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ZEROミッシングリンクⅤ【5】ZERO MISSING LINK 5  作者: タイニ
第三十七章 準備された奇跡

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42 掴めなかったタニア

お久しぶりです。


活動報告には書きましたが現在全体の大規模推敲をしております。

過去小説を見直していたら、設定自体が違ってしまっている部分など出て来まして…( ;´Д`)


カフラーと弟の死期や大叔父大叔母の設定が違ったり…。いつも同じ繰り返しで申し訳ありません。


記憶してるから大丈夫とメモを残していない設定ほどおかしくなっていました…。

大筋は変わっておりませんが、セリフを付け足したり減らしたりしたものもあります。


それにしても初期、自分でも思っていましたが、主役勢が動き出すまで固くて場面も変わるしノリがなくてごめんなさい。初めて身内に小説を見付けてもらい、読んだ感想は「どうしても寝てしまう。」でした(´∀`)


過去設定に矛盾があれば今回もいくつか修正箇所があるかもしれませんが、修正しながらも少しずつ更新も続けていきますので、よろしくお願いいたします(礼)




サダルにとって、ニューロスメカニック国際会議は大きな起点の1つになる。



「すみません。マーカー博士とポラリス博士はどちらに?!」

2日目のスケジュールの後、サダルは急いでSR社の人員を探す。人だかりがあるのでポラリスがどこにいるかはすぐ分かった。でも、誰もが一言話したがり、その中に入れない。


だが、サダルは必死だった。小国であり下手をすると北方大国の属国扱いのハッサーレでは得られないものを得たかった。


そして既に気が付いていた。自分は半軟禁状態であることを。今の自由は「権威に逆らわない前提」で得られるものだった。一度崩れた北方の政権が再復活することがあれば、いつのみ込まれるか分からない。国内にスパイもたくさんいる、



一方、タニアは自由圏だ。今ここで声を出さなければ自分の世界は息詰まる。


「ポラリス博士!」

「はい?」

「…っ。」

1回ほど呼んだところで気が付いても貰えないと思ったのに、意外にもポラリスはすぐに反応した。少し茶色い髪の、気の良さそうな男性。周りもサダルことナシュラ・ラオに注目した。自身もなぜ?と思うが、思った以上に目立っていたのだ。最初サダルを見た周囲は、SR社のニューロスかと思ってしまうくらいだった。


黒髪で周りの女性よりも長髪。一瞬男か女か分からない。しかも長身というだけでなく、伸びた背筋とふとした佇まいに気品があった。こんな男、まずこの研究界隈にはいない。他業界の人間かと思ったが、マーカーの方が先に気が付く。


医者の匂いがする。霊性に現れる、独特な臭い。でも病院だけの匂いではない。




「…君?」

「…あ、はい。こんにちは。」

みんな通路を開けるので、ポラリスたちはついでにSR社の控室に引っ張って行く。そして、ドアを閉めてからお互い向き直った。


「あの、ナシュラと申します。」

ポラリスは上を向いて考える。

「ポラリス、ほら。昨日の発表の…。資料見ただろ?」

友人マーカーが説明する。

「え、あの論文の?」

顔は知らないが論文は見ている。

「え?君がナシュラ君?心星ポラリスと言います。こっちは同僚のマーカー・ブレイン。」

「初めまして。マーカーです。」

「お会いできてうれしく思います。ハッサーレの研究所の学生でナシュラ・ラオです。」

それぞれ握手をする。ポラリスもマーカーもニューロスの世界では有名人だ。


二人は世界のVIPたちに会っているし、ニューロスの動作で人間工学や動き参考としてモデルに関心あるので気が付いたが、ナシュラは周りに比べ言動がなんとなく違う。特別な教育を受けていなければ身に付かない仕草。どこの礼節か。ハッサーレのエリート社会で身につけたものとは何かが違う。それに加え、舞踊か…剣術や武道などしていそうだ。


なのに、気分で言ってしまうのがこの男。

「君!」」

「はい?…」

「なんかミザルに似てるね!!」

「………?ミザル博士?奥様でのことで?同じメカニックや工学関係ですから…」

「そうじゃなくて、顔!男だよね。でもなんか似てる。」

「………。」

全然論文と関係ない。顔の話であった。


マーカーも楽しそうだが、その横の他の研究員がなぜそんな理由で注目するんだと、ナシュラには申し訳なさそうに、ポラリスには冷めた目で見る。この頃のサダルはまだ少し輪郭も幼く肩幅も狭かった。

「いやー。なんかいいね!!よし!今日で会議も終わりだし、一緒に飲もう!打ち上げ!」

「高校生ですが。」

「え?幾つ?」

「16です。」

「ほんと?!飲ませたら犯罪になっちゃうな!」


「ポラリス。何を言ってるんだ!行くぞ。」

SR社の真面目そうな男が怒るのも当たり前だ。失礼極まりないし、普通はこの後の夕食までが仕事だ。






その後ポラリスたちと夕食前に少し時間を取ることになった。ハッサーレ側にはSR社側の事情を共有したいと、得になるような話を何気なく言っておいた。


そして面会でナシュラは意外なことを言われる。



「ナシュラ君。君、ユラス教徒だね?。ヴェネレでもないし。正道教や新教旧教って感じでもないな。この業界でバイラは初めて見たよ」

「っ?」

驚いて顔を上げる。

今ハッサーレ側の人間は他の人々に顔を出し、ここにはいない。妙に動揺するサダルにしまったという感じのポラリス。SR社側が、サダルに張り付いている一見付き人のような男を、監視かと思い所用を言って追い出していたのは正解だった。

「……あ…。黙っていた方がいい?大丈夫。ここにいる人間はそういう話は漏らさないから…。」

「………すみません。」

雰囲気が和やかなので一瞬反応してしまったが、サダルはいつもならこんなことが起こっても眉1つ動かさない。

「いや、謝ることはないよ。こっちが申し訳なかった。」


ポラリスとしては、彼があまりにも大きな「気」を持っていたから、神官や祭司家系の出か確認したかったのだ。ここではもう言わないが、ナシュラはその他にも大きく禍々しいものも背負っていた。彼自身の性格や本性とは別の。


見る人間が見れば彼がただの研究員でないことは明らかだった。




その後、ニューロスに関して話し合い、ポラリスたちからもっとフォーラムなどに参加したらいい、タニアや東アジアに来たらいつでも連絡してほしいと言われる。それが叶うかは分からないが。


結局後半はハッサーレ側の人間が食卓に加わり、気軽な発言はできなくなった。あまり開放的な思考を見せると、おそらく自国で自由を失うだろう。賢く振舞わなければ意味がない。


「ミザルに似た男子高生に会っちゃったよ~って、一言メールしていい?もう送っちゃったけど。」

「はい?」

「なんかその反応までそっくり!全然愛想のない顔もそっくり!ミザルって息子のことでしかしか笑わないんだよね。」


意味の分からないサダルと、くだらないメールしないで!とアジアで怒っているミザルであった。




***




その後、サダルの知らないところでSR社の会議が行われていた。


「どう思う?本当にバイラなのか?」

どこかの幹部のような男がポラリスに尋ねる。

「おそらく。彼の直近の先祖、アジア人でもアジア系でもないよね。少なくとも近い親族はほとんどナオスだろ。あれは。」

何人かに薄褐色肌の人物が見える。ナオスは南方原住民と西から来た西洋人に近いユラス民族の混血が首都を構成している。


「………はあ。見付けてしまったな。」

面倒事を抱えたようにも、やっと見つけたという安堵のような思いも、そしてまさかここでという驚きも含めて言った。


今ここに集まっているのは、東アジアやシリウス研究の中枢の人間だけだ。結界も張っている。


そしてSR社ではない一人が言う。

「彼は採用だ。すぐにこっちに引き抜く。会社としてダメなら何かしらの形でアジアに入れろ。」

「……ハッサーレが手放さないと思うが。」

マーカーの言葉にポラリスが考える。

「でも、ハッサーレは国際会議(ここ)に出したんだよね。今まで隠していたのに。」

「ハッサーレでは本人も国も限界だと思ったんだろうな。」


「容姿が目立つから、ここでもっと目立たせて、これからの国際会議やフォーラムに敢えて招待して国際的認識と位置を確保してしまおう!」

名案だという顔をする。

「………そういう性格ではなさそうだけどな。本人が嫌がったら出てこなくなるかもしれんぞ。休憩時間独りで窓際にいた時、すっごいめんどくさそうな顔で群衆を見ていた。蔑むような目だったな。」

「……すごいの見たんだな。私たちの前で誠実そうだったのは演技?」

ちょっと寂しいが…考え直すポラリス。

「その蔑む目も見たかった………。」

「………。」

周囲はポラリスの発言を無視する。



それが彼自身の性格や本性か、それともハッサーレ人としての目か。彼は今、どこに傾向しどんな思想を持っているのか、まだあまり迂闊な行動はまだできない。



東アジアは確信していた。


もしかして彼は行方不明で、裏の世界で捜索、保護対象になっていたルイブ・テンサーであり結婚後のルイブ・ジェネスこと『サーライ・ナオス』の子供ではないだろうか。


このまま保護してしまえばいいが、もう少し政治的事情を聞きたい。ハッサーレ側に彼の守りたい人間はいるのか、ナシュラ自身の思想や傾向はどうなのか。一歩間違うと、全てが崩壊する。


ポラリスたちにはすぐに知らされなかったが、実は既に、タニア入国の時点の生体検査で目星は付いていた。行方不明になった時点で、『サダルメリク・ジェネス・ナオス』という子供に残されたこれまでの生体検査は非常にいい加減なものだった。

人が入れ替わっていたり、遺伝子バンク自体に何も残っていなかったり。けれど親や親族の履歴を見れば分かる。



今回の国際会議入りで、ハッサーレに隠す形で彼だけ血液採取もしていた。そして彼は、タニア入管で採血をされた時、抵抗も反応もしなかった。


これが一つの答えだ。



どうにかこの後にナシュラ・ラオに伝心ができるスタッフが『君を採用したい。SR社はいつでも待っている。』と伝える事だけはで出来た。




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