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クォーター  作者: トーニ
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インストール・ニューパワー

エピソード5


ドーナツ島の密林エリアで何者かが、タロウとこのエリアのチャンプであるライスゴリラの対決に水を差した。


その人物は、40歳代で、ドレッドヘア。


筋骨隆々のワイルドな男性だった。そんな男性は、平らな石の遺跡に横たわりながら大樽に入った酒をグビグビと喉に流し込んでいた。


「お前が噂の弟子か?」「全然強そうじゃないな」「馬鹿野郎」彼は、バカ野郎が口癖の様だ。


『シュッ』タロウは素早い動きで、男性の目の前に移動した。


「おい!ガキ!」「歳上を見下ろすんじゃない」タロウの態度に怒りの表情を見せた。そんな男性は徐に立ち上がった。立ち上がった男性の顔面にタロウが奇襲のパンチを繰り出した。


『ピッシャ』

男性はタロウのパンチを軽々と左手で止め見せた。「お前は挨拶もろくに出来ないのか?」


「お前みたいな卑怯な奴にする挨拶はない」タロウは、あからさまな敵意を男性に向けた。


「俺はやられそうだったお前を助けてあげただけだぞ」「逆にお礼を言って欲しいくらいだ」


「さっきのチャンプには敵意は無かったぞ」「なのに何で関係の無いお前はトドメを刺した」

タロウの怒りは収まる事は無かった。


「この島の猛獣は獰猛なんだ」「俺たちの家族も何人も犠牲になってる」


「家族?」「この島の生き物は、塔の中心に入れば自ら襲ってこない」

「きっとカーちゃんの言うことを破って、AASの縄張りに侵入したから」「奴らに襲われちまったんだ」


「所で、お前もあの黒スーツの仲間か?」「全然そんなふうに見えないけどな?」


「御託はいい!」「結果的に貴重な家族を失った事には変わりはない」「そもそも、この島のDOJOの悪行は数え切れない」


「だからこの俺が、お前達を裁きに来たんだ」


「もしかして、カーちゃんに何かしようってんじゃないのか?」「そうはさせないぞ」するとタオルは、全身から熱気を放出し。謎の男性に襲いかかった。「威勢だけは一丁前だな」


『シュン』


男性はタロウの目の前から消えると、タロウと少し距離を取り。彼が持っていた樽を左手に持ち替え、自分の右手を樽の中に突っ込んだ。突っ込んだ右手を樽から取り出すと右手の拳に、樽の中に入っていた酒が彼の拳に纏わりついていた。


男性が力を込めると、右手に付いた酒の塊がどんどん大きく膨らみ出した。彼の体の2倍ほどの大きさに膨れ上がった。

そんな拳をタロウに向け、攻撃を繰り出した。『水塊拳すいかいけん


『ドッコン』男性の一撃がタロウに直撃し、タロウは倒れているライスゴリラと同じ場所に吹っ飛ばされてしまった。


「…」男性の一撃で気絶してしまったタロウ。男性は倒れたタロウに近づくと、徐にタロウを担ぎ上げると。二人はとある場所へ消えてしまった…


「ヒューヒュー」

ここは、ドーナツ島の中心に聳え立つ塔の外。そこにはチョコとカーさんが見知らぬ人影と対峙していた。「等々、死神がワシの地位を剥奪しに来たのか?」


カーさんはタバコを吸いながら対峙する一人の赤スーツの男性に自分の失脚を問いかけた。


「そんな事で済めばいいのですが」「きっと死に等しい処分が下される事でしょう」そう語る赤スーツの男性は、身長175cmほどで、黒髪センター分け。銀縁メガネをかけた、リンテリジェンスな雰囲気を醸し出す成人男性だった。


「ちょっと待って!」「カーさんが何をしたって言うの?」その場に居合せたチョコは、理不尽な赤スーツの返答に現実を受け止められずにいた。


「部外者が口を挟まないで頂きたい」赤スーツは、チョコの問いかけを一刀両断した。


「コイツはワシの弟子の一人で、『希望の種』の一人だ」


「まーいいでしょう」「けれど、10日後にはこのDOJOは廃業してしまうのですから」「何を言っても無意味です」


「いいですか?この世界の13あるDOJOのグランドマスターの一人であるあなたは」「組織から孤立しすぎた」


「その上、この島で度重なるエージェントの殉職に関与し、反省の弁もなし」「何よりこのDOJOからのエージェントの輩出は未だ0人」「全くもってDOJOの業を成していない」「その為、先日あなたの失脚について会議が行われました」


「その結果、組織の調律者である『シーファントム《10人の幻影》』が集まる会議で」「あなたが裁判に駆けられる事が正式決定しました」


「その為、あなたをプラヴァス社までお連れします」「この件につきましては、会長も承認しています」


「……」「アイツの判断なら従う道しかないな」


「ちょ…」「いいの?カーさん?」「わざわざ殺されに行くなんて」チョコは、カーさんの判断に動揺してしまった。


「前も言ったが」「ワシは死なないよ」「ちょっくら、昔馴染みに会ってくるだけだよ」


カーさん出した答えにチョコはどう反応していいか、直ぐに答えは出せなかった。


「そちらの話はすみましたか?」「…」「では参りましょう」そう告げると、『シッシュ』赤スーツはカーさんを手に取ると一瞬でその場から消えてしまった。


「どうしたらいいの?」「こんな時にタロウ君達は一体何もしてるの?」チョコの心配をよそに、気絶したタロウは眼帯の男にドーナツ島の海岸まで連れてこられていた。


海岸に倒れ込むタロウ。その隣の平べったい石に座る眼帯の男。そんな彼の前に、彼を睨み付けるゼントの姿があった。


「どうやってここまで来たんだい?」「全く気配を感じなかったけど?」

ゼントの質問にニヤニヤしながら、謎の男は質問に答えた。「アンタらが島で呑気にキャンプやってる間に、こっちはせっせと進化してるんだ」



「答えになってないよ」「まーいいや」「目的はカーさんだろ?」「タロウ君は関係ないだろ」「離してやりなよ」

冷静なゼントだったが、彼の発する言葉には確かな怒りが乗っていた。


「どいつもコイツも歳上に対する態度がなってないな」「まあいい、コイツの出現のせいでコッチは大忙しだ」「だから本人にその利子は払ってもらわないとな」



「だから、タロウ君を連れて行くと?」


「あーそうだ」「コイツの教育はこっちで引き継がせて貰う」


「NOと言ったら?」


「…逃げてみるのは」「…無理か?」「アンタには、戦っても・逃げても勝ち目ないもんな」


「じゃあどうして、こんな真似をするだい?」


謎の男の表情が真顔に変化した


「…威嚇かな?」「俺たちも黙ってないぞと!」「…そう伝えにきた」


「君達『シーファントム』の考えは分かったよ」「でも満場一致ってわけでもないんでしょ?」


「…痛い所つくねー」「流石ゼント君!」「いや…二人目さん」


謎の男の発言に対して、ゼントは体から殺気を出し謎の男に答えを突きつけた。


次の瞬間ジャングルの方から、サイゼとジロウが現れ。謎の男に襲いかかった。


襲い掛かる二人を見た謎の男は、石の上から立ち上がった。二人に対して攻撃の構えを取った…


しかし、謎の男は一歩も動けなかった。


サイゼは得意の脳波で男の動きを止めて見せた。その隙にジロウが、烈光剣で男の喉元を斬りつけようとした…


『パッリン』『ピッタ』男は一瞬で、サイゼの梗塞を解き。ジロウの烈光剣を素手で止めた。


「奇襲は失敗だったな」「馬鹿野郎」


すると気絶していたタロウがゼントの殺気で目を覚ました。「…ここは?」


『ドッカ!』男は近くに居るジロウ達二人を突き飛ばし、すぐさま目覚めたタオルの背後を取りタロウの関節を決め。タロウの動きを封じた。


「イテテ」「なんだよ急に?」


「流石にお前が目覚めると厄介だ」「4対1じゃ無理ゲーだ」「…でもコイツは戴いていく!」


「やめておけ!キャプテン・ブラック」「私達は戦いに来たんじゃないぞ」「そして、少年を離してあげるんだ」

戦闘態勢だったゼント達の目の前に、赤スーツの男とカーさんが姿を現した。


「…チッ」「時間切れか」そう告げると、拘束していたタロウを解放した。「ほらよ」


「手荒な真似をして悪かったね」「君達」


「なんだコイツら」「一体何を考えてやがる」ジロウは、キャプテン・ブラックと呼ばれる男と赤スーツの男の言動の違いに状況の整理が追いつかなかった。


「もう用事は済みました」「帰りますよ!キャプテン」


「チェ」「今のうちに弱いアイツを可愛がってやろうとしたのによ」


『イラッ』キャプテンの言葉にその場にいたタロウ・ジロウ・サイゼは怒りを露わにした。


「やめてくださいよ」「彼らも一応、我らの傘下なんですから」「仲間割れはやめましょう」


「こんな奴仲間じゃない!」「一緒にするな」タロウはジロウとサイゼに抑えられ、キャプテンに襲い掛かるのを静止させられた。


「二人ともやめてください」「…!?」「そこに居るのはゼント?」「久しぶりだな」


「…久しぶりですね!先輩」何と、赤スーツとゼントは顔見知りの様だ。


赤スーツがゆっくりゼントの前に歩み寄って来た「相変わらず強そうだな」「そんなお前が話の分かる人間で良かったよ」


「…」彼の言葉に何も返事をしないゼント。


「身長伸びたな。一段と兄さんに似てきたな」「…」赤スーツはゼントに背を向けると、立ち止まっていたカーさんの元へ戻ってきた。


「行きましょうか?マスター?」


「ちょっと時間をくれないか?」「!?」「アイツらに卒業試験合格の祝いの言葉を掛けてあげたいんだ」


「…」「分かりました」「手短にお願いします」

「もちろんだ」赤スーツにそう告げると、カーさんはタロウ達の前に近づいて来た。


「タロウ・ジロウ・サイゼ」「DOJO卒業試験!合格おめでとう」「塔の屋上でお前達の頑張りを見せさて貰ったよ」


「この2年間で良くここまで昇り詰めた」「お前達はこの『シーワン』の名を背負う程まで成長してくれた」


「お前達は最初で最後のイカしたワシの弟子だよ」『ニッコリ』


「カーさん…」「…カー」「…カーちゃん」カーさんの言葉に3人は、感情を揺さぶれれた。


「今日を持ってお前達は自由の身だ」「自分達の好きな様に、世界に飛び出して行け」「…だからワシの事は気にするな」

「自分の事は自分で何とかする」


「…あと、チョコによろしく言っといてくれ」「チョコには辛い思いを味あわせてしまった」

「伝えてくれないか…すまな…」


「自分で言えよ!!」カーさんの言葉を、タロウが食い気味に話を堰き止めた。「それ!自分で伝えてくれないかな?」


「オレ達に背負わせないでくれよ」


「背負わせるか…」カーさんはタロウの言葉に動揺してしまった。


「オレはもう自由なんだろ?」「そしてシーワンの一員になったんだろ?」「なら!オレの意志でカーを助けに行くよ」

「直ぐに体力を回復させて、捕まったカーの元へ向かうよ」「今度は負けない」タロウは海岸で酒を飲んでいるキャプテン・ブラックの事を睨みつけた。


「オレ達はもう仲間だ」「同じシーワンの仲間である、カーを助けるのは仲間として当然だ!!」


タロウの言葉に、カーさんは何かを確信した。カーさんは徐に吸っていたタバコをその場に捨てた「分かった!」


「じゃあお言葉に甘えさせて貰うわ」「ワシを助けに来い!!」


「それまで、ワシは大好きなタバコを止める」カーさんはタロウの言葉で吹っ切れた様子だった。


「ひとつ大事な事を伝えとく」「ワシを助けると言う事は、命の奪い合いをする戦いに参戦すると言う事だ」「それを理解した上で助けに来い」


「大丈夫!もう覚悟は出来てる」「だってオレ!他にやる事ないしな」


「…わはははは」「タロウ!お前って奴は」「本当に面白い奴だよ」タロウのあっけらかんとした態度に自然と笑顔が溢れてしまうカーさんであった。


「所で他の二人は…」「その表情からすると」「タロウと同じ様だな」「まあー」「本気でワシを助けに来たいなら、後でゼントに色々と聞いておけ」


「じゃあ…あとは頼むは、ゼント!」「…はい」カーさんの含みのある言葉をゼントは素直に受け取った。


カーさんはそのあと、何も語らず赤スーツの元へ戻っていった。

赤スーツは海岸で寝転んでいるブラックの前にやって来ると。ブラックはゆっくりと起き上がると、力強く指を鳴らした。


「ドドド」「バッシャンー」大きな波飛沫を上げ、海中から潜水艦が突如姿を現した。


「こんな物が開発されていたのか」流石のゼントも予想外の展開に、少しだけ面食らった様子だった。


『ヒュー…パッタ』潜水艦の中に入っていく赤スーツとカーさん。最後にブラックが入ろうとした瞬間…


「お前達が攻めて来るのならオレ達『シーファントム』は容赦はしないぞ」「今度は手加減できなえ〜ぞ」


「ベーっ!」ブラックに向けて『あっかんべー』とするタロウ。


「ムカつくやるだ…」「馬鹿野郎!」そう告げると、ブラックは颯爽と潜水艦に乗り込み。あっという間に島から姿を消していった…


「一旦、塔に帰ろう」「話の続きはそれからだよ」ゼントの号令で3人は、本拠地である塔に戻って行った…


『ヒュー…バッタン』タロウ達は塔の扉を開くと、チョコが泣きながらタロウ達に飛びついてきた。


「無事で帰って来てくれた〜」「心配したんだぞ」チョコは一人でタロウ達の帰りを待ち侘びていた。


「イテテ」「体重乗せないでくれよ?」「傷に響くだろ」タロウはチョコに抱きつかれて、今日1日で作った傷に追い打ちを掛けられてしまった。


「チョコちゃん!泣いてる所、悪いけど料理作るの手伝ってくれる?」


「おい!こんな時に飯なんて食ってられるか?」ゼントの言動に、ジロウは意味が理解出来なかった。


「さっきの話の続きは、今日はもうしないよ!」「君達は、明日カーさんを助けにプラヴァス社に出向いて貰うから」


「今日は食事を取るのと、明日出かけるための準備をしてもらうよ」「とりあえず、君達が持ってきた食材を全て渡してくれるかな?」タロウ達はゼントの言葉を渋々聞き入れ、手に入れていた食材をゼントに渡した。


ゼントは料理を作りながら、隣で食事作りのサポートをしてくれているチョコに海岸で起きた出来事を説明した。


「…そんな事が起きていたの?」「…私もカーさんを助けに行きたい」

「…」



「ゼント君が私を止めたい気持ちは分かるけど」「私の覚悟を呑んでほしい」



「…うん」チョコの真剣な表情と覚悟を汲み取り、ただただ頷く事しか出来なかったゼント。


そうこうしていると、熱々の料理がタロウ達の前に運ばれて来た。


「さあ!冷めないうちに召し上がれ」ゼントの食事の合図に従い、食事に手を付ける3人。『ガッツガッツ!』

それに遅れて、ゼントとチョコも食事を済ませた。『ムシャムシャ』


「フー食った食った」一瞬のうちに大量の食べ物を消費し、お腹がはち切れそうなタロウ達…そんな彼らに、ゼントはある事を指示した。


「今から君達3人!」「立ち上がってくれるかな?」ゼントの指示で椅子から立ち上がる3人。


「大きく息を吸い込んで」肺に大量の空気を注入する3人「息を止めながら、熱気を練るんだ」「そして、息を吐きながら熱気を消費するんだ」ゼントの指示を見よう見真似で試してみる3人。



『ゴゴゴゴゴ』すると、膨れていた3人のお腹が一瞬でへっこみ。タロウ達の傷が一瞬で無くなっていった。


「な…なんだこの湧き上がる力は?」凄まじい回復と体力向上に驚くことしか出来ない3人。


「君達は今、この島の全てのエネルギーを体内に宿した」「そして君達の身体は、超進化と超回復で己の細胞が超活性したんだ」


「そして今、君達はこの島の新たな王になったんだ」「それはこの島の食物連鎖の王に与えられる祝福なんだよ」



「…」「凄い…」「体の底からエネルギーが満ち溢れてくる」タロウ達は、自分達の進化に驚く事しか出来なかった。


「まだその力に体が慣れるまで時間がかかると思うよ」「だから、今から明日の朝まで自由時間だ」「各々で明日の準備をしとくといいよ」




各々は期待と不安を胸に、それぞれ明日の旅立ちに向けて準備を開始した…


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