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13/24

ゆっくりと手を曇天に向ける

前回から2週間、ですね。ホラー企画が開催されていますが、皆様参加されてたりするんでしょうか。私はホラー苦手なので全く開いておりません(笑)


そういえばお気に入り数が48(7/23時現在)です。目標の一つであるお気に入り100まであと半分です。応援していただけたら幸いです。


それでは13回目投稿です。 (追記:感想が受け付けない設定になってたようです。修正しました。

 一度ログアウトし、夕飯後、コルタク達は再び異世界の地にいた。


「一直線なら3・4時間で着くはずだったんですけどね」


 ワルクが呟く。辺りはすっかり日が暮れ夜闇が息を潜めている。星明りは無く、雲が空を遮っているようだ。

 よいしょ、と明かりの魔法で手のひらに発現した光球を頭上に投げ上げる。

 宙に留まり2・3回瞬くとコルタク達の周りを照らす。これで30分程は安定して光を確保できる。

 弱い魔物はこの光だけで寄り付かなくなるはずだ。


「強い魔物は逆によって来ますし野狼は囲んできますから、当然夜は危険ですけどね」


 タカトーが言う。

 話す内容とは逆さまに、心なしか声が弾んでいるのは気のせいではないだろう。今の彼なら魔物の群れなんていう逆境にも喜び諌んで飛び込みそうだ。


「ちょっと調べてみたんだけどカンセドって広いみたいね」

「そすね。今見つかってる街で一番広いんで,宿も空き屋も土地も多いんすね。農地作りたいならカンセドがいいんじゃないかって思いますよ」


 カンセドに行く前に少し下調べをしてきたのだろうワルクが補足する。コルタクは最低限の知識を持って旅先をうろつくような人間だが、ワルクは観光誌を買って計画を娯楽とするような人間なのだろう。

 

「カンセドでも農地かえるの?」

 

 農業ギルドは無かったと思う。と訊くコルタク。


「カンセドの土地買うだけならできますよ。ただ農業ギルドに属してた方が便利ってだけなんで」


 ギルドに入ってなくてはいけない、という規則はなくフリーランスの冒険者もいる。メリットは少ないがいるにはいる。タカトーが言う。

 住民からも様々な依頼を受けられる。ギルドのメリットと言えば大きなもので言うと、望んだ依頼が受けられるといった利点がある。


「住民相手だと今回みたいな事も多い、んでしょうから」


 住民から直接受けるのであれば、内容が先に来るのではなく依頼を受ける、という動作が先にくるのだから。

 タカトーが言うと含蓄のある言葉だった。

 楽しかったじゃない。と返したコルタクは開いたメニュー画面を眺めて少し唸る。


「でもまあ、お金たまって無いから無理だよねえ」

「すね、候補地って感じですね」


 長閑な所がいいなあ。とコルタクは一人ごちながら数歩、踏み出して、ふと立ち止まる。

 立ち止まったコルタクにそろって首を傾げる二人に彼は少し照れるように頬を掻く。


「で、どっちにいけばいいんだっけ。」


 マップを所持しているのはタカトーだけだ。呆けた声を漏らす二人はそろって同じ方角を指差す。口惜しくもコルタクの進もうとしていた斜め45度程ずれていた。


「正反対なら面白かったんですけどね」


 残念そうな顔をしているコルタクの心情を読み取ったワルクが諭すように言う。コルタクという大人が案外面白みに走る人間だという事に気が付いたようだ。

 早く行ってお魚美味しく調理してもらいましょ。とまるで子供をあやすように宥める辺り、年功序列、という意識も薄れてきているようだ。さもありなん。

 暫く、光の下を歩いて、二つ目の光球を打ち上げてから少し、ネットゲーム、というかゲームそのものとして、このマップの広さはどうなんだろう、という疑問について議論を述べ合っている時、不意にタカトーが周りを警戒しながら静止を促した。


「ちょっと止まってください」


 短杖を手に、視線を巡らせるタカトーにコルタクが訊く。


「どうしたの?」

「囲まれてます」


 単刀直入に言うタカトーは光球を数発打ち上げコルタクが放った光の更に周囲を照らす。三人のまわりに低い影が浮かび上がる。


「…小鬼(ゴブリン)?」


 ワルクが呟く声に、薄暗さに慣れていて光に眩んでいたコルタクの目にも小鬼の姿が映る。 

 顔全体どころか体全体に皺を寄せた小さな鬼が周囲に点在するように、それでも四方を逃げ道もなく取り囲んでいた。鬼とは言え角は無く、少しの人らしさを見せる醜い顔をさらに歪ませ牙をむき出し、明らかに威嚇している。

 ぼろ切れを、肩から、腰にだけ、はたまた三重に纏う鬼は、服装と同じように手に持つ武器もばらばらでナイフや棍棒、弓、素手で身構えている者もいる。

 手が体と比較して大きいのは攻撃性を高めるためだろうか。

 あちゃあ、とワルクが一通り見回して後悔の混じった驚嘆を示す。


「イロノア周辺のモンスターなんですけどね、最近はこっちにも流れてきてるって話があったんですよ」


 僕らじゃ太刀打ちできませんて、と言うワルクの言葉にタカトーが応えるように飛び出していった。

 短杖を振り上げて、殆ど殴り付けるように火球を炸裂させる。狙ったのは手前に出ていた武器を持っていない個体。

 恐らく大半の魔物の弱点だろう顔面に叩きつけられた爆発に大きく後方に吹き飛んだ小鬼はそれでも機敏に体を跳ね上げ体制を整える。

 電動工具を金属板に押し付けるようなしわがれ声を上げてタカトーを指差す。それに呼応して周りの目線が射止めんばかりに彼に集中した。

 周りが探りあうような短い金属音のような声で埋められた後、暫し沈黙した。

 互いが互いを窺い膠着している空間、魔物の一体が動いた。タカトーの攻撃を受けた個体、それが、身を低くして拳を振り上げ駆け出す。怒った様に拳を振りまわす小鬼だが、タカトーが足もとに放った火球を跳躍して巧みに避けると爆ぜた風に乗りながら着地と共に攻撃に移れるよう、空中で身を捩り拳を引く。

 タカトーの間合い、短杖の届く範囲、そして、拳の間合いに着地し、小鬼は地を踏みしめる。

 が、骨の浮いたような岩のように硬質化した拳をタカトーに突きつける前に、高速で壁に叩きつけられるような大音と一緒にまたしても小鬼は吹き飛ばされた。

 小鬼は先と代わり飛び起きる事はなく、勢いのまま土の上を転がった後ゆっくりと立ち上がる。

 タカトーの隣にはワルクが大剣を大きく振り切っている体制で呆れ顔をしていた。ワルクは先制攻撃で敵愾心を煽ったタカトーに変わって剣の腹で打ち付けて、音と痛みで敵を惹きつけたのだ。他の個体もワルクに注意を注いでいる。

 それでも焦らず残心に構えている所は、流石剣道部と言った所か、周囲に警戒しつつ詰めた息を吐くと下段に剣を提げる。


「敵わないって言ってるのになんでぶつかりに行くの」

「いや、だって逃げるにしたって囲まれてちゃ逃げれないじゃん」

「そうだけどさあ…」


 コルタクはいつものような軽く、そして緊張の見てとれる二人の会話に耳を傾けながら、小鬼たちの様子を観察する。

 小鬼の数はなぜか減っており、ナイフを持った個体が三匹、素手が一匹、残るが弓兵一匹だ。

 四匹が四方を固めて弓を持った小鬼が少し離れた位置で矢を番えたまま構えている。

 これで仕留められると判断したのだろうか。

 コルタクは出来るだけ静かに身を潜めるように動く。タカトーとワルクも小さく伝えた言葉通りに、魔法を武器持ちの小鬼に投げつけ、ワルクが先の吹き飛ばした素手のゴブリンに切りかかる。

 既に疲労に足がふらついていた小鬼は上段から落す大剣にそれでも反応し、かろうじて体をずらす。しかし回避が間に合わず、重鉄を叩きつけられた左腕が肩ごと落ちるが、その腕には露とも気にも留めずワルクを睨み付け殴りかかる。

 振り下ろしたばかりの体制で柄で急所を庇うことがやっとだったワルクの脇腹に小鬼の拳がめり込む。


「いっ…」


 ゲームという特性上、痛みが強くある訳ではないが衝撃は伝わる。牙猪の突進よりも大きい衝撃に一瞬竦むと慌てて体力を確認する。


「一撃掠りで三割持って行かれるって…っ」


 直撃していたら、と考えると恐ろしくなる。

 舌打ちと愚痴を混ぜて後ろの二人に伝える。ポーションで回復している時間は無い。左腕を失っている小鬼はワルクの意識が逸れた瞬間を逃さず、既に右の腕を遠心力と一緒に振りかぶっている。  

 それを見てとらえたワルクは、咄嗟に竦みを打ち払い、大剣の持ち手を上に切っ先を軽く地面につけると、身を半身に、言うなれば逆八相の構えを取る。

 刃を開き重心を低く保ち、振りぬかれた拳を剣の腹で受ける。押し倒されるような力に負けず、しかし、それに逆らわない様に刃を回し相手の右拳を逸らす。攻撃を受け流す。 

 放たれた拳の衝撃を流し切れず傷は負いはしたが、体の内側に腕を流された小鬼は背中を丸めて無防備な首をワルクの目の前に晒している。


「ここで、決めるっ」


 ワルクは受け流しきれなかった衝撃の勢いをそのままに剣を振り上げる。

 しかし、ワルクの受け流しに腕を胸に寄せられ、重心を崩された小鬼は、野生の勘か既に踏み込んでいた足を無理やりに踏ん張り体を崩れるのを防いでいた。

 力の流れに逆らう挙動に、膝が電気に打たれる様な痛みが走るはずだが、既に右肩を跳ね飛ばされて痛覚が遮られている状態にある小鬼は、攻撃を逸らされても尚離さない視界の中心でワルクが剣を振り上げようとするのを見た。

 振りぬいた腕を内向きに回った体のばねを使い跳ね返し、ワルクの剣よりも早く裏拳を放つ。

 小さな体の利とする素早さを活かされた拳撃は、上段に構えるワルクの脇腹を狙い、内臓に損傷を与えんと迫る。瞬間、小鬼は足場が崩れる様な感覚を覚えた。

 痛覚を障られて感覚が希薄だった小鬼が、限界を超えて踏み込んだ足は、耐久を超えて重圧を受けた膝は、攻撃の重みに砕けた。

 体は崩れ、当然拳は届かない。皮肉にも起死回生を狙った攻撃は、渾身の一撃を放たんとしていたワルクに対して胸をさらす形になった。

 うなじを狙っていたワルクの剣が振り向いた小鬼の側頚を捉えると、袈裟切りに胸を通り腰までを一閃に切り裂いた。

 糸の無くなった人形のように地面に崩れる小鬼に、止め、とばかりに剣を突き立てる。

 ワルクは数瞬の間小鬼を見、もう起き上がらない事を確信すると、まだ威嚇射撃を繰るタカトーの援護に向かう。

 

 最期までワルクを視界に捉えていた小鬼は、ついにはその目を放し、落ちるような空を見上げる。ゆっくりと手を曇天に向ける。伸ばされた手は空には向かわず、裂けた胸の上に拳を握って落ちる。  

 全身からは既に生気が抜けているのにも関わらず、しかしその拳だけは忠誠を示す様に、そして祈る様に、力強く握られたまま胸に置かれている。

 血走り濁った眼は小鬼の意識が消えていくと同時に、静かにその微かな光を閉じた。





ーーーチラ裏設定8ーーー


野狼ウルフ

 濃い茶色の毛を持つ狼、成体だと小さくても大型犬程度の大きさ。

 その名の通り草原地帯にすむ、群れで行動し、群れで狩りを行う。

 肉食寄りの雑食だが、飢えない限り肉を食う。

 攻撃は噛み付き、当て身。

 人を好んで襲うが人の肉というより人の持つ食料を狙って襲う。

 商人の護衛任務等での大部分の対象はこの魔物。


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