王太子と勇者は一途でした
この章で終わります。
拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。
どんなに抑えようとしても、グレンから噴き出す魔力の闇は次第に大きく広がり濃密さも増していく。グレンは「落ち着け」と自分に呟きながら、力を理性で無理矢理制御し続ける。あまりにも強すぎる魔力の拡散は、生き物にも大地にも悪影響を与えてしまう。
ハルーカの身体をこの国の強い魔力に慣れさせるためと、戦場にいることを知られたくなかったため、魔王城に残しておいたのだ。だが自分の傍にいればこんな事態にはならなかったと、それも後悔になる。
遠方の戦場から魔王城へと数日ぶりに帰る途中で、ハルーカの気配が掴めなくなったことにグレンは気付いた。いつもなら城に近付くにつれて、小さくとも優しい温かな輝きが自分を照らしていくのを感じるのに、ふいに灯りが消えるように無くなったのだ。
「グレン、ハルーカが城からも国からも消えた!私にも気配が掴めぬ、おそらくは眠らされて連れ出されたのだろう」
「申し訳ありません、私がお一人にしたばかりに…。グレン様を綺麗にしたお城で出迎えたいと言われ、手分けしてお掃除を…」
部下を置き去りにして馬を駆り、息を乱してなりふり構わぬ有様で執務室に駆け込んできた弟に、慌てた様子で魔王が告げた。専属侍女のエマも申し訳なさそうに泣いている。
国境と城に張り巡らされている魔王の結界の隙間を掻い潜った者が動いたのだ。ハルーカが趣味の廊下掃除をしている間に、大胆にも誰かが城に忍び込み、ハルーカを連れ出したらしい。
「城内なら大丈夫、と安心し油断していた。済まぬ。城の周囲に張った私の力をこっそり潜り抜けるとは、何者じゃ?」
「勇者か、聖女の仕業だ…。勇者は戦場にいた。おそらくは聖女の方だろう…。俺としたことが陽動に引っかかるとは。道理であっさり撤退したはずだ、おかしいとは思っていた」
廊下にはハルーカの敬愛するノンタ村の民について急を知らせる手紙が落ちていて、その手紙には数人の魔力の残渣が染みついている。『重病』の言葉で激しく動揺させ、何らかの罠にでも掛けたのか。その魔力の残渣から、聖女と戦場で何度か戦った数人の魔術師の仕業と分かる。特に聖女の力が大きい。どうやってこの手紙をここに届けられたのか分からない。誰か邪な者が入り込めば、魔王には検知できるはずだった。
誰かのために存在したいというグレンの願いを叶えたかのように、突然現れた温かな魔力の輝きがハルーカだった。魔王の結界を出て必死にその輝き探し出し、人に成りすまして信頼を得た。彼女の自分を強く求める心が、グレンをこの世に実体として止めてくれる。彼女の魔力だけでなく、その自分を想う一途な心がグレンを鷲掴みにしたのだ。もはや手放すわけにはいかない。
「姉上、もう奴らに手加減はしません。ハルーカを取り戻すため、結界の外へ出る」
「そなたの力を抑えず、そのままか?下手すると各地の『歪み点』を刺激して、魔獣の大量発生を引き起こす可能性があるぞ。私の制御の魔力域はこの国までしか及ばぬし、抑えは効かぬ」
「そんなこと、俺が知ったことか!戦を仕掛けるくらいなんだ、己が力で何とかすればいい!ハルーカは俺のものだ、俺のものだ、俺のものだ!必ず取り戻す!」
普段は何事にも興味を示さず『冷たい霧』とも言われた弟が、ハルーカに執着しすぎるあまり、すっかり熱く逆上している。かつてない弟の怒気溢れる様に不安を覚えた。己の全力を隣国にぶつけるだろう。
弟のせいで国内の魔力の波動の安定化に全力を注がねばならない魔王は、ここを動けない。強力な力を持つと言われる勇者と聖女がいるだけに、却って争いの力は大きくなり、隣国は甚大な被害を被るだろう。ハルーカが抑えになってくれればよいが、と祈らずにはいられない。
グレンは国境の結界を抜けると、最大限の魔力の波を隣国へと撃ち放ち、ハルーカの光のような気配を捕らえようとした。それは黒い闇のような霧となって広がり、当たり一帯の空気を押し潰すかのように振動させて人々を恐怖の底に陥れた。
何度も何度も魔力の波を放つが、何も引っかかってこない。自分を温かく包み捕らえるハルーカの存在を感じられない。だが、不自然なほどに何も感じられない、波を避ける「無」の地点があることに、ふとグレンは気付いた。
聖女の結界?さすがだが、その程度の力ではハルーカの魔力を隠すことできても、グレンの力からは逃れることはできない。傍にいる勇者といえども同じだ。
グレンは闇の霧に姿を変え、「無」の地点へと急ぎ向かった。
突然、王太子の一行は、ビリビリと振動する魔力の波動に押し迫られつぶされそうになった。騎士達は魔力の恐怖におびえる馬から慌てて下馬し、宥めるだけで精一杯になる。レンドールが確認したところ、聖女を始め魔力に敏感な何人かはかなり辛そうだが、意識を失うほどではない。移動しながらも、魔獣対策にと弱く張っていた聖女の結界の力のおかげだ。
「リサ、結界の強度を上げろ!聖女の力なら対抗できるはずだ。ヴァイスもリサに協力しろ!騎士はできるだけリサの周囲に集まれ!結界の領域をギリギリまで小さくするんだ」
レンドールの的確な指示に従い、騎士達は怯える馬を引き、リサの周囲に集まり護衛体制をとる。
リサの結界の強度が上げられたらしく、皆、圧迫感が弱まり心持ち体が楽になる。
「マジ重い~、キツイんですけど~。あたし独りじゃムリ~。ヴァイス様、助けてよ~」
「リサ殿、言われなくても加勢はしております。シーゲ殿と騎士は戦いに備えて下さい!すぐに聖女の結界に『幻霧』は気付くと思われます!殿下、ご注意ください。奴が近付いてきます!」
急ぎリサとヴァイスの二人で魔力を合わせ、結界の強度を上げて隊列周囲に展開し、強力な魔力の重圧に耐える。おかげで騎士達の圧迫感は弱まり、心持ち体が楽になる。だが、レンドールが見るところ、宮廷内で一、二を争う強力な魔力を持つヴァイスでも、『幻霧』の魔力に対抗するのは辛そうだった。
周りは苦し気に騒いでいるが、実は春香には何が辛いのか分からなかった。何やら波のようなものは感じていたが、別に自分には何ともない。それは春香には慣れたグレンの魔力で、春香自身が毎日愛おしんで包み込んで(捕まえて)いたものだったからかもしれない。
「ハルーカ殿、大事ないか?魔力の波動が治まらず危険だ。もっとこちらへ寄られよ」
「王太子様こそ、大丈夫ですか?頬が紅いようですが、ご気分が悪いのでは?」
魔力の圧迫感から倒れないようにと、安全のため下馬していた。その騒ぎのドサクサに王太子が春香を守るためと称して、背後から片腕で抱き、反対側の手には剣を握っている。グレンの魔力に慣れている春香なので、フラフラする王太子とは異なり、特に足元がおぼつかない訳でない。これではどちらが支えているのか分からないと春香は思う。
ドドーン!と雷が落ちたかのような大きな音と大地を揺るがす振動がした。それが隊列の周辺で何度も繰り返され、更に薄暗い霧が満ちてきた。この辺りだけに集中的に何かが襲い掛かっている。
「ハルーカ!無事か!」
「グレン、どこ!」
霧の中から春香を心配するグレンの声が聞こえてきて、黒い霧がその素敵な愛しい美丈夫な姿を形作った。艶やかな黒髪、切れ長のグレーの瞳。久しぶりに会えたグレンに胸がときめき、素敵と酔ったようにため息がでる。
「うわ!近くで見ると、めちゃくちゃイケメンじゃん!」
誰か女性(おそらく聖女)の感想に全面的に同意しつつ、春香はその腕に飛び込もうと駆け出そうとしたが、誰かが胴を抱いて引き止めた。
「ハルーカ殿、あれは人ではない。ダメだ、近付いてはならぬ!行くな、行かないでくれ!私と共にいてほしいのだ」
「はあ?突然、何言ってんですか?王太子様には関係ないでしょ。離して!グレンのところに帰るんだから!」
逃がさない、とばかりにレンドールの腕に更に力がこもり、春香は背後から強く抱きしめられた。グレンから一歩でも離そうと、そのまま後ろへと引きずられる。
「貴様、ハルーカを離せ!」
「貴様こそ、我々に近付くな!シーゲ、頼む!」
春香に抱きつく男を引き離そうと駆け寄るグレンに、勇者シーゲが剣で討ちかかる。仲間であるレンドールに近寄らせるわけにはいかない。
すかさずグレンも剣を抜き放って、勇者の最初の一撃を難なく受け流した。二人は何度も激しく剣を撃ち交わす。シーゲも伊達に勇者として呼ばれたわけでないことを示す、激しい戦いになった。
近距離のため重圧感を増したグレンの魔力波動により、騎士達は押し潰されたかのように動けずにいる。こんな中で、動けるのは強力な魔力を持つ聖女と勇者のみ。シーゲに加勢するため、魔力波動に抵抗する防御魔法をヴァイスも発動する。
ヴァイスにとって不本意な展開だった。本来の計画ではハルーカを『幻霧』に穏便に引き渡すことで、友好関係を築き、戦争終結の一歩を進めるはずだった。しかし、思い込んだら一直線のレンドール王太子が、ハルーカに対し依存にも似た強い執心を持ってしまったために、恋人の奪い合いみたいな状況になってしまったのだ。昨夜の国を想う神聖な忠誠と友情のシーンは何だったのか。畏れ多くも、王太子に対し『何やってんだ、このバカ!』と怒鳴りつけたくなった。
なぜか突然レンドールに強く慕われ春香も困っていた。このまま抱きつかれていては、グレンにも誤解されかねない。それに早く戦いを止めさせないと、大事なグレンも茂雄少年も負傷してしまいそうだ。
ギュッと抱きしめてくる腕を振り払うために、せーの、と『瞬間パワー』を発揮するため気合を入れる。だが、突然、リサが春香を体当たりするかのように両手で突き飛ばしてきた。倒れそうになるのを抱きついているレンドールが支える。
「ちょっと、おばさん!いつまで王太子様にくっついてんのよ!あたしの王子様よ、離れて!」
「くっついてるのは私じゃなくて…」
「うるさい!邪魔なのよ!」
春香の言い訳も耳に入らなかったのか、嫉妬でヒステリックな怒りに満ちた聖女が、春香を引っ叩こうと腕を腕を振りあげている。春香は『見た』。その時、世界の動きは、全てスローモーションに変わった。
『瞬間パワー』を発動させる。身体にギュッと巻き付く腕を解き、ゆっくり振り下ろされる細い腕を避け、剣で戦う二人に駆け寄り、グレンを守るために茂雄少年の剣を側面からで打ち払う。剣が少年の手からゆっくり離れていく。愛しいグレンに抱きつこうとしたところで、世界のスピードは元に戻った。
ガチャン!と茂雄少年の剣が地面へ転がり、いつ剣を手放したのか認識できない。リサの腕も空振りに終わった。
「姐御、今何やったんだ?どうして俺の剣が…?」
「ハルーカ殿…。どうして奴の所に?」
レンドールも茂雄少年もリサも、一瞬の内に何が起きたのか理解できずに、呆然と立ち尽くしていた。
「ハルーカ…、危ないまねは止めろといつも言っている」
「グレン!」
春香は泣きたくなった。もう、周りのことなんか耳にも入らない。グレンの気遣う優しい声だけが聞こえる。
声がして、確かにここにいるのに、グレンに触れることが、抱きつくことができなかったのだ。見えるのに、霧を掴むかのように実体が無い。リサの聖女の力が込められた首輪や腕輪が、大事な『捕縛魔法』の発動を妨げている。好きでもない相手に抱きつかれたのに、好きな相手には触れることもできない。これではグレンが、以前の触れられない夢の『樹君』と同じ存在になってしまったかのようだった。
グレンが、実体の無い霧の姿のまま春香の頬を撫でる。優しい風が吹いたような感触しかない。涙がこぼれる。
「ハルーカ、泣くな、泣かなくていい。…おい、そこの聖女、お前の力だな。この封印を外せ!」
「…何で、あたしがその女を助けなくちゃならないのよ!冗談じゃないわ!」
「しなければ、お前も、そこの男も押しつぶす!ハルーカ以外は、手加減無しだ!少しずつ絞めてやるぞ!」
再びグレンの魔力波動が重圧感を増した。さすがの勇者も聖女も立っていられなくなり、蹲ってしまった。レンドールもヴァイスも騎士達も聖女の結界や防御魔法の効果も無く、巨大な獣に踏み圧し掛かられているかのように、既に地面に伏して息苦しさに喘いでいる。このまま圧死を迎えそうだった。
「わ、分かった…から、い、息を…させて…。外すから…」
「ゴリラと、魔、魔王だ…。あ…いつ、こそ、魔王だ」
「ハルーカ殿…、ハルーカ殿…。」
茂雄少年にとって幸いにも、侮辱的な呟きは息苦しさで非常に小さかったため、春香には聞こえなかった。
苦しそうに喘ぐ茂雄少年をみて、春香は可哀想になった(セクハラしたレンドールは目に入らない)。呟いていた内容は不明だが、牢から脱出するのに手を貸してくれたのだ、借りを返したい。
「グレン、お願い、助けてあげて。この人たちは私を攫った人じゃないのよ(一部違うけど)、良くもしてくれたの」
「…聖女がお前を開放するなら。さあ、どうする、聖女!それともお前だけ圧死するか?」
ハルーカの懇願に負け、グレンは聖女以外の重圧を少し軽くし、リサには強く封印開放を促す。
リサは忌々しそうに睨んでいるが、苦しさのあまり観念したようだ。ピシッとひび割れる音がして、春香の首と腕から輪が崩れ落ちた。その途端、春香は自分の身体から何かの力が噴き出すのを感じた。
周りも急にグレンの重圧から解放されて、四つん這いで身を起こしつつ、新鮮な空気を吸い込もうと咳き込んでいる。
「もう泣かなくていい。帰るぞ。姉上も、エマも待っている」
「そうね。一緒に帰りましょう。ずっと会えなくて寂しかった…」
グレンの指が優しく涙を拭った。実体がある!と感じるまま、春香はグレンに抱きついた。抱きつくことができた。グレンもそっと春香を横抱きにし、感触を確かめるように春香の頭に頬を摺り寄せる。ようやく愛しいグレンの元に戻れたとはいえ、レンドールを始めする面々に見られるには、あまりに恥ずかしい仕草だった。思わず顔が紅くなる。
「レンドール様、私、帰りますね。いろいろ、迷惑をかけてしまって済みませんでした」
「ハルーカ殿、行くな。あんな魔獣だらけの国で、か弱いそなたは生きては行けない。この国にいるならば、私が全力で守ると誓う。お願いだ」
「ごめんなさい、私はグレンの傍にいたいんです。どんな危険があっても彼から離れるなんてできない」
「余計な心配だ!ハルーカに危険は無い!…魔獣が溢れているのはこの国の方だ。迷惑にも我が国の魔法石鉱山を狙う前に、少しは魔獣について調べろ!」
いい加減ウンザリしたグレンが語るには、魔獣は大地から噴き出す『魔力の歪み点』から現れるそうだ。その『歪み点』は、聖女の力なら抑えられるはずで、既にあふれ出ている魔獣は勇者が討伐すればよい。そうすれば魔力のエネルギー源になる魔鉱石も手に入る。それが聖女や勇者の本来の役目。
グレンの国では云わば魔王陛下が『聖女』であり、その力を以って国内の『歪み点』を制御しているから魔獣数も少なく、意図的に使役するための魔獣しかいない。だから国内は安定しているのだという。
グレンの語る真実に、皆、愕然とした。勇者と聖女の召喚本来の意味。これまでは平和のために魔王を討つと言われてきたのだ。それにより、魔王が操る魔獣も殲滅するからと。
春香はようやくグレンと城に帰ってこられた。魔王様もエマも、陰ながらメイド長も、泣いて二人の無事の帰城を喜んでくれた。
その夜、春香のベッドに忍び込んできたグレンが、レンドールに触れられたところを清めると言って、触れてきた。ハルーカに触れるのはとても気持ち良いといって触れ、春香を気持ちよくさせてくれた。やっぱり昼に起きることになり、グレンの満足げな顔を枕で殴ってやった。
魔王様は、盛大な結婚式を挙げようと言ってくれている。エマも準備に大張り切りだ。
迷惑な魔王国のカップル二人が帰ったあと、ヴァイスは傷心に涙する王太子を慰めつつ叱咤激励し、政権争いを開始した。
国王の無茶な隣国侵攻に疲弊していた宮廷内は、度重なる侵攻の責任を追及することで、あっさり国王や戦争賛成派を引退させることができた。本当は国王自身も重圧にウンザリしていたのかもしれない。
王座についたレンドールの命により、正式に隣国との戦争は終結され、ハルーカから魔王への進言もあって友好を築いていく。
愛するレンドールのために聖女が『歪み点』を見つけては封じ、勇者が国中のあふれ出た魔獣を討っていく。国内は急速に安定化し、経済も発展しつつあった。
お礼状と称したレンドールの熱心な書状、『また会って話がしたい』『友好会談でいいから会いたい』『あなたの無事をこの目で確かめたい』といった内容が、何通もハルーカ宛に届けられた。その書状をはるばる魔王の国まで気安く持ってきてくれるのは、ハルーカの弟分になった勇者の茂雄少年だ。
茂雄少年は愛嬌があるためか、『可愛い奴』と魔王になぜか気に入られ歓迎された。堅苦しさの無い魔王城にいる間は、魔王様の『創造力』で作ってもらった特別室『ハルーカの間』(畳敷きの土足禁止)で、実家に帰った息子のようにダラダラ転がって過ごしていく。新宰相ヴァイスに魔獣討伐でこき使われると、ここで休みたくなるらしい。春香は日本を恋しがる少年をこの特別室に招き、好きなように過ごさせた。
レンドールの書状をグレンが読むと腹を立てるので、内心、迷惑な手紙だった。レンドールに会いに出かけるなど認めん、と嫉妬深いグレンにより結婚式が終わるまで、ハルーカは隣国へ正式な訪問はできなかった。
シーゲが持ち帰るハルーカからの『残念ながら…』の返信を読むたびに、レンドール王は涙しため息をつく。新宰相ヴァイスに呆れられた。たまにハルーカがグレンと共にノンタ村にこっそりお忍びで帰省していることは、ヴァイスだけが知っていた。
ふと、ノンタ村で春香は思った。魔王様の国で、魔王様が『聖女』なら、ひょっとしてグレンは『勇者』なのかしら?ノンタ村のおばあちゃん達が期待してた通りの『美形の勇者』だ。私はその文句無しの美形の勇者を拝むどころか、捕まえたんだわ。




