第一話
路地裏へようこそ
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私がやってきたのは、路地裏。新宿副都心から少し行った歓楽街の脇道、ゴミ箱が倒れて野良猫がたむろする場所に、そいつはいた。魔物というか、妖怪というか、とにかく怪しいヤツ。そいつは私を見つけて、名乗った。
「遠からん者は音に聞け、近くばもって目にも見よ!妖怪変化のあるところ、百害あって一利なし!」
……うん、知ってる。噂だし。私が驚かないからって力が抜けて倒れたそいつは、お腹が減っているらしい。パンをあげると飛び上がって喜んで平らげた。こいつには、聞いてほしいことがある。
学校で噂だった。路地裏にいる悪魔は聞けばなんでも答えてくれる。当たるかどうかは時の運、当たらないこともたくさんある。……その代わり、当たることもある。誰でもわかることならわかって当たり前だろう、って言う人がたくさんいたけど、私はやってきた。答えてくれれば、誰でもよかったのだと思う。
高校を出れば進学して就職して、家庭へ。もっと違うことがしたいと思っても他の事はできず、このまま行くだろう。それってどうなの?って聞いたらみんなそんなものだという。私だって知ってるけど納得できなくて、私でもわかることを探していた。百害という妖怪は、そんなことか、とつまらなさそうだった。
「嫌ならやらなきゃいいだろ」
学校が嫌だ、勉強が嫌だ、仕事が嫌だ。そんなに嫌ならなんでやるんだ、やらねえって思えばそれで終わり。こいつは妖怪だからそんなことを言うんだと思う。だから教えてあげた。人間の世界は、学校や仕事に行かないといる場所がない。お金を持ってなければ暮らしていくこともできない。だからしなきゃいけないの。百害は路地の向こうに見える歓楽街を見て言った。
「あっちにいたいか?」
嫌ならいなければいいだろう、縛られてもいいってんなら帰ればいい。私は言い返そうとして、上手く言い返せなくて、そうすればいいのかもしれないと思った。そしたら、百害はにたぁっと笑った。一丁上がり。これでお前もこっち側だ、オレを誰だと思ってる!妖怪変化のあるところ、百害あって一利なし!そう言って飛び上がるとビルの壁を伝ってどこかに行ってしまった。やっぱりそういうことか。私は帰ろうとして路地から踏み出すとき、少し不安を感じた。




