カナルの繰り返される時間2
「それで……ゲーム内容ですけど、ワザとフィリーオ兄様の話を簡略化したのは、なぜです? キメラ研究の事故で死亡するのは確定だけど、そこに至るまでの理由が違うってことですか?」
「理由は分からないのです。しかし、それが理由かなって思われる共通事項はありますね」
「共通なら、確定要素ですよね?」
――やっぱり、重要なことがマルマル抜け落ちてる
「いえ、それが……相手が毎回違うから、なんとも……」
――相手が違う?
「それって、お兄様の恋人のことですか?」
カナルが頷きながら、記憶を辿るように考えている。
「毎回、お一人だけ恋人はいるんです。しかも、きっかけが同じで、相手から好意を寄せられて付き合い始める。今までは……奈月さんか、ナギラさん、あとは柴藤カレンさんの3人ですね」
「お母様!?」
「はい」
「……見事にフィリーオ兄様より年上の人ばかりですね」
カナルが何回も頷く。今回、私が相手なのが、かなりイレギュラーで、信じがたいことなのだろう。奈月さんは単なる友人だし、ナギラ画伯は知人程度。そして、私のお母様は、今回、お父様と早々結婚し、お兄様にとっては伯母になった。
「そうですね。それと、ゲームには恋人の存在を設定しなかったので、恋人との別れを入れられず、全面カットしたエピソードなのですが、毎回、恋人と別れた後に事件が発生するのです」
「……それって、事件に恋人との別れがキーになってるじゃない!」
「えぇ、おそらく。でも詳細を知らないのでゲーム内容には入れませんでした」
――まったく……やっぱり、スッカスカの歴史書!
苛つく気持ちを抑え、「別れた理由は? 何回もループしているなら、1回は聞いたこと、ありますよね?」と、カナルに聞いた。
「聞いたけど、曖昧なことしか教えてもらえないんですよ」
「お兄様は、なんて?」
「『自分の努力では、どうすることもできない理由だよ』としか……」
――自分でどうすることも出来ないこと?
――なんだろう?
私とカナルは考えこみ、しばらく沈黙が流れた。しかし、その沈黙は、すぐにカナルによって破られる。
「それにしても、今回、初めてですよ! 衝撃的過ぎて、未だに信じられません。まぁ、今までルナさんの存在自体なかったので、何とも言えないですが……。まさかフィリーオ兄さんが『ロリコン』だなんて、ショックだ……」
カナルはガックリと項垂れている。フィリーオ兄様に対して憧れていたようだ。それにしても私が相手だというだけで、イメージが総崩れと謂わんばかりの、この言われようである。
「失礼ですね? お兄様は私が私だから愛してくれるのであって、いわゆる『ロリコン変態紳士』ではないですよ? ……たぶん」
「ルナさんの方がヒドイよ! ボクはそこまで言ってませんよ!?」
「へー……、2人で僕の悪口? 楽しそうな『いとこ会』だね?」
カナルと2人で話していたハズなのに、聞き覚えのある声にグンとテーブルを取り巻く空気が冷え込んだ。
「お、お兄様!?」
「……フィリーオ兄さん」
その後、3人で食事をしたが、お兄様の始終振り撒かれる笑顔が怖く、食べ物の味がまったく分からなかった。




