第八十五話 僕と立花さんの恋人レベル!!
運動会が終わり十一月も中頃を迎えると、通学路の桜並木は桜紅葉に衣替えをして、冬の到来が近い事を知らせてくれた。
こうやって、四季折々に季節を知らせてくれる桜の木を見ながら登下校していると、まるで僕と立花さんの軌跡を思い出してねと言われているような錯覚に陥り気恥ずかしさを覚える事がある。
桜色の季節に立花さんと出会い、緑色の季節に付き合って、赤色の季節にお互いの気持ちを確かめ育み合う。
本当に僕には出来すぎた彼女です。
「ん?景くんなにか言った?」立花さんが少し前屈みになり、僕を横から上目遣いで覗き込んでくる。
僕が頬をポリポリ掻きながら「なにも言ってませんよ」と答えると「ふーん、そっ」と言って、立花さんは正面に向き直った。
そのまま立花さんの横顔を見ていると、秋風が吹き銀髪を靡かせた。それを耳にかける仕草が、まるで絵に描いたような光景で、
容姿端麗って言葉は立花さんのためにあるんじゃ?と思えるくらい綺麗に⋯⋯ふと気付くと桜並木を抜け駅前通りに入っていた。
「ねぇ景くん、ここで休憩していかない?」立花さんが足を止め指をさした。
立花さん疲れたのかな?「えーと⋯⋯休憩三時間五千五百円〜コスプレ衣装貸し出し無料⋯⋯って!ここは僕達高校生は入れない場所です!!」口角泡を飛ばし抗議すると、
立花さんはチッと舌打ちをして歩き始めた。
前言撤回⋯⋯立花さんは綺麗な女性ではあるが、性格には少し難ありの僕の大切な彼女です。
「ん?景くん私の悪口言った?」ドスの効いた声で僕を問い質す。
「い、言ってないですよ⋯⋯」そして、僕の彼女は変な所で鋭い。
「そんな事より、早く目的を達成させましょうよ!」僕が意図的に話題を変えると、立花さんは「ムーッ」と言って頬を膨らませた。
僕はそれを宥めながら、どうすれば経験値を沢山取得できるか?考えを巡らせた。
そう、今日駅前に出てきたのはレベル上げをするためだ。僕は頭の中で立花蒼と彼女の名前を念じて、共有ディスプレイを出現させた。
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【恋人】ステータス
景♡蒼 恋人Lv.3
恋人経験値.362 次のLvアップまで88
1Lv 各種割引券【一割引】
5Lv ????
10Lv ????
15Lv ????
20Lv ????
25Lv ????
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もちろん、このディスプレイは立花さんにも見えていて、僕がどうやったら次の特典を貰えるのかずっと悩んでいる事も知っている。
「だから休憩しようって言ったのに⋯⋯」立花さんが僕の苦悩した表情を見て、か細い声で何かを呟いた。
「立花さんなにか言いました?」と訊ねると、口を尖らせツンとしてそっぽを向いてしまった。
理由はわからないけど、立花さんがへそを曲げてしまった⋯⋯僕が後頭部をガシガシ掻いていると、
「景くん、もう少しで⋯⋯────」
あーーーー!!「もう少しで期末テストですね?家に帰って勉強しましょう!」と声を弾ませた。
すると立花さんが、怪訝そうな表情を浮かべ「違うわよ、性なる夜よ」と声を低くして言う。
確かにそれもあるか?だけど、「立花さん、聖の漢字間違えてませんか?」と訊ねると、
「間違えてないわよ、恋人同士が過ごす夜は性なる夜よ」と言って、はにかんだ笑顔を見せた。
故意的に間違えてるなと思ったので、一旦立花さんはスルーする事にして、クリスマスの前に期末テストだ。
そう思って「今日は邪魔も入る事無いので、家に行きましょう」と告げた瞬間。
立花さんが背筋をシャンとさせ、その綺麗な碧眼の中にハートマークを浮かべた。
「景くん今すぐ薬局行こう!!」軽やかに踵を返し、ここに来る途中にあった薬局へと戻る。
勉強するのになんで薬局なんだろう?と一抹の不安を覚えながら立花さんに引っ張られて行く。
薬局の前に到着すると、自動ドアをくぐって立花さんが辺りをキョロキョロ見渡した。
「立花さん何を探しているんですか?勉強に必要な物ですか?」と僕が訊ねると、
「景くんに必要不可欠な物よ!」と言って僕の両肩を掴んで揺らした。
勉強するのに僕に必要不可欠な物ってなんだ?全然眠く無いけど眠気覚ましのドリンクみたいなやつかな?
僕が入り口付近で立ち止まって、必要不可欠な物を思い浮かべていると、立花さんは僕をほっといて薬局の奥の方にズカズカと歩いて行ってしまった。
「ちょっと立花さん待って下さい」駆け足で立花さんの後を追うと、ちょうど曲がった所でしゃがみ込んで何かを選んでいた。
目的の物が見つかったのかな?そう思って、立花さんの後ろから覗き込むと、精力増強ドリンクが並んでいた。
「買いませんよ」僕が酷く冷たい口調で声をかけると、
「どっちがいい?」スッポンドリンクとマムシドリンクを両手に持って、突き出してきた。
「だから⋯⋯ってか必要ないですから!」と語気を強めて言うと、立花さんはポッと頬をピンク色に染めてドリンクを棚に戻した。
なにか酷く誤解されているような気がする⋯⋯
立花さんが俯いたままスッと立ち上がり、僕の手を握って「じゃ行こっか?べんきょうかい」と何か意味ありげに言った。
なんか腑に落ちないけど「勉強会に行きましょう」とだけ一言伝えて、僕達二人はその場を後にした。




