王の御前
エンガイと王様のところへ向かう前にことのあらましを伝えておいた。すると奴は問題を起こす録でもない勇者と教えられた。
だが、そんな奴でも魔王討伐には一定の成果を出しており、野に放っても悪事しか重ねないので、なるべく手綱をつける意味でも勇者を解任しないそうなんだと。
胸くその悪い奴だったが、実力は確かにあった。なんだかんだと言って、ケロリとあの場から立ち去って行ったし、拳の弾幕の中、きっちりと反撃も返してきやがった。決勝でやるときは今のままじゃ厳しいかもしれない。念のために用意していたプレートタグを使うことになりそうだ。
会場から見えた特別室のベランダでくつろぐ王様の元へとやって来た俺達は形式通りの挨拶をしと本題を王様から聞かされることになった。しかし、この王様って案外若くてびっくりした。30代半ばくらいのマッチョなんだよ。赤い短髪に身長190cmたくましい体つき。小麦色の肌に歯並びのいい剛将。それが俺の印象だった。
「んっんん。暫しエンガイよ……それとお前達も余が呼ぶまで下がれ」
「ダメですじゃ……魂胆が見え見えですぞ王。どうせあのムチムチなインテリジェンスウエポンを御所望なんじゃありませんか?」
脇に控えていたお爺さんがずいっと前に出て胡乱げな半目をしながら王様をじーーーと見つめる。
「王……」
「エンガイよ! お前までそんな顔をするな。仕方ないだろ? あんなムチムチな美人を遠くから鑑定して見れば武器なんだから、余が欲しがるのは当たり前だろ?」
「昔はあんなに好青年だったのにこんな風に育たれてしまうとは……はぁ~、あの世で儂は前王様にどのような顔をして会えばよいのやら……」
色々とあり余しているようだが、わかりやすくていい。なら——
「材料の負担と私の願いを2つ叶えて頂けるのならば仕事をお引き受け致します。」
「——ほう、申してみよ。」
実に楽しそうな笑顔を向ける王。いやらしい笑みではなく、俺を試すような視線を向けてだ。
「1つは私の打った武器を今後、常に帯刀していただく事と、さきほど私と会場を騒がせたあの勇者との特別試合をすぐに王の御前でさせていただければ、5体までお作り致します。」
「——なかなか面白い奴よのう、エンガイ。貴様の連れのようだが、まさか、貴様の女か?」
「いえ、彼女は旅先で知り合った者でございます。」
何か腹の探り合いが行われているようだが俺は黙って様子を窺っている。
「——まあよい。1つ、いや、2つ聞いてよいか?」
「なんなりと。」
「武器を持たせたい意図はなんだ。勇者にならわかるがな……」
「それについてはお答えすることが出来ません。お渡しするところまでが私の目的であり、願いであります。」
「余を試すと言うのか。面白い。ではもう1つはあのクズと何故そこまでしてやりあいたい? そなたからは武人の匂いが全くせん。どうも動機がみえんのでな……」
失礼を承知で立ち上がり、拳を前に突き出した。
「私の娘をぶっ飛ばしたから完膚無きまでにぶっ飛ばしたい! ただ、それだけです。」
ギリッと歯を噛み締める音が鳴り響き、目に写った意思を王に目線でまっすぐに見てもらう。
「——よかろう。エンガイ! 半刻の後に執り行う。あ奴に縄をつけてでも連れて参れ。逆らえば余の顔に泥を塗ったとその場で斬り捨てても構わん。わかったな?」
「御意。」
王命で舞台を用意された俺はプレートタグをさらに追加して奴を再起不能にする為に準備をする。
お前が悪いんだ……モモをなぶりやがって! ここまで俺もやるつもりはなかった。だが!!! 貴様は俺を怒らせた! あのモモの姿がずっと脳裏にこびりついて離れない……二度と剣を握れないくらいに壊してやる。
これから行うのは一方的な蹂躙だ。俺は容赦のない構成で舞台へと足を運んだ。




