生きるか死ぬか
お久しぶりです!
リアルでちょっとイロイロあって投稿できませんでした・・・・。
中途半端なところから書いたからちょっと変かもしれませんが・・・。
ほんの数分前まで和気藹々としていた雰囲気は霧散してし、辺りには緊張の色が走った。
それぞれが武器を構え、油断なく前方を睨みつけている。
「ちょっと・・・ギーズってのはこっちが仕掛けない限り襲ってこないんじゃなかったの?」
「そのはずなんだがな・・・・どうやら最近は趣旨変えをしたらしい」
「んなことどうでもいいだろうが!どうすんだよ!?」
「少なくともあちらは逃がしてはくれないみたいですね・・・・」
さっきまで数百メートル先にいたギーズ達はその勢いが衰えることなく走り続け、残り数十メートルほど前まで迫ってきていた。
肌を刺すようなピリピリとした
緊張が辺りに張り詰めた。
出来れば戦闘は避けたかった・・・、自分に果たして魔物を殺せるのかが分からない。
「クレメンス、殺さずにとかって・・・」
「無理だ、見たくないなら目でも瞑ってろ・・・邪魔だ」
まるで取りつく島もなく一刀両断に言い切られ、息を呑んだ。
その通りだろう。
いくらクレメンスが強かろうと、あの数を相手に・・・ましては足手纏いを庇いながら戦闘はできない。
ならば、腹を括るしかあるまい。
「ごめん、・・・大丈夫だから」
これ以上甘える訳にもいかない、いずれは通らなくては行けない道、この世界で生きていくと決めた時に覚悟したはずだ。
ならばせめて今は足手纏いにはならないようにしよう。
「死なないように気をつけろ」
「ん、わかった」
返事と同時にエノーラの魔術が発動された。
それは攻撃用の中級魔術とよばれるもので、火球を生み出し、炸裂させると言うものだ。
エノーラの前にサッカーボール程の大きさの火球が5つ作り出され、真っ直ぐ突っ込んでいった。
ギーズの群れに火球が炸裂した。
「グギャアアアアアアッ!!」
4頭のギーズが苦痛の声を上げて地面でののたうち回る、それでも怯まずに残りのギーズが走る。
「そんなっ!」
いったい何に驚いたのか、エノーラが悲鳴を上げる。
「次だ!!」
言いつつクレメンスはギーズの群れに向かって走る。ワンテンポ遅れてカインが後を追う。
無論ルミカもただ茫然としていたわけではない。
すぐさま魔術を展開させた。
前回ギーズの動きを止めるために使用した木の魔術だ。
ただし、前回のものとは違い、今回は鶴の太さが細いものの複数本を作り出して三匹のギーズを捕らえた。
動きを止められたギーズはうなり声を上げながらその鋭い牙と爪で蔦を千切ろうとしているが、そうして抵抗するにつれて蔦の数が増えて動きをさらに制限していく。
その間にもクレメンスとカインの二人がギーズを切り捨てていく。
あたりに鉄錆の臭いが充満し始める。
ルミカは一瞬息をつめたが、首を振りかぶるとまた魔術を展開させた。
今は、気にしてはいけない。
今は、生きるか、死ぬか、だ。
今は、まだ、死ぬわけには行かない。
戦闘はクレメンスがほぼ一閃で切り捨てるだけの実力を持っているものあるが、カインもなかなかの腕前であったので、ルミカやエノーラのもとにはギーズは一匹も近づくことはできなかった。
ギーズ達も実力差に気がついたのだろう、先ほどまでの勢いのある攻撃が止み始めた。
しかし、それでも攻撃が止まったわけではなかった。
「くっそ、斬ってもキリがねぇ!!」
また一匹を血の池に沈めながらカインが叫ぶ。
剣は血油がこびりつき、その刀身が手から滑りそうになるのか、自らの服で血をぬぐう。
「二人とも下がって下さい!」
エノーラの声に反射的に飛び退いた二人の間を、鋭く尖った岩がギーズに向かって突き刺さる。
あるギーズは岩によって頭蓋が砕かれ、頭に突き刺さり、血が噴き出し。
またあるギーズは足を地面に縫い付けられる。
それでもなおギーズは攻撃の手を緩めようとはしなかった。
「おかしい」
「普通ではありませんね・・・」
クレメンスの呟きにエノーラが同意をするが、理由が分からない二人はサッパリだった。
「何がだよ、あぁくそっ、気持ちわりぃ!」
こびりついた返り血を剣を振って振り払ったカ,インは悪態を吐きつつ聞いた。
「ギーズは本来慎重な魔物です。ある程度の…それこそ最初の魔術があたった時点で普通なら逃げています」
「これだけの被害を出してなお向かってくるなんて異常としか考えられん」
「ど、うするんだ?」
「向かってくるなら斬るだけだ、それ意外無い」
きっぱりと言い切ったクレメンスに小さくエノーラが頷いた。
その間ルミカは無駄口をひとつも漏らさずに魔術を繰り出していた。
なんてことはない。
口を開いたら胃からせり上がって来たものをぶちまけてしまいそうだったからだ。
辺りに充満する、むっとした鉄錆のような臭い、地面に飛び散る赤の絨毯、転がる死体と肉塊、怨嗟のような鳴き声そのどれもがルミカに衝撃を与えていた。
あちらの世界では恐らく一生見ることがなかった光景。
これがこの世界では普通に繰り広げられている光景。
こちら と あちら その違いをまざまざと見せ付けられた。
自分のいた世界がどれほど平和で、安全な世界だったのか、分かっていたはずだった。
しかして、それは本当にわかっていた《はず》でしかないものだと今心の底から理解したのだった。
「っつ!!」
そんな思いが頭を巡っていたルミカは、嫌な予感がして大きく前に飛んだ。
慌てて今の今までいたところにを振り返るとギーズの爪が突き刺さっていた。
間髪入れずにもう一度魔術を展開させるが、ギーズはうまくかわすとジリジリと距離をつめてきた。
助けを求めようにも他の皆も他のギーズを相手にするので手一杯で動きが取れない。
ほぼ無意識のうちに手が柄にかかり、刀を引き抜いていた。
死ぬわけには、いかない。
震える体を無視して、ルミカは向かってくるギーズに刀を向けた。
ギーズが吼える、飛び掛る、鋭い爪と牙がまるでスローモーションのように感じられる。
本当に自分の体が自分のものでないような感覚、振り下ろされる爪、それを勝手に体が反応する。
「っあ!!」
手から伝わってくる鈍い感覚、ブツリと肉を切裂き、硬い骨までを刀身が断つ感触、噴出す血、血、血・・・・ビクリと魚のように痙攣するギーズの体、生気が次第に奪われていくその目、全てが、恐ろしいほどに生々しかった。
呆然とし、思わず刀から手を離した。
真紅に染まった両手を見つめる。
途端に理解する。
「あっ・・・っわたし・・・ころし、た?」
まるで、自分の周りだけ現実から切り離されたかのように、周りから一切の雑音が消え、周囲の光景が輪郭を失っていく。
血の気が失われるというそれを恐らく体験しているのだろう。
頭が妙に冷えて、温度という温度が体から失われていく、そんな、感覚。
ドンッ!
突然体を衝撃が襲う。
前のめりになりながらも辛うじて倒れることは無かった。
その瞬間、ルミカの意識は浮上した。
「しっかりしろよ!」
「・・・・・っ!カイン!」
声が聞こえたかと思うと、クリアになった視界の前に血に塗れた剣を振るうカインの姿があった。
「あっ、ごめ・・・・・」
「とにかく、今は死なないように上手く避けるだけ避けとけ、後は、なんとかするから」
そう男前でカッコいいことを言ってくれたカインだが体力的に限界なのか、若干手元が震えて怪しくなっている。
無傷とは言い難い様子であちことにかすり傷が目立っている。
(何やってんだかなぁ、私)
こんなに一生懸命助けてくれようとする人達がいるのに、何を自失していたのか。
今だけは、何も考えまい。
倫理だとか、道徳だとか、そんなものは後で考えて、後悔すれば良い。
今は、優しいこの人達を守る力を、自分の出来る事を、するしかない。
「カイン、どいて!」
「ああっ?!なんだっ・・・」
「でっかいの、いくわよ!」
宣言どおり、ルミカの頭上に魔術が展開させれる。
エノーラが使ったのと同じ物だったソレは以前ルミカが作ったぐらい大きな、火球であった。
唖然とソレを見たカインは、顔色を変えて逃げた。
「そ〜れっ!!」
少々間抜けな掛け声と共に投げられられた火球は、残っていたギーズや死体をも巻き込んだ。
正に一瞬の出来事だった。一瞬にして、ギーズと死体が灰になったのだった。
残りのギーズはもはや3匹、しかし、先程の異様な魔術に恐れをなしたのかまさしく尻尾を巻いて逃げたのだった。
「お、終わった?」
「終わった?じゃねぇぇぇぇぇっっっ!!!お前俺を殺す気か!?」
いち早く立ち直ったカインはルミカに最大級のツッコミを入れた。
あと少し反応するのが遅ければ、確実にカインも炭に姿をかえていただろう。
「だから、ちゃんとどいてって言ったじゃないの」
「言った時点で魔術ぶっぱなす気満々だったよなっ!?」
「ちゃんと避けたの確認してからやったわよ?」
「・・・・本当だろうな」
「本当に決まってるじゃないの♡イヤぁねぇカインったら」
疑いの眼差しを向けてくるカインに否定してから、ルミカは小さく溜息を吐いた。
「ルミカ」
「ん?あっ!怪我は無い、エノーラ クレメンス?」
「ええ、なんとか大きな怪我はどこも」
「そっか、良かった・・・」
みんな無事であった、それなのにエノーラの表情は冴えない、魔術の使いすぎで疲れているのだろうか?首を傾げるルミかを彼女は急に抱きしめてきたのだ。
「えっ?何、どうかしたのエノーラ?」
「・・・・・・・・」
無言で抱きしめていた彼女は、まるで子供をあやすかのようにポンポンと背中を叩いた。
服越しにじんわりと熱がルミカへと移ってくる。
ここで初めての自分体温が非常に低くなっていたことに気がついた。
移ってくる体温に震えた。
「大丈夫です、もう、終わりましたよ」
途端に息が詰まる。
「すみません、怖かったですよね」
「っ・・・・・な、に」
動揺を隠しきれなかったのが丸わかりなほど震えた声だった。
「ありがとうございます、でも、もう終わったんですよ」
その一言を聞いた瞬間、急に目から涙が溢れてきた。
鼻がツンっと痛みだし、嗚咽が漏れ始めた。
ここが何処かだとか、他に人がいるだとか、そんなことは頭から吹っ飛んだ。
ただ、怖かった。
あっちで死んだ時は急な事故で、死の恐怖なんて感じることは無かった。
それが目の前に突きつけられた時、怖くて仕方なかった。
死にたく、無かった。
例え、それが他の命を奪うことになったとしても、死にたく無かったのだ。
そんな自己中心的な自分を守る為に他の誰かが傷つくのが怖かった。
なのに、どうして自分に向かって 「ありがとう」 だなんてお礼なんて言うのだろうか。
混乱してグチャグチャになった頭ではこれ以上の思考がまとまらず、ルミカは嗚咽を漏らし続けた。
さて、王道な「やっちまった!」展開ですね。
書いててなんて王道なんだ!とは思ったのですが、基本王道なので仕方ないですね!ちなみにこの後はほとんどウジウジ展開はありません、鬱陶しいのでw
ルミカにはさくっと慣れてもらいますww
できるならさっさと楽しいパートに行きたいところですね~。
ではでは、また今度!次回更新は未定で・・・・さーせん!