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小学の悪夢

私は小学生になってから、また引っ越しをした。同じ団地だけど、古い住民楼で、エレベーターはなく、七階、二LDK。トイレは怖いくらい狭くて、シャワーを浴びるのも不便だった。


悪夢が始まったのは、いつからだろう。


覚えている限り、小学二年生の頃だったと思う。両親は理由もわからず、けんかの回数を増やしていった。会えば必ず喧嘩し、手を出すこともあった。そして私は、当然のようにその間に挟まれた。左からは父の母への罵声、右からは母の父への非難。板挟みだった。


実際、私はいつも母の味方をしていた。


私の目には、父こそが私の人生に悲劇をもたらす人間に映っていたからだ。彼が母との穏やかな生活に土足で上がり込み、波を立て続ける。私という小さな舟を、いつも揺らすのは彼だった。


二人は部屋の中で殴り合い、電話で喧嘩し、車の中で喧嘩した。私はいつも傍らで聞こえないふりをして、何も聞こえないふりをした。


やがて父が怒って車を路肩に止め、母を車から降ろそうとする。母は私の手を引いて降りようとする。すると父は怒号を上げ、私の名前を叫んで「降りるな」と命じる。毎回、怖かった。母と降りれば、父の怒りが怖い。父と残れば……残りたくない。結局、私は“どうしていいかわからないふり”をして、母に手を引かれて車を降りた。細い道を抜け、大通りへ。母はまだ父と電話で喧嘩を続けていた。汚い言葉が、私の耳に流れ込んでくる。耳を塞ぎたいと思いながら、結局、何も聞こえないふりを続けた。


そんなことは数えきれないほどあった。二人はいつも、なんらかの理由で喧嘩し、殴り合い、別れ、電話で互いを罵り合い、私に相手の悪口を言う。そしてすぐに仲直りする。結局、傷つくのは私だけだった。父に会うのが怖くなった。父に会うということは、“嫌なことが起こる”という合図だった。


どうしてそこまで憎しみ合っているのに、別れないのか、私には理解できなかった。母も父も「あなたのためでなければ、とっくに離婚している」と言う。でも私は心の底から、離婚してくれた方がよっぽど良かったと思う。父親がいない方がマシで、二人の愛憎劇の中で生きていくよりはましだった。母に「離婚すればいいのに」と言い、母が父の愚痴をこぼすたびに一緒になって愚痴った。しかし、返ってきたのは母からの非難だった。自分の父親に対してそんなことを言うべきではない、と。


私は戸惑った。


――――――――――――――――


母はよく、私に無理やり父へ電話をかけさせた。いつ帰ってくるのか、あなたのことを思っていると伝えろ、もうお母さんと喧嘲しないように言え、と。でも、私は言いたくなかった。帰ってきてほしくなかったし、思ってもいなかった。むしろ、もう二度と戻ってこなければいいと思っていた。喧嘩が本当に嫌だった。でも、それを口にすることはできなかった。


スマホが私の口元に突きつけられる。


「もしもし?」


スピーカーから、父の訝しげな声が聞こえる。


私は震えながら、それでも口を開いた。あとで消毒液で口と喉を洗い流したくなるような言葉を、絞り出すように。


「パパ……会いたいよ。ママとこれからは……もう喧嘩しないでくれる?」


しばらくの沈黙の後、父が言った。


「俺がやりたくてやってるわけじゃない。お前の母ちゃんが毎日キレてるんだ。頭がおかしいんじゃないか」


それを聞いた母は、すぐにスマホに向かって怒鳴り始めた。誰が頭がおかしいんだ、と。また二人の意味のない喧嘩が始まる。私はその隙に自分の部屋に飛び込み、ベッドに飛び乗って、枕で自分の頭を固く押さえつけた。あの声を遮断したかった。でも、無理だった。


うるさい。


頭の中にはそれしかなかった。


どうか、早く終わってほしい。


――――――――――――――――


小学五年生の頃、私は精神的な問題を抱え始めていた。何に対しても興味が持てず、成績は急落し、毎晩毎晩スマホをいじっていた。でも母はそれをただの“反抗期”や“怠け”だと思い、一度も真剣に受け止めなかった。


ある日、私はどうしても車の中での両親の喧嘩に耐えられなくなった。外に飛び出し、ドアを強く閉め切った。車は家のすぐ下に停まっていた。私は家に駆け上がり、窓を開けた。もう終わりにしようと思った。それでも、母に電話をしようと決心した。ベッドの端に座り、スマホを握りしめて、叫んだ。母が「死にたい」という私の言葉を聞いて、しばらくしてからようやく部屋に上がってきた。


私は、慰めてくれるんだと思った。


私は間違っていた。


母はまた、父に電話をかけろと私に強いた。あの人のせいで私が死にたくなった、と言え、と。私は言いたくなかった。でも、スマホは私の口の前にあった。父は電話の向こうで怒鳴っていた。なぜお前が黙ってるんだ、と。


私は口を開いた。


もちろん、言葉の代わりに罵倒が返ってくるだけだった。だから、私は死ぬのをやめた。


――――――――――――――――


あの頃のことを思い出したくはない。


でも、今も大して良くなっていない。


中学生になった。始業式の日、私はランドセルを背負い、新しい制服を着て、新たな生活が始まることを願っていた……


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