はい、そうさせて貰います。」