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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第3ステージ:森林
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オラクル Ver. アルテミス -4-


「な、何よ、なんなのよ。みんなしてヘンな顔しちゃって」

 ひとり、まだ事情を知らないユーリが他の面々をきょろきょろと見回す。アヤノ達がうまく返事をできずにいる中、ショウがなんでもないように口を開いた。

「アヤのところに悪戯メッセージが届くみたいでね。でも相手が誰なのかわからなくて、今のところ静観中なんだ」

「えぇ? それってほっとく方がまずくない?」

「下手に刺激する方があぶない人もいるから……相手の性質がわかるまでは、ね」

「あらそうなの。アヤちゃんも大変なのねぇ」

 ナチュラルすぎるショウの嘘と、ユーリのあっけらかんとした反応に複雑な気分になりつつ、アヤノは何も言わずため息をついた。

 それにしても、今回のメッセージはなんだろう。“何”が近いというのだろう。

「進もうか。とりあえずオラクルエリアにいる間は、他のプレイヤーは接触してこられないから」

「それもそうねぇ」

「てかよ、のんびりしてんなよ! もう来てるって!」

 アルが叫んで駆けだしたのを、「わかってる」とショウが追った。

 ルートのほんの少し先に沸いて出たのは猿と熊が1体ずつ。迷わず熊に照準を合わせたアルのそばで、ショウが投げナイフを猿に放つ。

「気をつけて! これだと途中で新手が来そうだ!」


『――魔法マギア!:スィエラ!!』


 突然ダンテが叫んだ。放たれた魔法がショウとアルを越えて、向こうに出現した花に直撃する。アヤノもとっさに魔法マギアを追い、花に向かって走った。

「アヤ!?」

 ショウのあわてた声を後目に突進していく。いまだ独力で倒したことのない敵だが、今度こそ。

 鞭のように振り回される蔓の動き。リズムがある。だいたいは覚えている、はず。

「ダンテ! 援護たのむ!」

 ショウが指示する間に最大速で回り込んだ。“速度”を上げたおかげでかわすのは以前よりずっと楽だ。振り上げて止まる一瞬を捉え、まずは1本目の蔓を斬り払う。怯んだところを間髪入れずにもう1本。

 花が悲鳴を上げて暴れた。一時回避して落ち着くのを待ち、最後の1本は無視して本体をたたきにかかる。


魔法マギア:ディニ!』


 ダンテの水防御魔法が発動した。一瞬ふり返ると、猿が投げたのだろう木の実が視界の端をかすめてはじけた。間髪入れず襲った蔓をダンテが宝剣で払った。と同時に、アヤノは力いっぱい跳んだ。

 花弁の中心。真上から剣を突き立てる。と、花は大きく身をよじって声を上げた。

 クリティカルヒットだ。

「アヤ」

「さっき。ありがとう」

 ダンテの視線がよそに向いた。戦っているような音は聞こえず、足音だけが近づいてくる。ひとまず終わったらしい。

「――ああ、だがあまり無茶をするものではない」

 少し遅れて返事があった。アヤノは一応「ごめん」と頭を下げ、高いところにある黒い眼を見上げた。

「次は、気をつける。ちゃんとひとりでやれるように」

「それももちろん、いい目標だとは思うけどね」

 不意に後ろからショウの声。苦笑混じりの口調は、たぶん何か諭そうとしている時のものだ。

「けど?」

「ひとりでプレイしてる時ならともかく、せっかく今はパーティを組んでるんだから。もう少しメンバーをあてにしていいんだよ」

「……でも」

 それは単に、楽をして戦えということにならないか。

 見返って首を傾けると、ショウが視線で他の3人を示した。

「楽をしろってことじゃなく、人の手を借りるのも戦略ってこと」

「そーそー。協力してやりゃ楽だしな」

「それと、パーティを組んでいる時はひとりが突出するのが逆に危険な場合があるからね。自分も仲間も。覚えておいてくれると嬉しいんだけど」

「!」

 そういう考え方があるとは気づかなかった。言われてみれば確かにそうだ。あまり人の手を借りることは望まないが、他人に迷惑をかけてしまうのはもっといやだ。

「つまり、個人技も協力プレーも、どっちも磨けばいいって話」

「わかった」

 よくわかった。それに自分にとっては目標が増えるのも楽しい。

 アヤノは剣を握り直した。ユーリが画面を確認している。そろそろ、次だ。

 そんな視線に気がついたのか、ユーリはアヤノににこりと笑いかけてきた。



            * * * * *




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