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女神様にハイエルフとして長生きする様お願いされました。  作者: 大鳳
第三章 魔法学院編

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夜の王都

 ガルドリックの邸宅に帰ってきたエリスフィーナは彼の自室前にやってきていた。帰ってきた時の学生服のまま、普段の服への着替えすら後回しにして……


ーコンコンー


 ガルドリックの部屋の扉をノックするが返事は無い。今日は長期の仕事を請けるとかそういった話はしていなかったハズだが……。

 もっとも、毎日同じ仕事を繰り返す訳では無い冒険者なのだから、いきなり長期の仕事に向かう事になるのも珍しい話では無い。

「エリスフィーナ様、どうかなさいましたか?」

 ガルドリックの部屋から返事が無く、部屋の前で佇んでいたエリスフィーナに女性から声が掛けられた。

「あ、イリスさん……」

 声を掛けてきた女性にエリスフィーナが視線を向ける。そこにはメイド服にセミロングな銀髪の女性メイド長イリスが立っていた。

「ご主人様はまだ帰られておりません。何か急ぎの御用でしょうか?」

 イリスは邸宅の仕事全般を取り仕切っている為、ガルドリックや他のメンバー達の動向を把握している様だ。

「あの、じゃあメルさんは……?」

「今日はお嬢様もメガネ様もご主人様とご一緒されておいでです。冒険者ギルドに仕事を探しに行くとの事でしたが……」

 イリスはガルドリックの事をご主人様と呼んでいるが本人はあまり気に入ってはいない。一方のメルティローズは面白がって自身をお嬢様呼びさせている。更にクレスに至っては彼女の入れ知恵かメガネ呼びである。

 勇者パーティーで惟一名前呼びで済んでいるエリスフィーナが一番無難で有難いまである。

 それにしても、そろそろ日も落ちるのにまだ帰ってこないというのはここ最近無かった話であり、心配にならないと言えば嘘にはなる。

「わ、私ちょっと街に出てみます」

 エリスフィーナがイリスに一礼し玄関に向かうと

「エリスフィーナ様、夜間の王都はあまり安全とは言えません。お出かけになられるのでしたら……」


ーバサアッー


 イリスはどこからか取り出した旅人用の茶色いマントを学生服の上に羽織らせてくれた。さらに

「ご主人様方を探されるなら私もご一緒しましょう」

 エリスフィーナに同行を申し出てきた。夜の街に一人で出るのとは違い、二人連れは今のエリスフィーナにはとても心強い申し出だった。



 夜の街に出たエリスフィーナとメイド長のイリスは、二人ともフード付きの旅人のマントを羽織って街の南地区にある冒険者ギルドへ向かって歩いていた。

「エリスフィーナ様、道行く他の人を見ない様にして下さい。いつ因縁を付けられるか分かりませんから」

 王都で暮らしてしばらく経つが夜の街へは出る機会が少ないエリスフィーナが街の風景に目を奪われていると、先を歩くイリスから注意が告げられた。

「す、すみません……」

 比較的治安が良いとされている王都セレスティアであるが、冒険者が行き交う南地区の治安……特に夜ともなればお世辞にも良いものとは言えなかった。

 いくら地元の住民が品行方正であろうと流入してくる冒険者達が無法者であれば街の空気は低い方に流れてしまうのである。

 特にセレスティアの玄関口となる南地区は余所者が入ってくるのは避けられるものでは無い。

 エリスフィーナも最近は安全な学院と自宅の往復の繰り返しになっていた為か、冒険者時代の世間に対する張り詰めた空気感がすっかり抜けてしまっていた。

 南門へと続く大通りの目抜き通りを歩いていると仕事終わりの住人や乾杯をする冒険者達の喧騒が増えてきた。

(…………)

 エリスフィーナがフードの影からチラ見すると、酒場で祝杯を上げている若い冒険者達の姿があった。

「かんぱ〜い! おっ疲れ〜!」

「今日は大変だったね〜! まさか薬草取り尽くされちゃってるなんてね〜!」

「ああ、新しい群生地が見つかって助かったなぁ!」

「そういえばそれギルドに報告した?」

「まぁ、良いだろ。そんなの明日で。それより今日はパーっとやろうぜ?」

 年齢も自分とそう変わらない若者達が仕事をしているというのに、自分は呑気に勉強をさせて貰っている現実に若干の後ろめたさを感じていた。

「エリスフィーナ様、着きましたね。入りましょう」

 イリスに声を掛けられて初めて冒険者ギルドの前まで来ていた事に気が付いた。暫く来ていなかったせいか距離感もすっかり失っていた。

「は、はい……」

 こうしてエリスフィーナはイリスの後に続いて夜の冒険者ギルドへと入っていくのだった。



 夜の冒険者ギルドは昼間とは違い、冒険者達で賑わう街酒場の様相だった。特に粗野で脛に傷持つ系統の訳あり冒険者の様な風貌の者が特に多い様に見える。

「ひゃっはっはっはぁ! 今日の仕事はチョロかったなぁ! なぁ兄弟!」

「おうよ! オークの一匹や二匹屁でもねぇってんだ!」

「しかし、金払いのいい村だったよなぁ! 娘を助けただけで銀貨十枚ポンとくれるなんてよぉ!」

 受付に歩いているエリスフィーナ達の横のテーブルから今日の仕事について語り合う冒険者の一団の声が聞こえてきた。

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