勇者との対戦
「魔王様。勇者パーティーが魔王城まで侵入しました。私たち魔王様直属部隊におまかせいただければ勇者パーティーを殲滅いたします。」
やっと魔王城まで来たか。私は、この時をずっと待っていたんだ。
「それは許さない。お前達ではあやつには勝てない、私が直接勇者を倒す。お前達は仲間を勇者に近づけるな。」
「ですが、魔王様それでもしものことがあれば…」
「私の力では、勇者に勝てないということか?」
「そういうわけではありません!では、勇者以外は私たちにお任せください。」
本当にすまない。私も魔王としてこの選択は間違っていることは分かっている。数多くの魔物を使役し配備している魔王城で勇者と一騎打ちをするなど到底あり得ない。今持てる勢力を総動員し勇者を殺すことが最善だ。
だが、私は一騎打ちをしなければいけない。
なぜなら、私は勇者になりたいからだ。勇者が魔王を倒す方法は一つしかない、私の魂そのものを攻撃すること。今までの敗北で私の魂に勇者の力が刻まれていっていることがわかる。私の計算だともう少しで魔王としての魂が勇者の力で消滅する。
きっと今回が最後の勇者の見学だ、私が本物の勇者になった際手本にしたいからな、じっくり見せてもらおう。
「よく来たな、勇者よ」
「お前が魔王だな!我が名は勇者アレク!お前を倒しに来た!」
これだ!これだよこれ!
なんてかっこいいセリフ、立ち姿、振る舞いなんだ。惚れ惚れする。
本気を出して戦えば、私が勝ってしまう。
伊達に998回も戦ってきていない。攻撃パターン、攻撃方法等は勇者ごとに異なるが勇者にはある共通点があった。真っ直ぐバカなのだ。どんな事を言おうと私のことは悪としか捉えない、つまり会話はできないのだ。何という強い信念、自分の決めたことを真っ直ぐ貫くひたむきさ….。惚れ惚れしてしまう。私が殺される瞬間までその気持ちを私に向けてくれ!
「勇者よ、私は今から貴様に殺される。是非楽に死なせてくれないか。」
「何を言っている!そのような事を言ってきてもと俺は手加減などしないぞ!覚悟しろ魔王!」
んんんん!!なんてかっこいいんだ!これを見て憧れない魔王はいないぞ!早く、早く俺を殺してくれ!
「行くぞ!これが勇者の力だ!
スパークライトニングソード!!!」
聖剣アリウスが光だし、雷のような速度で私を攻撃してくる。溢れる光のパワーが場を支配し、この私でさえ涎が出てしまうぐらいの攻撃だ。これを受けたら私は勇者になれる。やっと勇者になれるのだ。
バギィーーーーーーン!!!
勇者の聖剣が弾かれた。
あたり一面を照らしていた光が消え。闇に支配されていく。
なぜ、攻撃を止めたのか私にも理解できない。この攻撃を受けたら、転生できたのに。心の中の私がこの攻撃ではない、勇者の本当の力を引き出さなければいけないと言っている。
「くそ!!さすが魔王、この技をふさがれたのは初めてだ。なぜそのような力を人殺しに使うのだ、私たちは分かり合えない存在なのか!」
「そっち系の勇者か、好きなタイプだ」
「そっち系ってなんだ!」
本音が漏れていた。
私も理解し合えるならしたいが、魔族の脳には人間が敵とインプットされている。どうしようと、人間とは分かり合えないのだ。私は例外だがな。
「私は、魔王だ。人間など取るに足らない存在。お前は害虫や食糧達とわかり合おうと思うか?それと同じ事だ。」
「やはりお前は敵だ。何の躊躇もなく殺すことができる。俺の最大奥義を使うぞ!」
どんな敵にも手を差し伸ばす優しさ、分かり合えず人間の敵だと確信すると躊躇が無くなる判断の高さ、流石勇者だ。その奥義で私の魔王としての魂を消し去り私を勇者と同じ人間にさせてくれ!
勇者の力が聖剣アリウスに集中する。先ほどの攻撃とは何段階もレベルの高い攻撃なのが見て分かる。
今攻撃をしたら簡単に勇者を殺すことができるだろう。だがそのようなことは決してしない。これは魔王として最大限の敬意を払い戦わなければいけないのだ。
「勇者の一族に伝わる秘伝の奥義。
始まりの一撃」
どの勇者にも奥義は存在し、それは魔王をも消滅することのできる一撃。
何度でも味わいたい衝撃のある一撃。
本当に素晴らしい。
「ありがとう。勇者達。」
魔界最強の魔王と人間界最強の勇者の対決。
その戦いを999回行った魔王、ノアールアルカードは最後の扉の前にたった。
この扉の先は勇者への道なのか、魔王へ




