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後列モブは巻き込まれ体質すぎて悪役令嬢を放っておけない〜実は隠れ溺愛されてたとか受け入れられません!〜  作者: 皆神 わいら
第2章 後列モブは学園生活をやりすごしたい

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第20話 後列モブは溺愛を受け入れるしかない

「3番テーブルにフルーツティーセットお願いします」

「はい」

「5番テーブルのケーキトレーまだですか?」

「今出ます」


学園祭当日、ヴァレッタ様を囲む会のティールームは大盛況だった。

全員がメイドの衣装でおもてなしをしてくれるのもウケているらしい。

なんと、ローゼンベルク公爵邸のメイド衣装を全員に貸与してくれたのだ。

裏方の分まで!


慌ただしくもやりがいを感じていると、ジェシカ様がキッチンに顔を出した。


「VIP席いらっしゃいました〜」


き、来た!


「エルナさん、お願いしま〜す」

「は、はい」


裏方の仕事に専従させてはもらっているけれど、VIPが来たら抜けることになっていた。

私は後を任せて、まずはVIP席の注文を運ぶ。


「失礼します」


学園のお茶会施設にも奥まった特別施設がある。

その扉をノックし入室すると、二度目の対面となる国王と王妃様がいた。


「まあ、エルナさん。可愛らしいわ」

「ありがとうございます」


貴族の子女が集まり、卒業が義務となっているこの学園の学園祭はただの学生の催しに留まらない。

学生の出展はティールームのような出し物から、研究成果の発表まで幅広く、国内外から多くの重要人物が訪れるのだ。

必然、公式行事のように扱われるため国王夫妻もその応対に追われることとなる。


そして今回の学園祭はもう一つ、大切な役割があった。


「ああ、もうお越しでしたか」


うう、その声を聞くたびに私の何かが震えるの、本当に慣れない。

振り返ると公式行事のための衣装に着替えていた。


「エルナ、その衣装も可愛いよ」

「うう、あ、ありがとう」


メイド服が可愛いって何?

空気扱いに慣れた後列モブには、口説き文句への耐性ゼロなんだよ!


「初々しいわあ。可愛いお嫁さんが来てくれて、嬉しいわね。あなた」

「うむ、本当になあ」


王様はわりと王妃様のイエスマンだ。


「父上、母上、エルナの支度がありますから、一度退席します。後ほど控室で」

「ええ、存分に可愛らしくしてもらってきなさい」

「行ってまいります」


生暖かい視線にさらされ、銀色の君に手を引かれながら、学園に用意された部屋でクリストフ様から送られたドレスを身につける。

あの日のドレスも素敵だったけど、今日のドレスは見る角度で青にも緑にも見える。

緑は、私の瞳の色。

準備を済ませて彼の前に出ると、じっと見つめられ、やがて微笑まれた。


「素敵だよ、私のエルナ」


王城から送られてきたスタッフに髪を結われているのに、お構いなしに頭を撫でようとするクリストフ殿下。

それでも、崩さないように慎重に撫でてくれるのが、逆にくすぐったい。


私は彼の胸ポケットに私のドレスと同じ色で作られたフラワーチーフを差し込んだ。

私が同じ布で作った、布のお花だ。


「さあ、行くよ」

「はい」


差し出された手に、今度はそっと私の手を重ねる。


おかしいな。

初めは目立たずひそやかに学園生活をやりすごすはずだったのに。

貴族の義務だけ消化して田舎領地に戻ろうとしていたのに。


悪役令嬢を助けるために一肌脱いだら、王子殿下に求婚された。

なんやかんやあって、無理を通してモブに戻ったはずなのに、

賑やかな日々が恋しくて、思いを共有できる友人が恋しくて

嫌がってみせても構わずちょっかいを出してくる彼の声が聞きたくて

でも私は「後列モブ」だからと、役に徹しなくちゃと言い聞かせてた。


本心に気づかないように、願いに気づかないように

彼の前から消えようとした、それなのに

黙っていなくなろうとした私を受け入れ抱きしめてくれた彼と笑い合う日常が

私の本当に欲しい日常なのだと知ってしまった。


私はふと横を見上げた。

視線に気づいた彼が、ん?と首をかしげる。

なんでもない、と小さく口にすると私をいぶかしむこともなくつないだ手にわずかに力が込められた。


「……どうして私なの?」

「それ、今聞くの?」


うん、と頷いたまま下を向く。


「最初に言ったと思うんだけどな」

「最初?」

「”君でなくてはダメなんだ”って言っただろ?」

「あれはお芝居の!」


そうじゃなくて、と眉をしかめると彼はいたずらっ子のように、年相応の男子学生のように笑った。


「これから、時間をかけて知ってもらうから!」


ぐぬうう

なにそれ!

やっぱり腹黒王子、いや王太子だ!

なんか私だけ言わされた気がするって思ってたんだよね!


ツンとそっぽを向くも「何しても可愛いから無駄だよ」と囁かれて両耳を押さえる。

抑えたいのに手を離してくれないから、右耳だけ変な感じで抑えることになってしまった。


「さあ、私のお姫様。これからがこの物語の本番だよ。ハッピーエンディングは新しい物語のスタートだからね」


この前世持ちめ。

私の知る転生物語の王子様たちとはちょっと毛色が違うけどーー

それでもいいか。


だって、彼は私がいいと言ってくれた。

それがいちばんうれしかったから!

エルナが自分と向き合ってきた2章もここで終幕。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


でも、お話はまだまだ続きます。

未解決のお話がまだありますからね!


3章もすでに書き進んでいるのです。

ということで、次のお話もぜひ、お楽しみに♪

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