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#24.5 あなた無しでのお昼と友人たち

「お、姫さんら来たね」

「あ~、やっぱりまれちゃん達だけかぁ」

 私が学食の隅で仲睦まじく喋っているカップルに近づくと、そのカップルはやっぱりという顔で私達を迎え入れた。

 

「作戦は失敗です。なんであの人あんなに穏やかに、早く行けオーラ出せるんですか。少しは仲良くなっていると思っているのですが」

 晴れて想い人?となった、特別な友達である進藤才人を昼食に誘おうとするも、雰囲気に負けてしまったのだ。

 

 夏休み中もたまにあったがあの人は時折酷く虚ろな顔をする。

 まるで彼自身が世界の異物で、自ら存在を消そうとするかのように見えてしまう。

 

「スゴいよね〜あのヒト。真恋の誘い普通に断るんだもん」

「わたくしは、かの人と語ったことがほぼ無いので、あまり言えませんが一人を大切にしてそうな人ではありましたね。」

 私についてきてくれた親友二人が、私の言いたいことを大体言ってくれた。

 

 彼女たちには夏休み後半に私の孤独を話しているから、少しは心がマシになっている。

 なってはいるけど、やっぱり足りない。

 

 お醤油無しでお刺身を食べるような気分だ。

 今日のお弁当には、当たり前だけどお刺身要素はないんだけども。

 

「まあ、姫さんはよくやっていると思うよ。おかげで俺たちも、才…あの人とまた話せるようになってきたから」

 何故か名前を出さずあの人呼びで行くらしい。

本人的には恐らく「それでいいよ」とでも言ってきそうな扱いだ。

 

「お二人は幼馴染で、親友なんですよね。本人も言ってましたし。今まであんまり話せてなかったんですか?」

 前から聞いてみたかったことだ。

 彼は饒舌ではないが、話しかければ大体返してくれる。

 

 なのに、クラスメイトでも彼の声すら知らない人がいた。

 

「うーん、話すと長くなるから話さないんだけど」

「そのパターンで話さないの初めて見た」

 私も、話してくれるパターンだと思った。

 この人らもやっぱり少し癖があるな?

 

「中2になるまでは、今のあの人とは結構違う性質だったよ。性格は変わってないと思うけどね」

 性質…?少し胡乱な言い方なのはたぶん、意図的だろう。

 

「昔のサ…あの人くんはねぇ、すっごいお人好しで、すっごいかっこよくって、でぇ……すっごい傷ついてた」

 ……なるほど。少しだけ分かった気がする。なぜ濁すのか、なぜ、語らないのか。

 

「ラブ」

「わかってるよぉ。だからね、まれちゃん、あとは自分で聴いてみて。多分それを話してくれたなら、あの人はあなたにすごく気を許したってことだから」

 

「めんどくさいね、あんたらの親友って」

 なんの気無しに亜季ちゃんが言うのに少し笑ってしまう。

 実際、こうもぼかされるのを前知識無しで聞くとそうなるのだろう。

 

「ええ。では少しずつでも見ていきます。聞いていきます。これはそういう道筋なのでしょう」

「わあ、覚悟決まってますのね、真恋さん。」

 面倒くさい女が想う人間が、面倒くさくないはずは、ないんだ。

 仕方がない。それに。

 

「それに、そうまでしないと許さないでしょう?筒見勇気さん?」

 

 目の前の、日本人離れした彫りを持つハーフの人。

 ちゃんと喋ったのは本当に最近になってからだがたぶんこの人は、

「私と一番性格が近そうなんですもの、勇気さん」

「こりゃあ、参ったな」

 わざとらしく手を挙げてみせる筒見さんは、いつも通り目だけあんまり笑っていない。


 あの人の話題が一段落ついたところで大体ご飯も食べ終わり、とりとめのない雑談へと話が転がっていく。

「そういえば、今ってこのグループには男子が筒見くんだけじゃん。彼女的には思うこととかってないの?」

「え!?あ!ホントだ!男子がきぃくんしかいない!」

 

 気づいてもいなかったのか…ラブちゃんは大物かもしれない。

「ふふ、梔子さんはなかなか大きな器ですね。」

 弓子ちゃんが明らかに胸を見ながら言っている。こっちも大概かもしれない。

 

「うーん。でも別にきぃくんが他の女の子と仲良くしてても、あんまりなんにも思わないかなあ」

 もちろん、ベッドまで行かれると困るけどねぇと真顔で言ってのける。

 やはり大きい。胸のことではなく。

 

 私なら彼氏が他の女に靡いていたら、とりあえず蹴るかもしれない。

 生まれてこのかたほぼ動かない左脚も、その時ばかりは動いてくれるかもだ。

 

「え?まぢ?アタシ中学の時の彼氏が他の子口説いてたの見て、とりあえず髪の毛を円形にむしったよ?」

 …あのとき亜季ちゃんの元カレが帽子被ってたのってそういうことだったんだぁ。

 今まで恋愛に興味なさすぎて、聞いてなかった。

 

「それは…ラブ、参考にはしてくれるなよ?」

 おお、さすがに笑顔が崩れかけている。単純な暴には少し弱いのか。

 

「しないよぉ。きぃくんがいろいろ調べたり、聞いたりしてるのって、あの人とらぶのためだもん。絶対にそうだから大丈夫なんだよぉ?」

「ラブぅ!」

 ヒシッと抱き合う二人。

 ちょっと演技入ってる気はするけれど、それでも本物の愛なんだろう。

 

「いいですねぇ…」

「おおー真恋が恋する乙女の顔を…おとうちゃん悲しいけど嬉しいよ」

「あなたの性別すら変わっていますね、常田さん。」

 

「あ、でもきぃくんが本当に浮気してたら、戸籍上の本名を学校中で言うね」

「えぁ!!??ラブ、絶対に浮気しないから、絶対にやめてくれな?」

「戸籍上の、本名?筒見勇気さんじゃないんですか?」

 

「きぃくんは、イタリアの人とのハーフだからぁ、筒見アレッサンドロ勇気って言うんだよぉ」

 

「ラブ!!!!」

 

 本気で慌ててる筒見さんを見て、少し可哀想になる。

 私も母方の祖母がアメリカ西部出身らしいけれど、特にミドルネームなどはないので苦笑いすることしかできない。

 

「君たちって日本語しかまともに喋れないのに、外国人観光客にネイティブで話しかけられる怖さわかる?」

 

 昼休みの残りの時間は、筒見さん…筒見アレッサンドロ勇気さんの苦労話で溶けていった。

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