お兄様と合流
お兄様と会えたらロークス邸宅まで送ってもらうので、帰ってもかまわない、と運転手に言付けし、ロークスの民間軍事施設『LISS』の乗り換えスポットで車を降りた。
「今日、施設見学予定で、ここで関係者と待ち合わせしている」と、スタッフの一人に告げて、待たせてもらう。私の方が早く港町を出たが、市街地を通って遠回りをしたせいか、10分も経たないうちにフィリーオ兄様が乗った車がついた。
車から降りるお兄様の姿を確認した私と運転手は、お互いに笑顔で頷く。運転手は車を出し、私を置いて去っていった。
「フィリーオ兄様」
聞こえるハズのない声に驚いて目を見開くフィリーオ兄様へと走り寄った。
「ルナ……なぜ?」
「私もココに用事があって来たんです」
「用事?」
聞き返すフィリーオ兄様の顔に手を添えて、小声で「査察です」と、伝えた。
「ルナ……嘘はダメだよ?」
ワガママを言う子供に言い聞かせるように、お兄様は穏やかに私を嗜める。
「嘘ではないですよ? 将来、私が担当となる予定の施設なので、見ておくようにと進言があったのです」
私は一拍置いて、さらにフィリーオ兄様の耳元で、「ここにあるのは……軍事施設だけじゃないですから」と囁いた。
「…………」
お兄様が怪訝な表情をして無言になる。
――やっぱり付け焼き刃のハッタリはダメだった?
心臓が苦しいぐらいドキドキしている。無言の時間が長く感じられた。
「すみません、どうかしましたか?」
乗り換えスポットのスタッフが、トラブルがあったのか確認するように私達に声をかける。
「いや、何でもない。ルナ、行こう」
お兄様は私の手をとり、一緒にLISS敷地内専用車に乗せてくれた。




