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商売

 アーサーから剣術の訓練を教わって5日がたった。毎日300回ほど素振りを続けているが、レベルは1のままである。

 瞬間移動スキルはそんなに時間もかからずにレベルアップできたのに、剣術はなんで時間がかかるのだろう。僕に向いていないのかもしれないし、スキルごとにレベルアップの難易度が異なるせいかもしれない。


 アーサーはここのところ毎日午前中に決まった依頼があるらしく、訓練に付き合ってくれるのは午後からだ。

 最初に僕がスパルタなのは嫌だと言ったせいか、割とぬるめの訓練になった。素振りの後は向かい合っての模擬戦をするわけだが、アーサーが構えた場所に木刀を当てるだけの簡単な訓練だった。それでも最初と比べて木刀の振り方は様になってきている。

 しんどい訓練をしなくても上達できるのなら、それにこしたことはない。毎日続けるのが大事なんだよ、きっと。


 訓練の後はアーサーの手伝いをする。やっぱり、ただで訓練に付き合わせるのは悪いので。

 アーサーは夕方近くになると、いくつかの店の仕入れを手伝うそうだ。主に買い物とか荷物運びとかをしている。なかなか量が多くいつも大変なのだとか。アイテムボックスがあればこれほど簡単な仕事は無いけどね。

「トモミはちょっと楽をし過ぎじゃないか? もっと鍛えた方がいいと思うのだが……」

 そう言いつつもスパルタな訓練を強要しないところがアーサーのいいところだ。


「アーサーは午前中何の依頼をしてるの?」

「午前中はギルドからの依頼で新人教育をしてるんだ。新人に低ランクの依頼についていって教えるだけだ。楽だけど依頼料は安い」

 いいな~アーサー。楽な仕事ってうらやまし~。

「どうした、トモミ。君も新人教育受けたいのか?」

「結構です!」


 _________


 午前中は時間が空くのでお金を稼ぐ方法を探すことにした。

 別に、今お金に困っているわけでは無い。高く買い取ってもらえるものもいっぱい持って来ている。

 でも、僕は家が欲しいし、贅沢な暮らしもしたい。そのためには、ここで生活の基盤を作っておかないと。ただし、楽な方法で。


 稼ぐ方法だが、冒険者は除外した。手っ取り早く稼げるものの、稼ぎはしょぼいし危険も大きい。エアリーみたいなチートが仲間にいない限りは安定した稼ぎはできない。旅をする場合なら冒険者でもいいかもしれないけど。

 商売や職人、もしくはその両方で稼ぐのがいいかな。いきなり店舗を持つのは難しいので、路上販売からスタートすることになる。何が売れるのか、まだ分からないがいくつか試してみよう。


 1日目、まずは商業ギルドに許可をもらいに行く。宿屋のおばさんに路上販売をするつもりだと話したら、絶対にギルドに許可をもらうように言われた。無許可で商売をした場合、結構きつい罰則があるらしい。

 ただ、路上販売ということもあり、厳しい審査はなく、あっさりと許可証をもらえた。お金もとられたが、思ったより安かった。

 後はどの場所で売るかだが、基本的には場所は早い者勝ちだが、暗黙の了解というものがあるようで、そのへんは商業ギルドの人に教えてもらった。長くやっている人や固定客のいる人の場所は取っちゃだめなのだと。

 そういうわけで僕は商業区の端の方で風呂敷を広げることになった。


 まず初めに並べてみたのは木製のおもちゃ。材料が手に入り易く、加工する道具も持っていたのでこれにした。昨日1日かけてできたのは5つだけ。やっぱり加工しやすい木材じゃないため、作業に時間がかかる。電動のこぎりや電動ドリルなどハイテク工具を使ったにもかかわらず、時間の割に不恰好なものが出来上がってしまった。それでもおもちゃとしての機能はちゃんある。


 ・やじろべえ 2つ(材料:細く加工した枝と木の実)

 ・マジックハンド (材料:木材と魔獣の素材)

 ・かたかた人形 (小さく人の形に切り取った木板が木の杭の間をかたかたとリズミカルに降りていく単純な構造のカラクリである。だが、これが作ってみると結構難しく何回か失敗した)

 ・木製のミニカー (大ふんぱつ輪ゴム付)


 見た目はともかく、思っていたようにちゃんと動くおもちゃを作ることができた。

 目の前で動かしてみると子供たちは興味津々といった様子で集まってきた。ゴブリンの手を先に付けたマジックハンドを動かしてやると大興奮である。

 値段も強気の600カルフ(銅貨6枚)だ。やじろべえはちょっと値引きしてもいいよ。



 ……やっぱり高すぎたかも。

 ぜんぜん売れない。よく考えたら子供がそんなにお金を持ち歩いたりはしない。親にねだって買ってもらえれば、と思ったのだが、集まっている子供たちはあまり身なりが良くない。ほとんどの子が何日も洗ってなさそうな服を着ている。商業区の端っこという立地が良くなかったのかもしれない。あまり裕福な子供は来ない場所なのだ。

 結局売れたのは1つだけ、買ったのは通りかかった大人だった。残り4つの内2つはいつの間にか消えていた。万引きされたことに全然気づかなかった。クソガキどもめ! 


 2日目、この立地で子供相手の商売は利益が出なさそうなので、今日は木製のアクセサリーを並べてみた。

 細かい作業が必要だったが、昔釣りにはまっていた時、ルアーを自作したことがあるのでちょっと自信がある。慣れてきたこともあり、たくさん作ることができた。主に首飾りやブレスレットで、ハートや鳥など何種類も作った。

 値段は弱気の小銅貨5枚の50カルフだ。何で弱気なのかというと木製のアクセサリーを売っているところは他にもいくつかあり、どこも値段は30~50カルフほどだったのだ。やっぱり、材料が木とヒモだけなのでこの価格が妥当なのかもしれない。


 結局、半日で売れたのは20個中16個で売り上げは800カルフとなった(銅貨が8枚)。宿一泊におつりがくる程度の金額だ。単価が安いから大儲けとはならないのも仕方ないだろう。路上販売としては売れている方だ。

 ちなみに、昨日おもちゃを買ってくれた人がまた来て、おもちゃを一つ買って行ってくれた。気に入ってくれたみたいだ。アクセサリーと違い、僕の作ったおもちゃは他と比べて目新しいから多少高くても買ってくれたのかもしれない。これで、売り上げの合計はおもちゃの方が多いことになる。

 結局、アクセサリーとおもちゃのどっちで商売すればいいのだろうか?


 3日目、アクセサリーとおもちゃ、両方並べてみた。

 子供がおもちゃを触りたそうに見ているけど無視だ。今日はおさわり禁止である。1日目はそれで取られてしまったのだから。


 売り上げはアクセサリーが13個とおもちゃが1個で売り上げは合計1250カルフとなった。

 おもちゃを買ってくれたのは昨日とは別の人だった。1個600カルフと割高な分あまり数は売れないみたいだ。



 さて、3日間商売してみてわかったことは、木製品の工作は安定して稼げることと、非常にめんどくさいということがわかった。


 ちなみに、僕は修復機能付きのアイテムボックスというスキルを持っている。これは最初に入れた物の状態を記録し、それが壊れても変化しても元の状態に戻してくれるもので、バッテリーもすぐに満タンに戻してくれる。

 なので、ハイテク工具は使い放題だった。


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