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THEOS KLEIS ‐テオス・クレイス‐  作者: 高砂イサミ
第3ステージ:森林
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オラクル Ver. アルテミス -1-


 珍しく最後にやってきたショウはかなりあわてた様子だった。すでに集まって雑談をしていた4人を見ると、ほっとしたように息を吐く。

「ごめん。遅刻した」

「気にすんな。ユーリも今来たとこだ」

「ショウ君! 同じタイミングで入ってくるなんて、気が合うじゃないのぉ!」

「ただの偶然じゃないかな?」

 ユーリに向けるショウの笑顔がやけに冷たい。なんとなくらしくないような気がしてアヤノは瞬いた。

 何か気に入らないのなら連れていかなければいいのにとも思うが、そういえば『約束』があったのだった。第3ステージの“オラクル”までなら同行すると、確かショウは言っていた。それにしてもこの調子では、言葉通り、クリアと同時にさよならなのかもしれない。

「アヤもだいぶレベルを上げたね。そろそろ“オラクル”に挑戦してみようか?」

 聞かれたアヤノは迷わずうなずく。

「行く」

「ダンテもここのオラクルは初めてかな?」

「ああ」

「私は2回目よ。ここのボスって第1、第2ステージまでとちょーっと傾向が違うのよねぇ。近距離専門はしんどいわよ?」

「遠距離攻撃のできる者をメインにすべきということか」

「そゆこと。でもまずは森を抜けなくちゃねぇ。うふふ……実は私、ここのステージにぴったりのイイモノ、持ってるのよ?」

 ユーリが楽しげに笑いながら錫杖を手にした。1歩、セーフティエリアから出たところでそれを掲げる。


使役獣召喚プロスクリシー:グライアイ!』


 目の前にぽっと光が灯った。それがあっという間に形を取り、何か――やけにグロテスクなものに、なった。

「……なにこれ」

「なんだこれは」

「うげ。目玉に虫の手足と羽って……妖怪か!」

 アヤノ達がそろって顔をしかめる中、ショウだけが驚いた顔でそれをのぞきこんだ。

「これは……すごいな、レアものだ。どこで手に入れたの。買った?」

「やぁだ買えるわけないでしょ? モンスターを倒したときにドロップしたのよ。すっっっっっごくまれにしか出ないらしいから、あたしの運ってなかなかのものよねぇ」

 あなたならわかってくれると思った、言いながら懲りずにショウにすり寄ろうとするユーリと、目玉おばけを見比べて、アヤノは首をかしげた。

「でもこれ、戦えるの、ユーリ」

 どう考えても攻撃手段を持っていそうに見えない。というアヤノの見立てはどうやら正しいようだった。

「そ、コレは戦えないわ。だけどこういう便利な使い方ができるワケ」

 軽く錫杖を振れば“グライアイ”がぱっと羽を広げ、飛んだ。

 その姿が木々の向こうに見えなくなったところで、ユーリはメニュー画面を開く。


『グライアイ:“マティ”』


「……あ」

 ユーリの画面に変化が起きた。森の中を移動しているような画面が映る。これは。

「もうわかるわよね? アレの見てる画像がここに転送されてくるの。通常画面じゃ発生数しかわからない敵も、これで種類までわかって、事前に対策が立てられるってわけ」

「すごい」

「へー、そりゃ便利だな」

「どう? アルちゃんにもこの凄さ、わかった?」

 ふふんと胸を張ったユーリに、ショウがふと笑顔を向けた。それもまた、作り物の笑顔のようだった。

「それじゃユーリ、もう一区画先までグライアイを進めてくれる? 今3頭分の反応があるみたいなんだ。確認、お願いできるかな?」

「やぁーん、あなたのたのみなら喜んでぇー!」

 くねくねと体をくねらせるユーリから少し距離を置いたショウが、どことなく悪い顔をする。アヤノは黙ってアル、ダンテと目を見交わした。

 ――ここは何も言わないでおこう。

 言葉はなくとも全員一致で意見がまとまった。

「ええとねぇ、熊が2頭いるみたいよ。あとは、花ね」

「花。第1ステージのと違う?」

「基本動作は同じ。もう少し強いけどね。そろそろアヤにも倒せるんじゃないかな?」

 ショウが前に立って歩き出した。歩きながらユーリをふり返る。

「攻撃用の召喚獣は?」

「メインは“ヒドラ”。レベル2よ。防御は“プロヴァート”のレベル3」

「ありがとう、傾向は大体わかった」

 ショウは他の3人にも順に視線を送った。このメンバーならどんな戦い方ができるかを考えているのだ、たぶん。こうやって事前に分析しておくから、いつでも的確な指示を出せるのだろう。

「……オラクルエリアを抜けるまでは、基本的にいつも通り。だけど今回のボス戦は僕が中心になって攻めようと思う」

「まー妥当だろ。他は?」

 アルが他の3人を見る。間をおかずにショウが口を開いた。

「援護は、アヤとアル。ダンテとユーリには、追い込みをお願いしたいな」



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