表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

episode1.そして神々が滅びし時から....。

初めまして。つき夜好きと言います。

数ある恋愛ファンタジー小説の中からこの一冊を選んでいただき、

本当にうれしく思います。

この小説は私自身自分の作品の中で一番力を入れなおかつ、

一番キャラクター達に愛情を抱いている作品でもあります。

皆さんも、もし、私あるいは俺はこのキャラが好きだ!と言うキャラに

巡り合えたなら、ぜひ感想などをいただけると私は嬉しいです。

≪すまない。≫


銀色の髪をした男が、息を詰まらせその頬から、

流れる涙は、純白に輝く光と、漆黒に輝く光とが、交互に揺らめくその床に落ちて行く。

すると、その床からは、次から次へと、草花が咲き乱れ、そして散っていき灰となる。


≪すまない。≫

その謝罪の声は、とてつもなく広い、広いその宮殿の空間に児玉し

時折、老若男女問わず美しい歌声が泣いて居る男を包み込んで居る様に優しく響く。


≪我が涙。我が、そなたを。≫

男は震える唇をかみしめる。

≪我が・・・っ。そなたを・・。殺した。≫


------------


古の神々達は罪を犯した。

その瞬間、美しかった緑は徐々に枯れて行くと、爽やかなミントの様な風は

生暖かくじめじめとした気持ちが悪いものとなりやがては人から全てを奪う嵐となった。

そして、熱く、湿けも、無い空気に変わると、とても息苦しい物になった。

のちにこれは『死を奏でる音』と呼ばれる事となるのだ。

やがて、雲が無くなり、光だけになると、

雨が降らなくなり、作物は育たなくなって行った、


民達は、天を仰ぐように叫んだ。

「もう止めてくれ!頼む!死にたくない!」

子を持つ親は死にゆく子を想い、叫んだ。

「どうか、我が子だけでも!殺すなら私を!」

民達の大半が死に絶える程の天変地異が起きた後、

大地は砕かれ、地形は変わり果て大陸は四つに分かれると、

生き残った人々はその四つの大陸を総称し、

フェミナーガ(空中浮遊都市)と呼ぶ様になった。

ある者はこう囁いたと言う。

〝神の涙〟が大陸の崩壊を防いだのだと。


第一話

―そして、神々が滅びし時から―


「はぁ。はぁ。はぁ。」

少年にとっては、その小さい足では砂漠の乾いた砂は、足を取られて歩き辛い物だった。


「はぁ。待ってろ。もう少しで・・・村が見える筈だ。

絶対に一緒に助かろう。助かるんだ!うわっ⁉」

灼熱の光は、少年や、少年が背負いながら、

必死に励まし続けて居るも、全く反応を示さず、力なく意識も朦朧とし、

蟲の息となって居る少女の生きると言う希望を光とは正反対に闇へと導く様に、確実に奪っていた。

更に、少年と少女の背格好は同じ位の為、少年の歩くその足に対して、

砂漠のさらさらとした砂はまるで、少年の足を掴み放さぬかのように少年の膝まで飲み込んで行き、

少年は少し歩く度に、少女と共にその場に転げてしまう。

それでも、少年の手は少女から離される事は無く、

死にかけて居る少女に笑顔で話しかける。


「なぁ。お前は生きてるんだよな。

そう、お前は生きてる。俺とお前は生きるんだ。

絶対に、こんな所で、野垂れ死にしたりなんてする物か。

お前が生きて居るから、俺もここで生きられる。

そんな気がするんだ。だから。」

汗をぬぐい、倒れて居る、少女の手首を引き上げ、

もう一度自らの背に抱え込むと、砂漠を歩き出す。


お前が死んだら.....俺も、ここで終わり、そんな気がするんだ。


「ハァ・・・。ワタシヲ・・。

ココニ・・・。オイテ・・・。イッテ。」

かすれ、息も絶え絶えになりながら少女は少年に言う。


「っふん。冗談。もっとましな願いならまだしも、

そんな願いは聞くわけねぇだろ。っく‼」

言葉とは裏腹に、再び体制が崩れて、二人共、倒れる。


「けれど、はぁはぁ。どうも、子供の俺の体格で、

同じ体格のお前を担ぐのにも限界があるみたいだ。」

空を仰ぎ見ると、いつ死ぬか、死んだならすぐさまその肉を突こうと、

待ちわびて居るずるがしこい鳥達が旋回している。


到頭どうせなら、もう少し背が高かったら良かった。

そうすれば、少なくとも、お前を難なく抱え上げられる位出来たのに。

諦めたくない。お前と共に助かる事が出来たなら。」

意識が薄れて行く中で、悔しい気な表情を浮かべ、

隣で既に意識を無くして居る、少女を見つめる。


「ごめんな。ごめん。もし、もしもそれでも助かったなら、

お前の願いをなんだって叶えてやる。

何だって・・・。何だって。約束するから。だから。だから・・・。」


オネガイ ダレカ オレタチヲ タスケテ。


ーーーーーーー


「・・・・・・。」

あれ?冷たい。額に冷たい物が当てられて・・・。


「・・・・・・っ。」

ゆっくりと目を開ける。


「天井?」

にしては、時折、風で揺ら揺らと揺れ動いて居る。


「連れて帰られない方が良いと思いますが。」

外から、声が聞こえ、ゆっくりとそちらに目をやると、数人の足が見える。


「ミルディアの民は、外界の者を強く毛嫌いします。

特にあの少女の風貌・・・。古の遺跡の破れた壁画に描かれていた、

絵の人物と髪の色が全く一緒です。気味が悪いですよ。」

少し若い青年の声が訴える声は、少年の耳にはっきりと聞こえた。


「そうですよ。それに、あの少年だって。黒い髪に小麦色の肌。

これだけミルディアの民が住む砂漠地帯をさ迷って。

ミルディアの民居すらも、ちゃんとその地形を把握した人物が居なければ、

その命を落としかねない無法地帯なのにも拘らず、あんなに健康そうな肌をして、

火傷も負わず、同じ体格の少女を背負い生き延びていたなんて。

我々人に近い者の出来る事ではありません。

いえ・・・最早化けも「それ位にしたらどうだ‼」


化け物。

別の青年がそう言いかけた時だった。

明らかに、青年とはかけ離れた、少し枯れ、

この砂漠の中を屈強に歩き続ける男と言う様な、

そんな深い声の持ち主が、怒鳴り声をあげる。

その威厳と威圧感により、そこに居た数名は、黙り込む。


「では、お前達は、あの子供を、みすみすここに捨て置けと?

まだ息もある子を、化け物かもしれないと言う理由だけで、

あの古の壁画に髪の色が似て居ると言うだけで、

村の者が受け入れないかもしれないと言う理由だけで、捨て置けと?

そう言うのか?それが、平和を望む民の言う事か!!」

その言葉に、今まで、誹謗中傷をしていた者達は、更に、口を噤む。


「解ったなら、持ち場へ戻れ‼」

その声と共に、威厳のある声の持ち主は、勢いよく、少年が横になって居る場所へと入って来る。


「目が覚めた様だな。起きられるか?」

声も威厳があり、威圧的な雰囲気があったが、顔もそのままだった。

ひげを生やし、ボロボロのフードをかぶり、髪も切る事無くのばしたままだった。

しかし、それは、ただ単に、旅をしている途中で、切る暇が無かっただけで、

別に不潔にしている訳ではなく、

服もまた、高級な物が手に入れられる様な環境でない為に着ていると言うだけで、

きちんと着回しされて居る為か、何処か、清潔感のある人物だった。


「ここは何処?」

ゆっくり起き上がり、一言問う。


「まぁ。まてや。まず、互いの事を知ってからだ。俺の名は、キリ=ランズウェル。坊主お前は?」

その言葉に、少年はゆっくりと首を横に振る。


「なんだ。言いたくねぇってか。」

その言葉に、再び首を横に振る。


「はぁ・・・。首振り人形かって。じゃぁ、坊主。

お前が背に抱えて居た嬢ちゃん。っあっおい!!」

キリが指を指した時に、少年の視界にその少女が入ると、

少年は目の色を変えベッドから飛び起き、

少女に駆け寄るのを、驚きの声を上げながら見つめるキリ。


少年は、硬い地面に膝をつき、ベッドに眠る少女の息をその手で確認すると、

空いて居る手で、少女の手を握りながら、最後にゆっくりと彼女の胸に耳を当てる。


トクンッ

トクンッ

弱弱しいながらも、鼓動が聞こえて来る事に、安堵すら覚える。


「お前も同じ程に、弱って居ると言うのに、お嬢ちゃんを一番に心配するたぁ。

もしかして、妹か?」

キリの質問に少年は今度は黙り込む。


「はぁ・・・。だんまり・・・か。」

困った表情を浮かべた、キリは、如何した物かと、うろうろし始める。


「知らない。」

その一言で、キリの挙動はとまり、今も尚、少女の手を握り、

じっと少女を見つめる少年に目を向ける。


「自分の名前も、この娘の名前も、この娘との関係も。

だから、ここが何処か聞いたんだ。

知れば、少しは、解るかと思って。

ねぇ、キリ俺達は外界って所から来たの?俺達は・・・。」

少年は少女の手を握りながら、キリを見つめ、言葉を続ける。


「俺達は、化け物なの?」


何だ、この坊主の目。今まで見た子供の目よりも子供っぽくなく、

何よりも真っ直ぐに見据え、その漆黒の瞳を見つめ続けて居ると、

何処までも、何処までも、漆黒の闇に飲み込まれて、

自分の罪を見透かされ、思う所も何もかもを、瞬時に見られている様だ。


キリは、そう思いながらも、少年から目をそらし、いまだ目を覚まさない少女を見つめた。


不思議だ。この嬢ちゃんからも、何かを感じる。坊主とは全く正反対の感覚だった。どこか安心できて、微かに、折り重なる歌声が聞こえる。少女や女性や男性関係なく、兎に角美しいと言えるありとあらゆる声が折り重なって、その歌声は耳を擽る。坊主や仲間達にはこの歌声は聞こえて居ないのか?


「あんたにも、聞こえるの?」

少年は、少女をじっと見つめて居るキリに対して、

更にその瞳の奥を見つめるかの様に漆黒の瞳でじっと見つめながら、問う。


「っい・・・。いや。俺は、歌声何て。」


「へぇ。やっぱり、聞こえる奴も居るんだ。

てっきり、暑さで、耳までやられてるのかと思ったけど、時々聞こえるんだ。

こいつを見て居ると。まるで、誰かが、こいつを祝福して居る、見たいに。綺麗な歌声が。

俺は、その歌声で、砂漠の中で目が覚めた。

そしたら、こいつが隣に居たんだ。

砂漠の真ん中で目が覚めて、記憶が無いけど、

でも、少なくとも、親が居たとしても、

砂漠の真ん中で捨てる位だ。生まれた事自体祝福なんかしちゃぁないさ。」

少年は、自分の事なのにも拘らず、

悲し気な表情一つせず、鼻で笑って見せると、更に続ける。


「こいつだって、きっと。捨てられたんだ。

だけど・・・。それでも、記憶の無い、誰からも祝福されない俺達だったけど、

こいつには祝福されてる。こいつだけは、俺の傍に、隣に居た。」

少年はそう言いながら、先程の馬鹿にした表情から、

優しい柔らかな、表情へと変わり、言った。


「神であろうと、何だろうと、感謝するよ。

俺は、一人であそこに倒れて居た訳じゃ無い。

こいつと一緒にあそこに倒れて居た。

そう思うと、一緒に助かりたい。そう思った。」


「ほう。だから、置いて行けば、少しは生き永らえるかもしれない命なのに、

ずっと背負って歩いて来たってわけか。

おまえ。目つき悪いし、子供らしさの欠片も無いのに、良い奴じゃねぇか。」

キリは、微笑ましそうに、少年を見つめる。


「うるせぇな。」

少年は、舌を出しながら、そう答えるなり、キリは苦笑した。


「可愛げのないガキだ。だが、名前がないってぇのは些か不便だ。

・・・・そうだな。トラッドネス・・・。

トラッドネス=ガイアはどうだ?」

その言葉に、少年は眉を顰める。


「はぁ?おっさん、名前つける美的感覚無さすぎ。」


「お前はあるのかよ!」

悪態付く少年に対し、少し怒り気味に、

怒鳴りつけるが、少年は、目を伏せ直ぐにキリに言う。


「......意味は?」


「は?」


「トラッドネス。って、なんて意味?」

少年の、その言葉に、キリは手を腰に当てながら、仕方ねぇ奴だなと言い近くの机に向かう。


「愛す者。」

キリは、そう言いながら、カリカリと、羽ペンで書く。


「じゃぁ、ガイアは?」


「その一言だけだと、一人ってなるが、トラッドネス=ガイアと続けると、

ミルディアの民の中では古の言葉でこう読む。」

キリはそう言いながら、更に、羽ペンに手をかけ、

紙に文字を書き、少年に見せると微笑みながら言う。


「唯一人を、愛す者。」

その紙を受け取りながら、少年の顔は少しずつ微笑みに変わる。


「唯一人を、愛す者。か。」

何だか、聞いた事がある気がする。


そう想いながら、ベッドで眠る少女を見つめる。


「その娘に、向ける眼差しは、記憶に無かろうが、どう考えても、妹じゃねぇな。」

腕組みをしながら、不敵に微笑むキリに対し、少年は少女に向き直り、キリに言う。


「ふん。この名前使ってやらなくもない。」

子供らしくない言葉に、キリは噴き出しながら笑うのだった。


「そうか。そりゃ気に入ってくれて、よかったよ。

嬢ちゃんの名前は、嬢ちゃんが目を覚ましてから考えような。」



ーーーーーーーーーー



一方その頃少女は夢を見てた。

此処は・・・どこだろう・・・。

解らない。でも、目の前には、白くて、爪がとても長くて、

私よりも何倍も身長が高い。私とは、全く姿容、瞳の色が違う。

なのに、私は、その相手をとても綺麗だと思って見つめてる。


髪の一本一本から、顔の輪郭を、まるで指でなぞる様に、目でゆっくりと見つめて、

睫毛の一本一本までゆっくりと、見て居る。

相手は呆れて居るけれど、それでも、私はその目を離せずに、

今度はその手を見つめて、胸元、腰そして、足元とゆっくりと見つめて、最後に、言ったんだ。


【ねぇ。どうしてそんなに悲しそうな顔をして居るの?】


そう言うと、今まで呆れて居た様に見えた表情は、

一気に悲しみの表情へと変わり、その相手は、私を捕まえ様としたけれど。


「っ。」

少女は、そこで夢から目覚めた。

夢の内容は殆ど覚えておらず、内容もおぼろげな物だった。


「・・・・・。」

ゆっくりと、目を開けると、そこは茶色い天井がまず目に飛び込んできた。


「まってよぉぉぉ。」

「こっちだよぉぉだ。捕まえて見ろって。」

外から、幼い子供のとても高い声が聞こえ、ふとそちらに目をやると、

視界に、黒い髪に肌が小麦色の少年と青年の間位の年齢の男の子が眠ったまま自分の手を握って居る。


起こさない様に、ゆっくりと、起き上がると、

外から、見知らぬ男性が中へと入ってきた。


「気が付いたか?」

その男性と、寝て居る男の子を交互に見つめる。


「起こしてやるなよ。何せ5年だ。」

何の事か解らずに、首を傾げる。


「なんだ。覚えてないのか。そりゃぁ、こいつが、可哀そうだ。

お前、こいつと一緒に、砂漠の真ん中で、捨てられた様に倒れて居たそうじゃないか。

それを、最初に目覚めたこいつが、一生懸命に、お前を抱えて、砂漠の中を歩き回った。

それでも、力尽きて、ぶっ倒れてた所を、俺に拾われたのが、5年前。

お前さんは、5年間目覚める事無く、眠ってたのさ。

で、今日初めて目覚めたってわけだ。」

男はずいっと、顔を少女に近づけると、その瞳をじっと見つめる。


その行為に、少々怯えがちに、近くにかけられていた、布を口元までたくし上げる。


「やっぱりなぁ。お嬢ちゃんは、こいつとは、正反対の目の色をして居るって思って居たけれど、

深い、深い緑色。金ノ国でとれる鉱石のエメラルドよりも、

樹ノ国に咲く草花よりも、常夜ノ国に咲く雪華よりも、

美しい宝石がはめ込まれて居るみてぇだ。」

自分の姿がどんな者なのか、解らない少女は、その言葉に戸惑いを隠せずに居た。


「まさか、お前さんも、記憶がないのか?」

〝も〟その言葉には違和感があったけれど、

その問いは明らかに答えられた為に、少女は頷いた。


「まいったなぁ。お前さんが、気が付けば、少しは、解るかと思ったんだが・・・。」

頭を抱えながら、今だ、眠って居る、男の子を見つめる。


「彼は。私を?」

その問いに男性は、首を横に振る。


知らないのに、見知らぬ私を、5年も面倒見てくれたんだ。

ううん。それだけじゃない。その前も、私の命をずっと守ってくれたんだ。

砂漠なんて、一人で歩くのも過酷なのに・・・。

この男の子の発達状況からして、5年前はもっと小さかった筈、

そう考えると、自分を抱えるなんて、同じ体格の子供を子供が抱えてるのと変わりない。


「ありがとう。」

そう言いながら、彼の額に軽く口づけを落とすと、

トラッドネスは少し擽ったそうに、顔を隠した。


「まだ、少し休め。起きた事は、こいつには言っておくから。」

少女は、男性に言われた通りに、横になると、

彼が握って居た手を握り返し、再び目を閉じた。


ーーーー


「起きたんだったら、何故俺を、起こさない‼」

彼女が眠ってしばらくすると、トラッドネスは起き上がり、

彼女が目覚めた事をキリから、聞くなり、キリに掴みかかる。


「おいおい。仕方ねぇだろう?お前は疲れて眠って居たから。

お嬢ちゃんもお嬢ちゃんで、起こすまいとして・・・。」


「俺は‼俺は・・・。彼女の声を聴きたかった。

彼女の目を見たかった。なのに、彼女が最初に見つめたのが、お前だなんて。そんなのない。」

俯きながら、立ち上がり、その場を後にしようとする。トラッドネス。


「おい。そう不貞腐れんなって。ったく。

目が覚めて一番に見られたいなんて。

卵から生まれた雛を見守る親鳥じゃねぇんだから。おい。どこへ行く。」


「そんなんじゃない‼・・・ったんだ。」

ぼそりと言われた言葉はキリには聞き取り辛かった為に、

キリは思わず聞き返すと、むすっとした顔で、

トラッドネスは、キリに怒鳴る様に言う。


「腹が減ったんだ‼」

その強気の言葉に対し、

見た目や眼差しは大人びているが何処かしら子供らしさはあるんだなと思うキリは、豪快に笑った。



少女は再び夢を見て居た。


まただ。此処は、何処なのだろう。

目の前には、容姿端麗な見た目の相手だけれど、

牙をむき出しにし、私を食べようとして居る〝何か〟が居た。


けれど、何故か怖くない私は、彼か彼女かも解らない相手に対し微笑んで居ると、

相手の鋭い牙は、元に戻り、ため息を一つ付く。

私は、唯、相手の傍に居たくて堪らない。

そう思うが為に、そこから動かないで居ると、相手は根負けしたかの如く、

隣に座ると、心地の良い声で、何かを話している。


私もそれに答えて居るけれど、本当に夢の様な虚ろな世界の為に、

一体相手がどんな姿で、どんな声をして、どんな内容を話し、

私はそれに対し、何を答えて居るのかさえ、覚えて居らず、

その虚ろな世界がどんな景色なのか、解らなかったが、唯、美しい世界とだけは覚えて居た。


目を覚ますと、そこは再びあの、茶色い天井だった。

先ほどの様に、美しい世界ではなく、天井や床家具に至る全てが

砂を固めて出来て居る為か、茶色一色だった。

時折天井から、茶色い糸の様な物がぶら下がっており、

綺麗な透明の玉が飾られて居たが、飾りはそれ位しか見当たらなかった。


サク サク サク


砂を踏み締める音が聞こえ、そちらに目をやると、

あの、髪が黒く肌は小麦色の青年が丁度目が覚めた私を見て、目を丸くし、固まって居た。


やがて、停止して居た彼の思考が動き出したようで、

まるで、何かに背を押されるかの様に、入口から、私の寝て居るベッドへと走って来ると、

私を抱きしめる。


「やっと。会えた。」


合うのは初めてではないけれど、直接面と向かって言葉を交わすのは初めてで、

少し、緊張して居た、私に対しての彼の第一声だった。

「私、また何年か眠って居たの?」


「3年.その間、食事と水は、俺が君の身体を起こして、口から少しずつ。」


あぁ。この青年はずっとずっと、私の面倒を見てくれていたんだ。

いつ目覚めるかも、解らない私を。


そう想うと、青年の抱きしめてくれて居る、背に腕を回し、

抱擁をする事で友情と敬意を彼に示した。


「ここは?」

抱き締められたまま、青年に問う。


「ミルディアの民が住まう、砂漠のフェミナーガ(空中浮遊都市)

資源が口渇仕切って居るせいで、樹ノ国(じゅのくに)にも

金ノ国(きんのくに)にも全く見向きもされない無法地帯さ。」


「この家は、キリが・・・あ。俺達を拾ってくれた、おっさん居ただろう?

あいつの家の倉庫を俺が改装して、お前と住めるようにしたんだ。」


「ありがとう。」

少女は沢山の意味を込めて、微笑みながらゆっくりとお礼を言った。


「餓鬼の癖に、何、新婚見たいな事言ってんだ。そんな事が言えるのは百憶万年早い!」

後ろから声が聞こえ、少女は、青年の肩越しに、その声の主を見る。


「キリさん。」


「うっさい、おっさんだな。」


「兄貴或いはお兄さんと呼べと何度も言って居るだろうが!

それより、トラッドネス。あつぅぅい抱擁はその辺にして、

彼女の名前について一緒に考えねぇか?」


キリのその言葉に、青年はぎゅっと抱きしめて居た腕を緩め、少女の顔を覗き込み、じっと見つめる。


「何だ。お前が決めたそうな顔をして居るな。」


「うるさいな。」

不機嫌丸出しに、キリに答える、しかし、すぐに優しい眼差しに変わり、

少女に向き直ると、少女の耳元に、ひそりとその耳元に囁いたのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ