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大会 予選2

 パパは格好いい。優しくて、温かくて、私をいつも守ってくれる。そして、リンメイママとケンカをしてるのに笑っていた。リンメイママもボロボロなのに笑って……二人は輝いていた。周りの人達もパパとママのケンカを見て、私と同じように声をあげて応援している。


 私もパパみたいに相手が大きくても、怖くても、ああやって笑って、みんなをドキドキさせる大人になりたい! だから、逃げないよ……私はマーク・エレンの娘……パパ……私……


「やめろぉおおおお!」


 ………………

 …………

 ……

 …


 舞台の上にはボロボロになり、立ったまま気絶しているモモがいた。そのモモに向かって男が拳を振り上げ……宙に舞い、リングに()すが……


——————男は止める審判を押し退け、モモに暴行を加えていた。


「止めるんだ!! それ以上やるなら失格にブゴッ!?………………………」


 審判はアゴに一発拳を喰らい堕ちる。そして、止める者がいなくなりモモを……


「この(あま)ァ!!! 勇者の俺に恥をかかせやがって! 死ねッ! とっととくたばりやがれッ!」


——————殺す!!


「やめろぉおおおお! てめぇ! なにしてんだぁ!」


 俺は舞台に駆け上がり、男に向けて、あらん限りの気と力を込めた一撃を放つ。次の瞬間、奴は左手に持っていた盾を咄嗟(とっさ)に顔の前に素早く出し防ごうとするが貫き奴の顔ごとリングに叩きつけてクレーターを作る。


 その頃になって俺よりやや遅く駆けつけに来たアイナとリンメイはモモを抱き抱えて避難をする。俺の放つ気は今や紅く、黒く染まっていた。


「グハッ!? きじゃま何ぼんだ!?」


「うるせぇなッ! いいから黙って死にやがれぇッ!!!」


 後のことなんざ知ったことか! 全身に気を巡らせて俺は男に馬乗りになった状態で拳の連打を浴びせる。

 だが、この男も右手を前に出して爆裂魔法を撃ってくる。互いに一歩も退かない。気をまとわらせたクレーターを作るほどの重い拳、触れる物を全て()ぜる爆裂魔法。


 この二人に近づける者などいなかった。



——————筈だったが、そこに2人の男女が両者の喉元に剣を突きつける。


「そこまでだ!」


 俺に制止を掛け、空いてる手で肩に置く。煮えたぎる想いを無理矢理抑えて男から離れた。


「……アーロン! またアンタなの? この勇者の恥さらしがッ!」


 20歳くらいの金髪碧眼(きんぱつへきがん)のツインテールをした女が全身全てを黒で統一したこの戦士の男を侮蔑を込めた目で見下ろしていた。


「ブスは引っ込んでろ!」


「アーロンいい加減にしろ! 王が来られておる。それ以上やるなら私を含め、全ての勇者がお前を狩りに向かうことになるぞ……これは王の命だ」


「エンガイさん……分かりました。……アーロンって言ったな?……決勝まで上がって来い! 殺してやる!」


「それはこっちのセリフだぁ! テメエを犯して糞に擦り付けてやるうから覚悟しておけ!」


 ふてぶてしい態度でクレーターから飛び跳ねてどこかへ行ってしまう奴に……


「おいっ! どこへ行く!……ニコ、悪いが奴を捕まえて来てくれ。逆らえば王命に背いたと言っていい」


「……分かったわ、後は任せるわ」


「事情を聞くからこっちに来てくれ」


「分かりました。でも少しだけ時間を下さい」


 モモを抱き抱えたリンメイのそばにより、俺は頭を優しく撫でてやる。


「必ずぶっ飛ばしてやるからな。……アイナ! リンメイ! モモを頼んだぞ。」


「こっちらのことは任せて」


「モモは私とアイナでちゃんと見るよ」


 モモからそっと手を離し向かった先は王様の控えている特別室だった。












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