「来たっ、左足!!これで一匹だ!」
この前アクセス解析を使ってみたんですけど、更新の無い日でも20近くのアクセスがあるんですね。
こんな凡百の作品でも毎日誰かしらに見ていただいてるというのは、小説家になろうのユーザー数たるや、といった感じです。
さて、12回目投稿です。
「ふふふ…」
炎天下、というほど気温があるわけでも無いが、草原の湿度は高い。体感温度は2・3度高まっているだろう。草原を流れる川が数本重なり、また数本に分かれ流れていく湖。
その湖の岸辺にコルタク達はいた。水辺にいるので日差しの熱さは、むしろ、心地良く水の冷たさと相和していく。
直径は100m程の湖は透き通り、岸部の足首まで浸かる程度まで水に入っているコルタクは、長柄の獲物を手に不敵に笑っていた。
「魔物の討伐の依頼があるはずだったんですけど」
となりで不満そうに首を傾げるタカトーは水のかからない箇所で膝を立て尻を浮かせて坐っている。
魔術師然とした裾が足首まである外套を纏っているので水に濡れるのは避けたいだろう。
ワルクはすねるタカトーを宥めながらも、真っ先に獲物を振る。
水面で煌めく光に交じって水底の岩肌に擬態した銀鱗が跳ね返る。湖の中心はさすがに見通せないが小魚は豊富にいるようだ。奥の濁り具合を見ても釣果には期待が出来そうだ。
ワルクに続いてコルタクも釣竿を青空に振り上げ、波紋と水音と共に狙った水面へ落とす。
「釣りは良いねえ」
まだ浮を浮かべただけであるにもかかわらず飛沫と水泡が発てる音にコルタクはまた笑みを漏らした。
ーーーーー
「おー、長閑だねえ」
地図を頼りに遠くに見えてきた集落を見て歓喜の声を上げた。因みに地図はプレイヤー製だ。他アイテムと同じように精度が高いが値段も高めである。
見える集落は木柵に囲まれ、数軒の家と畑があるようだ。丸太で支柱を立て木板で壁を作っている簡易的だが確りした造りの家屋の外では棒を振り回して子供が遊んでいる。
実世界なら農作業の手伝いの合間、というような風景だがこの世界だと子供達はどういう生活をしているのだろうか。
コルタクは田舎の風景を思い出しながら額に手のひらを立てて集落を望む。
「コルさん、おいてきますよー」
立ち止まって眺めているコレタクにワルクが前から声をかける。
「いまいきますよー」
口に手を当て返事をする。
ゲームの中では既に夏の様相を醸し出している。一日は現実より早いのに季節、四季は現実より早く作られているらしい。包むように揺れる湿気を吸い込みながら、ふと首を傾げる。夏、というには何か足りない様な気がするのだが。
少し考え、まあいいか、と思い直し、また振り返るワルクに手を振って応える。先に行くタカトーとゆっくり遅れているコルタクの間で距離の間を取る様に両者を交互に確認しているワルクを少し不憫に感じ、苦笑いを浮かべ軽い駆け足で追う。
「討伐依頼…?ああ、近くにいた野狼も既に倒してもらった後でな、肉も十分あるわけじゃから冒険者さん達に頼む事と言ってもこれと言ってないんですじゃ」
集落の人に聞いた長の家に着くと、白い鬚を蓄えた恰幅のいい老人の言葉に戦闘に目を輝かせていたタカトーが崩れ落ちた。
「ん、おお、そうじゃそうじゃ」
崩れ落ちたタカトーに軽く顔をひくつかせながら少し、考えるように後ろ頭を掻き思い出したように人差し指を立てた。
「あの子等を湖まで連れて行ってくれんか。魚を取ってくるつもりみたいでな」
そういう長の視線の先には、先と変わらずはしゃぐ子供たちがいた。
「あの子等はもう自分で竿を作れる、冒険者さん方にはこちらからお貸ししよう。」
釣れた物はご自由にしてください。と家の中へ竿を取りに行った老人から、ちゃんばらをして遊ぶ子供たちを見る。
棒に見えていた物はよく見ると、糸が先端に付けられている、単純な竿だった。
ーーーーー
「しかし、小さいとはいえ、針が付いてるモノで殴り合いは駄目だよ?」
岩に上り、釣り糸を垂らす子供に注意をかける。
「あと、落ちないでよ?」
「だいじょうぶー、慣れてるもんっねっと」
立ち上がり竿を持っていない手を振り回しておどけ、危うく転げ落ちそうになる少年に、あーもう、と慌てて竿を放しコルタクは手を伸ばす。
コルタクの横では、不機嫌から立ち直ったタカトーとワルクが黙々と釣りを続けている。どちらがより多く釣れるか競争しているらしく、恐ろしく真剣だ。
一言も喋らないかと思うと、引っ掛かった革のブーツを一匹に数えるかどうか、で熱論始めるのでなかなかに騒がしい。
「おっちゃん、あれ引いてるよ」
と腕の中で笑う少年が指差すのは先ほど放り投げたコルタクの竿だ。
慌てて拾い上げ、竿を引くと一瞬の抵抗の後、空を切る感覚。
「あーあー、慌てるからあ。バレちゃった」
「えー?僕のせいだけ?」
暗に、手を放してたせいだ、と言い訳をするコルタクに少年は笑って、自分の桶から器用に一匹魚を掬うとコルタクの足もとの桶に入れる。
「じゃあ、俺のあげる」
「え、いいの?ありがとう」
にへら、と笑う少年の頭を撫でて礼を言うと他の子供達を見る。
強請るつもりで言った訳でもなく、冗談だったのだが気を遣わせてしまったのだろうか。
早々に釣りに飽きた数人の子供達は近くの浅い支流で泳いでいる。恐らく一番年長だから、とコルタクのところに衣服をすべて丸投げしている。
横着に無礼な癖して年功序列を上手く利用する狡猾さは子供そのものだ。振り回されるコルタクは迷惑、と言えば迷惑だが、それもいいだろう。と苦笑する。
「君はあっちで泳がなくていいの?」
「いいのっ、俺は釣り好きだから」
一人、釣りを続ける少年に訊くと、性懲りもなく岩の上にあがりながら答えた。特に気にした様子もなく、遠くで「飯釣れたー?」と声がかかってる所を見ると孤立しているとかではないようだ。
「というか、こんなこと僕が心配することじゃない、か」
ひくつく竿先に我に返り、竿を動かす。焦らず魚が針に食いついた所を狙って勢いを付けすぎることなく引き上げる。
竿を立て、糸の先で暴れる魚を掴み取ると、足元の桶に入れる。
「そういえば、なんか最近川の水少ないんだよね」
「そうなの?」
数回竿を振っていると釣りスキルの習得が為され、少しずつ上昇している。と言っても、特に上手くなっているという実感を得るわけでも無く、のんびりとした時間が流れている。休日に釣り、というのは男性の娯楽の代表だ。
コルタクも学生時代たまに友人と川や磯に釣りをしに行っていたが、最近は休日もあまり外出はしない。出ても近所なのでアウトドアな環境を楽しむという事は随分久々のように感じる。
「まあ、最近雨降ってないからかもしんないけど」
「へえ、降ってないんだ」
雨が降らないと川の水が減る、なんていう設定までされてるのか、とコルタクは、思えば少し砂地の多い岸を眺める。
と、竿に力が加わった事に気づき、意識を釣りに戻した。
釣り上げた魚を籠に入れながら、呟く。
「いい休日だねえ」
「おぉっ!来た、ここで一気に引き離すっ!」
コルタクが再び木の実の殻で作られた浮きを水面に落とすと、横からタカトーの声が響いた。どうやら当りが来たらしく立ち上がって水面に揺れる魚影を見つめる。
揺らめく茶色い色を滲ます魚は針が刺さっても動じず流れに沿ってゆっくりと移動している。
「これは・・・」
正体に確信を持って引き上げたその獲物は、人の足ほどの大きさの、動物の皮のような質感にまるで地面を踏みしめる事に特化したような形状をしていた。一言でいうならば、
「ブーツだね」
「…いやっ!まだだ!!」
コルタクの苦笑交じりの答えにタカトーは目の前に揺れる革のブーツを捥ぎり取るように外すと既に釣り上げていたブーツの横に並べる。
「来たっ、左足!!これで一匹だ!」
「な、くっそお!」
自慢げに左右揃ったブーツをワルクに突きだして見せるタカトーと釣果3匹差を付けられたワルクが頭を抱えて叫ぶと、子供たちが笑う。
「左右揃うと一匹換算って事にしたんだ」
コルタクは変に少し感心しながら苦笑する。軽口を叩きあいながら再び水に脚を踏み入れ竿を振る二人に、岩の上の少年が二人の競争に加わり、余暇は騒がしく過ぎた。
ーーーーー
「結局、なんだかんだで楽しんでたじゃない」
集落へ帰る一行でコルタクがタカトーに言う。
「そりゃあ、やるからには楽しまないと」
傾いてきた日を浴びながら背中で寝息を立てる少年を揺らし上げる。
コルタクら冒険者三人の釣果は既にアイテムボックスの中に放り込んである。
ワルクが持っているのは少年の桶とコルタクの桶だ。圧倒的経験値とも言える少年の竿捌き、喰らいつきの見極めによって優勝した少年の釣果は、比較的大きな獲物を選り分けたと言え、少年達が持ってきていた桶には余り、結局コルタクの桶にも入れてある。
「そういえば、負けたワルク君はどうなの?バツゲームとかあるの?」
「あー、宿題一週間す」
「全教科ですよ」
散々悔しがった後なので落ち込むワルクにタカトーが追い打ちをかける。
「うわあ、それは…」
厳しいなあ。と漏らしたコルタクは背中に寝ている少年を揺り起こす。ワルクとタカトーが殿で看ていた子供たちは各々の家へ帰っていく中、帰っていないのは背中のこの子だけだ。
「着いたよー?」
薄っすら目を開けた少年にコルタクが声を掛けると、んー、と間伸びのする声の後、腹減った、と一言いうとコルタクの背中から飛び降りる。
「ありがと、おっちゃん!また釣りしような!」
少年はワルクから片方の桶だけを受け取ると、手を振りながらワルク達にも別れを言うと恐らく家のある方へ帰って行った。
「こっちはあげる、って言われた」
「言っても長の桶だしなあ、これ」
「まあ長に返すついでにこの魚もお礼に渡したらいいんじゃないかな、竿も桶も貸して頂いたんだし」
そうですね、と二人が同意を述べ、長の家へ向かう。
「そいえば、結局今日カンセド行けなかったね」
既に時刻は20時を過ぎている。
寄り道をせずに歩いていればそろそろカンセドに着いているはずの時間だろうが、まだ半分も進んでないはずだ。ゆっくりとした足並みに加え寄り道と釣りである。つかなくて当然といえば当然だろう。
「まあ、いいんじゃないですか。面白いスキルも覚えましたし」
釣りスキルのことだろう。戦闘に派生していくのかどうかすら謎だが、とコルタクがタカトーに言うとなんでも戦闘に繋げて考えてるわけじゃないです、と少しすねられた。
ワルクが隣で笑っているが、ふと笑いを止め何かに気付いたように周りを見渡す。
「そういえば、なんか夏っぽいのに物足りないなあって思ってたんすけど」
切り出したワルクの言葉に頷くコルタクとタカトー。どうやら三人とも同じことを考えていたらしい。
「ああ、何が原因かわかったのか?」
「あれだよ、物足りないの。」
ワルクは先に気付いたのが嬉しいのか少し焦らして答える。人差し指を立てて空を指す。
ほら、夏の夕暮れだってのに、凄い静かじゃないすか。
そう言ったワルクになにか思い当たったのか、ああ、とコルタクは耳を澄まし空を見上げる。
木も疎らな草原では、確かにあるはずもないだろう。
「蝉の声、ですよ」
ワルクの言葉に、ああ確かに静かだ。と答えた。そして、でも、と続ける。
いざ、夏になると鬱陶しく思えちゃうんだよねえ。そういってコルタクは笑った。
ーーーチラ裏設定8ーーー
民家について
民家はよくある、テーブルとベッドのみ、という内装ではなくキチンと部屋割りがされ、トイレ、寝室、応接間、浴場、台所、その家の規模によって多種多様であり、AIの好みによって変化していきます。
木工スキルで家具を作るプレイヤーの主なお客はプレイヤーよりもNPCに偏っています。当然NPCの家の方が多いからです。
しかし集落でのは家具を手に入れる機会が少ないので、簡素で少ない内装になります。寝室と食堂のみの部屋割りが基本です。厠は魔石を使用した公衆便所が基本です。土の魔石によって発酵が促されより良い肥料と変わります。公衆便所兼生ゴミ処理場。
行水は近くの川から引っ張ってきている水道で行います。
あまり発展はしていない環境ではありますが、衛生面は確保されています。魔石ってスゲー
魔石については本編で追々




