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赤ちゃんから始める来世改善計画  作者: ぎあまん


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暴食と魔王誕生



 思わず【魔導骸装】を使ってしまった。

 特に深い考えがあったわけではない。

 ただ、とにかく防御を固めなければと思っただけだ。

 場合によっては赤ちゃんボディの方に発生していた可能性もあったので危なかった。

 ただ、今回はちゃんと集中できていたようだ。

 ホネッコ上等兵の体が魔法の鎧に覆われていく。

 この前使った時のサイズ感だと上等兵は収まらないような気がするんだけど、異常が起きた様子はない。

 自動でサイズアップしてくれたみたいだ。


 全身が鎧に覆われたところでアスヴォアの口内に入り込む。

 うわっ。

 ワームだから巨大な肉の筒みたいなもんなんだけど、その中に牙がびっしりと並んでいる。

 正直、キモい。

 胴体の動きに合わせて内部で咀嚼が進行するっていう感じか?

 ああ、飲み込んだ石も噛み砕くのを手伝っているのかもしれない。

 生きた洞窟の中に放り込まれたようで薄気味悪い。

 だが、怖気に震えている暇もない。

 土砂や木々、そして生き物たちと一緒に俺まで咀嚼されようとしているのだ。

 これはなんとかしなければ……。

 とはいえ、どうすればって考えている暇もない。


 ぬうっ!


 三角形の大岩のような牙が目の前にあった。

【魔導骸装】を使ったおかげだろう。

 反射の動作に腕が反応し、牙を防ぐ。

 そのまま、牙の表面を滑っていくのを、なんとか牙の表面を掴んで流されないように耐える。

 だが、これはすぐに限界が来る。

 それなら、どうしたら……って、やってみるしかないか。


 見えたのは牙の根元。

 ホネッコ上等兵が備えているスキル【骨武器化】で大鎌を作り、根元に打ち込んだ。

 鎧の隙間から触手っぽく出てきた兵長にその大鎌の保持を任せ、次を作り、少し違う場所に打ち立てる。

 右手で保持して左手に更にもう一本。

 大鎌三刀流でアスヴォアの内壁に引っかかり、咀嚼の濁流に耐える。

 流れの力でアスヴォア自身の内壁が切れていく。

 そして基点にもなっていた牙がぐらりと動いた。


 ズルッと。


 牙が抜けた。

 その奥にすでに次の牙が見えている。

 鮫みたいにすぐに次が生えてくるタイプか。

 抜けた牙に押されて【魔導骸装】の体躯が流されていく。

 多少は内壁に傷を入れたけれど、そんなものは大したダメージにもなっていないだろう。

 その牙を抱き抱えるような形になったまま、土砂に流されていたのだけれど、ホネッコ上等兵が近くにある牙に反応していると感じた。

 まぁ、牙も骨だし。

 そう思って、取り込ませる。

 抱えるというか、乗っているような状態だった牙が消える。

 瞬間、変化が起きた。

 明らかな変化だ。


 ホネッコ上等兵は【死骨兵】という魔法生物・魔法造物だ。

 死霊魔法の中ではさほど難易度の高くない魔法によって作られている。

 だが、その強さはレベル制であり、創造者の『魔』が上限となるように、初期に覚えることができて、更にそのまま使い続けることができるという使い勝手の良い魔法だ。

 だが、それでも低レベルの魔法ではある。


 その魔法としての【死骨兵】が変化しようとしている。

 アスヴォアの牙を吸収したから?

 魔物としての格が高いアスヴォアの骨だから?


 だとしたら……。


 内壁に近づいてきたタイミングで、再び牙を狙って大鎌を振るい、そしてまた牙を抜く。

 生えている状態では取り込めない。

 それは死んではいないから。

 だから、抜歯をしてから取り込む。


 また、強い反応があった。

 もう一度!


 三本目を取り込んだ時に変化した。

【死骨兵】が【呪骨兵】になった。

【呪骨兵】は【死骨兵】よりも上位の魔法だ。

 骨があれば作れる【死骨兵】とは違い、【呪骨兵】は特殊な触媒が必要になる。


 すでに完成されていた魔法が、後乗せの触媒で変化した?


【基礎魔導知識・極】にこの答えはない。


 しかし、そんなことはどうでもいい。

 この状況を切り抜けられるかどうかは、このやり方を繰り返してみるしかないのだ。

 このままホネッコ上等兵を進化させて、させ続けて、内部からこのアスヴォアを倒す。

 絶望的な状況に差し込んだ一筋の希望に縋り付くように、俺は次なる牙を求めて視線を動かした。





 やった。

 使い魔からの【借視】で戦況を確認している帝国の魔法使いは喝采をあげた。

 奇跡的に制御に成功したアスヴォアを操作する魔道具を持ち出していたのだ。

 このことがバレたら魔法使いの責任になる。

 だが、このまま大森林の一部を切り開き、王国への新たな侵攻路を作ることができたなら、その責任は帳消しになるはずだ。

 なにより、あの化け物を排除することができれば、養殖ゴブリンによって領政を悪化させる作戦も継続することができる。


 そうしてこの作戦の延長線上にはベルンハルト王国へと侵攻、そして征服に届くことができれば……。


「ふ、ふふふ……帝国魔導師団の席次を得ることも夢ではない」


 そしていずれは、師を超えて、第一席に座ることも……。


「……うん?」


 大森林の一角に巨大な土溜まりを作っていたアスヴォアが動きを止めた。

 休息に入ったのかと思ったが……違う。

 アスヴォアの胴体の一部が突如として膨らみ始めたのだ。

 そうして今度は、激しく暴れ始める。

 何事かと魔法使いが見守る中、アスヴォアは暴れ続け、膨張は止まらず。

 ……そしてついに、爆ぜた。

 一部が裂け、そこから土砂と体液が溢れ出した。

 いや、それだけでなく、いまなお膨張を続ける巨大な姿がアスヴォアの内部から現れたのだ。


「な、なぁっ!」


 当たり前のように【鑑定】が弾かれる。

 そこから現れたのは、骸骨の頭部を持つ黒い鎧姿だった。

 手には骨を束ね、牙を並べた剣がある。

 その剣が振り上げられ、振り下ろされ……アスヴォアの体躯を簡単に切り裂いた。


「ま……魔王」


 魔法使いは、震える唇からその言葉を紡ぐしかできなかった。







下僕成長:ホネッコ上等兵:【死骨兵】→【呪骨兵】→【???】



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