オシャレ
さて、商売を始めて4日目。今日は定休日。
今日決めました。
町の中をぶらぶら歩いてアイデアを練るのも悪いことではないはずだ。それに、今は懐具合も潤っている。今日は買い物を楽しむとしよう。
そろそろ新しい服を買いたかったところなんだ。
こっちに来てから僕はTシャツにジャージという異世界っぽくないカッコで過ごしている。この町は鎧姿など奇抜なカッコで歩いている人もいるので目立つことはない。しかし、実はこの服がけっこう汚れてきている。
たまに水洗いとかはするのだが、根がずぼらな僕はよく汚れたままの服をアイテムボックスに入れっぱなしにする。替えの服はいっぱい持ってきたはずなのだが、今日見てみるとアイテムボックスの中が汚れた服でいっぱいになっていた。
もうこの服売ってしまおうかな。
それか、クリーニングのような店があればいいのだけど。
※トモミに大量の服を自分で洗うという選択肢はなかった。
そういうわけで、汚れた服はほっておいて新しい服を買いに出かけることにした。
やって来たのはいくつかあるうちの外観がわりと綺麗で清潔感のある店だ。中に入ってみると、かなりいい生地を使った高級感のある商品が並んでいる。
普段着には向かなそうだが、冷やかし目的で入ってみた。
「いらっしゃい。あらあら、かわいいお嬢さんね」
奥から出てきた店員はおねえ系のおっさんだった。
おねえ系の店員は頼んでもいないのに似合いそうだからといくつものドレスを見繕ってきた。エアリーの屋敷でもらったドレスに少し似ている。
言葉巧みに勧められた僕はいつの間にか試着室でドレスに着替えてしまっていた。ドレスとはいっても町中を歩いても大丈夫なカジュアルなデザインだ。だけど、女の子っぽい服装に変わりはなく、露出も多めである。女の身体の生活にもだいぶ慣れてきた僕だが、この服を普段から着ようとはさすがに思えない。
思えないのだが、僕はもう3着も試着してしまっている。僕は自分自身にびっくりだ。
店員さんの勧め方がうまいのもあるのだが、僕自身着飾った自分を鏡で見るのが楽しくなってしまったのだ。
今着ているのは水色と白の明るい色合のシンプルなワンピースだ、派手さは控えめで清楚な雰囲気となっている。
鏡でみると避暑地にやってきたお嬢様のようで、思わずうっとりと見つめてしまう。
やばい……。
自分がちょっと変態っぽくて恥ずかしい。
いやいや、恥ずかしいなんて今更じゃないか。大丈夫、知り合いにバレなきゃ問題はない。
はじめ買うつもりはなかったのに、結局僕は2着ほど購入してしまった。
店員さんにせっかくなので、着ていかれてはどうかと勧めらる。
いやいや、さすがにそれは僕でも恥ずかしい。
特に目立つような服装でもないって言われても……。
いや、だけどやぱっり……。
え、今着ている服えりがしわしわだって。
う~ん、どうしよっかな~。
結局、買ったばかりのワンピースを着て町に繰り出してしまった。
あの店は危険だ。店員が客をのせるのがうますぎる。
町に繰り出してすぐに後悔した。周りからの視線がいつもよりすごく気になる。いつもの長袖Tシャツに比べて体のラインが出ている気がするし、足がスースーして心もとない。やっぱり僕はダボダボのジーンズの方がいい。普段着の替えを買うだけのつもりだったのになんでこうなった。
「あれ、トモミじゃないか? 今日は……、なんて言うか、いつもと違うのだな……」
正直、今あまり会いたくないやつに会ってしまった。めちゃくちゃ恥ずかしい。
自分で鏡を見るのは大丈夫だけど、知り合いにこの恰好を見られるのはかなりきつい。
「あ、アーサー、こんなところで会うなんて奇遇ですね」
なんとか平静を装ってみる。
「あ、ああ俺もこんなところで会うとは思ってなかった。……そのワンピース、いや……その……に、似合ってるな」
何照れてるんだよ! 照れながら褒めるとか、余計恥ずかしいからやめてくれ!
「アーサー午前中は仕事じゃなかったの?」
「いや、今日はたまたま休みだったから、買い物に来ていたんだ」
「買い物途中だったの? 邪魔しちゃった?」
「いや、もう終わったところだ。ちょうどお昼だし、一緒に飯でも食べて行かないか?」
確かにちょうどお腹も減ってきたところだ。しかし、この恰好を続けるのか~。
でも、宿に帰ってもあそこの飯は微妙だしな~。宿に帰ってからご飯を食べに外に出掛けてもいいのだけれど、それもめんどくさい。
まあいいや、このままアーサーと飯を食べに行こう。その内慣れるだろう。
アーサーがおすすめだといい、連れて来られた店は、僕ははじめて入る店だった。大通りから少し外れた場所にある店で、周辺の住民が利用するらしく、そこそこ賑わっていた。ボリュームのある豪快な盛り付けでなおかつ味もいい。なかなか満足できる店だった。
「ところで、トモミはもしかして彼氏でもできたのか?」
「ブフゥッッ!!!」
こいつは急に何を言っているんだ!
「彼氏なんていないよ! なんでそんなことを?」
「いや、急に可愛らしい恰好をしたので、もしかしたらと思ってね」
「いやいや、店員さんに載せられてしまっただけで、特に理由はないよ」
ぐ、これ以上こいつのナチュラルな褒め言葉を聞いていると、大事なものがどんどん削られるような気がする。食べ終わったらさっさと着替えて剣術だ。




